各大手進学塾の2019年の「中学入試分析会」も終わり、今年度の入試の特徴や傾向が出そろいました。そこで、来年2020年の中学入試に向け、今年度の入試を徹底分析!そこから見えてくる来年度入試の傾向と対策をお伝えします。
CONTENTS:
1.2019年近畿圏中学入試の特徴と2020年入試について
◆中学入試受験者数の増加
◆午後入試導入による短期戦化の定着
◆加速する附属校人気
2.教科別にみる2019年入試問題の特徴と2020年入試の対策
◆国語…長文問題と漢字の注意
◆算数…考える力と年号
◆理科…長文問題と生物、地学
◆社会…意識したい時事問題!
3.まとめ~大学入試を見越した中学受験~
1.2019年近畿圏中学入試の特徴と2020年入試について
◆中学入試受験者数の増加
少子化で子どもの数は減っているのに、近畿圏の中学入試の受験者数は減っておらず、受験率は5年連続で増加しています。特に2019年は兵庫県の増加が目立ちました。それは女子の受験者数が増えたことによります。
◆午後入試導入による短期戦化の定着
近年の入試は、午後入試の導入が進んでいて日程が早期化かつ短期化しています。以前は3日~4、5日かけて1日1校を受験するのが一般的でしたが、2019年では1日に2校受験するのが当たり前のようになり、2日間で3校受験が一般化しています。受験生にとってはたいへん過密なスケジュールになる短期決戦となるため、今のうちから体力づくり、体調管理をしっかり行っていくことをおすすめします。
◆加速する附属校人気
全般的に2021年の大学入試改革による不安要素が多いことから、昨年に引き続き大学に内部進学できる附属校人気は継続して高まっています。近畿圏でも、2019年の中学入試において、関西学院大学(兵庫県)、関西大学(大阪府)、同志社大学(京都府)、立命館大学(京都府)のいわゆる「関関同立」の附属中学校の受験者数が増加、もしくは高水準で安定しています。来年もその傾向は続くものとみられています。
2.教科別にみる2019年入試問題の特徴と2020年入試の対策
【国語】
多くの難関校のパターンとして、長文2問と、漢字・語句問題が出題されています。
◆長文の傾向
長文は、物語文1問と論説文1問となっていて、2019年の特徴としては、物語文に「親子関係」や「家族関係」、「友人関係」など身近な人間関係がテーマとなるものが多かったようです。
◆漢字・語句
漢字は小学校で学習する範囲のものしか出ないので、小学生が習わないような難漢字はないのですが、言葉としてかなり難しい語句が出ますので要注意です!
そこで、2019年の中学入試に実際に出た漢字の問題をご紹介します!
何問解けるでしょうか?
①エイキを養う(東大寺学園中)
②コウガクの志に燃えている(東大寺学園中)
③インドウを渡す(東大寺学園中)
④フヨウフキュウ(東大寺学園中)
⑤ジョウセキ通りの方法(洛星中)
⑥キョシュウが気になる(洛星中)
⑦生活をカッシャした名文(洛星中)
どうでしょうか。実際に漢字そのものは低学年で習うような易しい漢字もありますが、小学生ではあまり使わないような語句ですよね。なかなか大人でも難しいのではないでしょうか。上記の問題の解答は以下の通りです。
《答え》 ①英気 ②向学 ③引導 ④不要不急 ⑤定石 ⑥去就 ⑦活写
以上を参考に、2020年の受験に向けて、長文問題に慣れておくこと、漢字問題をしっかり学習しておく方がいいでしょう。
【算数】
◆考える力重視
2021年の大学入試改革で、数学も考える力に重点を置くようになったため、中学入試にもそれが反映されるようになりました。途中式はもちろん、きちんとした式でなくても、線分図やグラフなど、考え方が分かり、それが間違っていなければ、答えが出ていなくても部分点がもらえたりします。大切なのは、その答えに至るまでの考えの道のりが分かっているか否かということです。
◆その年の年号の数字に関する問題
毎年、年号の数字に関係する問題がよく出題される傾向にあります。今年は2019年ということで、今年の一例として灘中の1日目の算数の計算問題の答えが「91分の20」でした。分数表記をした時、2から順に時計回りに読むと「2019」となりますね。来年は「2020」に関連する問題が出題される可能性は高いものと思われます。
そこで、2020を分解(素因数分解)するとどうなりますか?
↓↓
2×2×5×101
となります。ですから、問題に「101」という数字が出てきたら、「2020」に関係しているかもしれないと考えてもいいでしょう。
【理科】
◆長文問題
理科は、表やグラフ、写真などが問題に含まれていることが多く、かなり長い問題文だと感じてしまうかもしれません。そこで怯まないよう、ふだんから長文の問題に慣れておくことと、国語の長文問題のように、問題文中の必要な箇所に線を引いたり、数字があればそれが何の数字なのかマークしたりするなどの習慣をつけておきましょう。理科の点数をアップするには国語力も必要と考えましょう。
◆生物と地学
植物や動物、気候に太陽と月などは、理科の王道問題です。暗記分野も多いですが、計算が必要な場合もあります。特に天体の動きは方角が分からなくなり、苦手意識をもつ子どもが少なくありません。日ごろから親子で「今日は三日月だね。北はどっちかな」「この植物なんだろう」などと理科分野に興味を持たせることがポイントです。
【社会】
◆意識したい時事問題!
毎年、歴史、地理、公民、時事の4分野が出題されています。だいたい歴史、地理、公民は毎年さほど内容や難易度に変わりはありません。ポイントは時事問題です。これは毎年必ず変わりますので、過去問を解いても仕方がありません。日ごろからニュースや新聞などで、社会の動きに注目しておくのが良いでしょう。できれば家族で話し合うのが理想です。
2020年の入試問題として特に意識して欲しいのが、「東京オリンピック」「天皇陛下の退位と即位」「元号(年号)」です。きちんと文章で説明できるようにしておくのがいいでしょう。
3.まとめ~大学入試を見越した中学受験~
少子化と反比例して、中学受験者数は年々増加しています。というのも、大学の入学定員管理の厳格化により、各難関大学が「合格者数絞り込み」を行ったため、私大の難化が指摘されていて、実際2018年度一般入試の合格者数はここ数年で、3000~7000人も減少しました。今年はさらに難化したと言われています。つまり、子どもの数が減っているにも関わらず、浪人生が急増しているわけです。
2021年の大学入試改革で、一般入試はさらに混迷するとみられることから、大学受験を避けるため、中学のうちに内部進学できる大学の附属中学を受験した方がいい、また少しでも大学進学を確実にするために、進学率のいい難関校を受験したいとの考えから、中学受験者数が増加しているものと思われます。
混迷する大学受験が中学受験にかなり影響を及ぼしていることは間違いありません。今後数年は、中学受験も問題や内容に変化がある可能性が大きいので、正しい情報を入手して早め早めの対策をとっていくことをおすすめします。