受験まであと数ヵ月となりました。年が明ければいよいよ受験本番!受験生は「ラストスパート」に入ります。そこで、ラストスパートの効果的な進め方や、注意するべき意外な落とし穴、この時期の親御さまの接し方等についてご紹介します!
CONTENTS:
1.ラストスパートとは?
2.この時期によくある勘違い
3.親もラストスパート!親の役割とは?
4.なぜラストスパートが重要なのか?
5.親のNG行為と理想的な対応
1.ラストスパートとは?
一般に受験生は夏休みが明けると「ラストスパート」に入ると言われています。よく使われる言葉ですが、そもそも受験におけるラストスパートはどういうものでしょうか。なんとなくわかっているようで実はよくわかっていないということが多いように思います。
広辞苑によると「ラストスパート」とは、「ゴール直前での最後の力走、力泳。最後のがんばり」とあります。元来は競走や競泳などの競技でゴール直前に、最後(last)のスパート(spurt=全速力を出すこと)をかけるという意味から、やがて物事の終了間際に全力を出してより良い結果に繋げるという意味で使われるようになりました。
しかし、受験のラストスパートで気をつけなければいけないのが、そのさじ加減です。塾などでも一斉にギアをあげて受験モード一色に染まりますが、ラストスパートだからと全力を出したものの、年末に力尽きてしまっては意味がありません。入試本番にベストな状態で思う存分持てる力を発揮できるように上手く調整しなければなりません。
マラソンや競泳などを見ていてもわかると思いますが、ラストスパートのかけかたは人それぞれです。早めにかけて逃げ切る選手もいれば、直前でものすごく追い上げて抜いていく選手もいます。それでもだいたいはゴール直前のある一定の距離で、一斉にラストスパートをかけ始めるように見えます。
入試当日まで力がもつのであれば、今からギアを上げてペースアップするのもいいですし、逆に体力が持たないのであれば、これまでのペースのままで徐々に上げていってもいいと思います。人それぞれで、現状の学力や志望校レベルも違えば、性格、体力も違います。もちろん、ペースアップのタイミングも違って当然ですから、周囲に流されて焦って自分のペースを乱してしまわないように注意してください。
2.この時期によくある勘違い
ラストスパート期によく勘違いされるのは、受験生全員が「何がなんでも全力でラストスパートをしなければいけない」と思い込むことです。前述の通り、ラストスパートのかけかたは人それぞれです。
今まで順調に推移していて、このままならば志望校も合格できるだろうと思われる受験生はわざわざラストスパートという名のもとにペースを変える必要はありません。周囲の雰囲気に流されて自分のペースを見失わないようにすることもこの時期に大事なことです。
ましてや親御さまの方が焦って「もうラストスパートなのよ!もっとがんばりなさい!」などと誤った煽りを入れないように注意しましょう。
内容的にも勘違いしていることがよくあります。そもそも受験においてラストスパートに入るということは、基本的に受験に必要な学習が一通り終わっていることが前提になっています。それがまだ終わってもいないのに、より高度な内容を慌てて学習しても身につきません。今何が必要か早急に見極めて、学習する内容に優先順位をつけ、計画的に進めていくことが重要です。
ラストスパートというのは必ずしも勉強時間を増やすとか、学習量を増やすという意味ではありません。いかに日常の生活を受験モードに切り替えるかということも含まれます。
例えば以下のようなことが挙げられます。
●受験までゲームの時間を減らす、またはやめる
●夜型から朝型の生活に変える
●受験までは他の習い事を一旦休みにする
このような生活習慣の見直しといったこともラストスパートの一つです。
言わば「生活のベクトルを今までより入試に向ける」ということですから、既にそのようなことが十分にできているのであれば、今までの生活を無理に変える必要はないのです。
3.親もラストスパート!親の役割とは?
子どもが受験生でラストスパートに入るのであれば、親も一緒です。これまでもたいへんだったと思いますが、ここからは親も一緒にラストスパートしていかなければなりません。これまで以上に受験生へのフォローを手厚くし、生活や健康面を管理するのが親御さまの役目となります。
特に中学受験をする小学生の子どもには親御さまの力が必要不可欠です。初めての受験で子どもには何がラストスパートでどうすればいいのかよくわかっていません。学習塾ではハチマキをしたり、教室に「受験まであと〇日!」など煽るようなカレンダーや標語を掲示したり、ラストスパートを大いに謳ってきます。
先生もライバルの仲間たちも目の色を変えているように見えて、精神的に追い詰められます。これに乗って上手にラストスパートに入れる子どもはいいのですが、必要以上に重荷に感じたり、完全に拒否してしまったりする子どもも少なからず出てきます。親はこれを上手にコントロールしなければなりません。
受験生の子どもがラストスパート期にゲームなどで遊んでしまい、勉強時間がないなど目に余ることがあればもちろん叱咤激励して受験モードに向けさせる必要がありますし、逆に周囲の雰囲気に煽られて必要以上に夜遅くまで勉強し、これまで良かったペースが乱れていると感じたときにはブレーキもかけてあげなければいけません。この辺りの手綱を緩めたり締めたりするのも親御さまの重要な役目の一つです。
4.なぜラストスパートが重要なのか?
受験において「ラストスパート」というのはとても大事です。この数ヵ月で大幅に成績を上げる受験生もいれば、横ばい、あるいは下げてしまう受験生もいます。
例えばX校を受験する同じ偏差値60の受験生、A君とB君、C君がいたとします。A君はラスト数か月で上手にラストスパートをかけ、偏差値を58→59→60と上げて入試に向かいました。一方、B君は最初にギアを上げ過ぎて年内で力尽きてしまい、いざ入試当日には偏差値が62→61→60と下げての入試となりました。C君は同じラスト数か月を現状維持で過ごした結果、周囲が上がった分、偏差値を62→61→60とやはり下げての入試となりました。
この場合、同じ偏差値60でも、A君が最も自信をもって受験に臨めますし合格する可能性も高いと言えます。B君とC君は数か月前までは偏差値が62あり、能力は低くはありませんが、入試当日のA君に比べると合格する可能性は決して高くはありません。言うまでもなく受験というのは本番で最高のパフォーマンスを出さなければなりません。
入試当日に右肩上がりの状況で臨めるか、右肩下がりの状況で臨むのかは合否を分ける大きなポイントとなります。「ラスト3ヵ月で驚くほど伸びる」とよく言いますが、それは事実です。したがって、スパートをかけず現状維持でいれば周囲が伸びている分落ちてしまいますし、そうかと言って「これからラストスパートだ」と急激にギアを上げ途中で力尽きてしまっては本末転倒です。
これから受験までは親御さまもそうですが、受験生もとてもナーバスになります。ちょっとした事で口論にもなりがちです。軽い口論くらいならいいのですが、それが火種となって「受験をやめる」とまで発展する例もあります。そうなっては目も当てられません。
今までの頑張りが水の泡とならないよう、自分の正しいペースを維持しながらラストスパートをかけてください。もしペースを乱しているように感じたら優しく軌道修正してあげましょう。親御さまの温かい見守りの気持ちがいちばんの応援となりますよ!
5.親のNG行為と理想的な対応
今までの当ブログでも何度となく申し上げてきましたが、基本的に親御さまはお子さまの受験勉強に関して口を出さないことがベターです。勉強のことは塾の先生など受験のプロに任せ、生活や健康面でのフォロー(栄養面や生活のリズムの維持)に徹するのが最もうまくいきます。
ましてや下記のような言動は極力避けてください。
・「ラストスパートなんだからもっとがんばりなさい」
・「〇〇さんはもっとやっているわよ」
・「もうすぐ受験なのに、そんなんじゃ落ちるわよ」
これらの言葉はどれも悪気はなく、お子さまを心配してこその励ましの言葉だと思います。しかし、これらはすべて逆効果の言葉です。
お子さまがこの時期になってもなかなか受験モードに入れないのだとすれば、何か原因があるはずです。基本的には塾や家庭教師の先生に相談するのがベストで、それでも解決できないのであれば、思い切って1科目だけでもプロ家庭教師をプラスするなどしてテコ入れするのもいいでしょう。先生との相性も大きいので、別の先生に指導されると俄然やる気になるという場合もあります。
いちばん大事なことはお子さまが自らやる気になることです。ラストスパートを自分の意志でがんばりたいと思えるかどうかです。
やりたいことを我慢しなければならなかった分、受験が終わったら好きなことをさせてあげるアピールをしてもいいでしょう。行きたがっていた「テーマパークに泊りがけで行こうね」とか、欲しがっていた「ゲームソフトを買ってあげるよ」など、飴とムチの飴をちらつかせてもいいと思います。
泣いても笑っても残りあと数ヵ月。この大事なラストスパート時期をどう過ごすかですべてが決まってしまいます。自分たちだけでうまくできない場合は、プロの力を借りて追い込みをかけるのもいいでしょう。
実績のあるプロの先生なら、この時期の受験生への接し方や励まし方もよく分かっています。志望校の受験指導はもちろん、精神面のケアもしてくれますよ。
残りの時間、ぜひ悔いのないラストスパートをかけて最高の状態で本番を迎えてくださいね。