入試本番まで残り数ヵ月。ラストスパートのこの時期は、過去問に取り組む受験生が多いと思います。より効果的に過去問を行うため、過去問演習の目的と正しいやり方、やってはいけない過去問対策の勘違い、親の手伝い方など過去問について徹底解説いたします!
CONTENTS:
1. 過去問演習を始める時期
2. やってはいけない過去問の勘違い
3. 過去問の目的「3つの知る」とは?
4. 受験校の傾向を知る
5. 受験校の自分にとっての難易度を知る
6. 自分の実力を知る
7. 過去問演習の回数
8. 親が手伝う効果的な過去問演習法
1.過去問演習を始める時期
受験生にとって、夏休みが明け、入試本番まで残り数ヵ月となったこの時期がいわゆるラストスパートです。一般にこの時期の学習として、志望校に向けてのピンポイントの対策に過去問演習を行う受験生も多いことでしょう。
今では受験において当たり前のように使われる「過去問」ですが、実際に正しく演習が行えているかは疑問で、意外と誤った認識で過去問に取り組んでいる受験生も少なくありません。もう残り数ヵ月というこの大事な時期に、時間を無駄にする余裕はありません。
そもそも過去問演習とはどのようなもので、いつから始めるものでしょうか。
過去問演習とは、文字通りその学校の過去の入試問題を解いてみるものです。書店にある赤本など過去5~6年ほどの入試問題と解答を購入して解き進めるというのが一般的です。
過去問を始める時期は、一般にラストスパートに入る入試本番まで残り3~4ヵ月くらい頃から始めるのがベストと言われています。しかし、受験校のレベルや個人の学習の進み具合にもよるので一概には言えませんし、これが正解というものもありません。
言えることは、必要な単元をやり終えてからというのが理想で、受験日までを逆算して無理なく取り組めるところからというのが良いでしょう。
2.やってはいけない過去問の勘違い
過去問に対し、以下のような考えはないでしょうか。
□過去問をたくさんやれば合格できる
□過去問で満点が取れるようになったからだいじょうぶ
□とりあえず過去問を一通り解いたからOK
□ラストスパートは過去問だけをやっておけばいい
□過去問を始めるのに早いに越したことはない
残念ながら上記の過去問対策はすべて間違いです。よく過去問が志望校対策のすべてとばかりに、過去問だけを完璧にこなそうとする受験生をみかけます。
大きな誤解は、学校などの試験とは違って過去問が実際の入学試験にそのまま出題されることは絶対にないということです。同じ問題は出ないのですから、過去問の答えを丸暗記して過去問で満点が取れても意味がありません。
それはそもそも過去問を演習する意義や目的を間違っているからです。
3.過去問の目的「3つの知る」とは?
まずは過去問を演習する意義や目的を押さえた上で始めましょう。目的がはっきりわかっていないと、前述のような誤った過去問対策を行いがちになります。
赤本を買ってなんとなく前のページから順番に解いて「正解した」「間違えた」と一喜一憂するだけでは学習効果は期待できません。過去問は正しく意識して進めなければ効果がないのです。
過去問演習を行う目的は主に以下の3つを「知る」ためです。
①受験校の傾向を知る
②受験校の自分にとっての難易度を知る
③自分の実力を知る
それでは詳しくみていきましょう。
4.受験校の傾向を知る
志望校の出題がどのような傾向にあるのかを知ることはとても重要です。過去問を演習する最大の目的と言っていいでしょう。
過去問を演習する際、ただ漠然と問題を解くのではなく、それぞれの科目で以下のようなポイントを意識して特徴を掴みましょう。
【国語】
・ 長文読解問題と漢字や語句など知識問題の出題割合がどのくらいか
・ 読解問題は物語文と説明文のどちらの出題が多いか
・ 長文の長さはどのくらいの文字数か
・ 用いられる素材文は古い文献からの抜粋なのか、最近の文献からか
・ 解答の仕方は記号選択が多いのか記述が多いのか
・ 記述解答は字数制限があるのか、何字くらいか
【算数】
・ どのような問題構成なのか(全部で何題くらいあり、始めに計算問題や一行題があるのか、文章題が何題くらいあるのか)
・ 解答欄は答えだけなのか、解き方まで書くのか
・ どのような分野の出題が多いのか(図形や速さの単元が頻出など)
【理科】
・ 物理・化学・生物・地学の各分野まんべんなく出題されるのか、偏りがあるのか
・ 計算問題の出題は多いのか
・ グラフや写真、絵などから読み解く問題が多いのか
・ 全体的に長い問題文を読ませるのか
【社会】
・ 歴史・地理・公民の各分野の出題割合がどのくらいなのか
・ 記述解答もあるのか、また文字数はどのくらいか
・ 表やグラフの読み取りが毎年出題されているのか
・ 時事問題に関する出題はあるか
【全体】
・ 捨て問があるか否か
全ての科目において最も重要なことの一つが、「捨て問の見極め」です。解いて得点すべき問題と、無理に解いて得点しなくてもいい問題(=捨て問)を取捨選択できるようにするのも過去問をやる大きな目的の一つです。
学校によって出題傾向はさまざまで、捨て問がある学校もあれば、ない学校もあります。毎年最後の大問5に捨て問がある学校もあれば、その年度によって違い、大問3~5のどこかに捨て問があるという学校もあります。そのような意味でも、過去10年は無理でも最低でも5年分の過去問はやっておきたいところです。
5.受験校の自分にとっての難易度を知る
学校の難易度は塾やサイトなどである程度はわかるでしょう。しかし、入試の教科ごと、それも自分にとっての難易度まではわからないと思います。過去問で各教科の分野まで細かく見てみると、難易度と同時にその学校の出題のクセに気がつくことがあります。
一般に偏差値が高く難しいと言われている難関校であっても、例えば算数の速さの問題は難しいが図形問題は平易だとか、国語の長文読解の難度は高いが、漢字はあまりひねった問題が出ないなど、それぞれに特徴があります。
理科も物理・化学・生物・地学各分野から出題されますが、生物の問題は比較的簡単だとか、社会で歴史は簡単だが地理ではひねった問題が出題されるなど、偏差値だけでは見ることのできない細かい難易度を知ることができます。
過去問を解くまでもなく、塾などで個々の学校についてこの教科は難しいとか、この教科は時間が足りなくなる傾向があるといった話はよく耳にするでしょう。ただ、それは一般的な話で自分自身に当てはまるとは限りません。
やってみると思ったほど自分には難しいと感じなかったり、時間にも余裕があったり、またその逆であったりとさまざまです。偏差値だけでは測れない、入試問題との相性のようなものがあるからです。
過去問の解け具合により、今後の受験戦略も変わってきます。入試問題の出題のクセから、受験校を選択するのも一つの手で、同じ難易度の学校でどちらにしようか迷っている場合、入試の相性から選ぶのもいいと思います。また、併願校はもちろん、第一志望校の入試の相性があまりに自分と合わなかった場合に、思い切って今のうちに変更するのもありだと思います。
6.自分の実力を知る
今の自分の実力を知るために、以下のポイントも意識して過去問を演習しましょう。
・ 得点は何点で合格まであと何点必要か
・ 時間は足りたか足りていないか
・ できなかったのはどの分野か
過去問を解くときに必ずしてほしいのは、本番の入学試験さながら時間を計って過去問に取り組むことです。時間をかければ解ける問題であっても、試験では限られた時間内にどれだけ正確に多くの問題を解答できるかが問われます。その結果、得点は何点で、合格にはあと何点必要か把握しておきましょう。
また、本番と同様に時間を計ることにより、ラストスパートで何をどう勉強したらいいのかがわかりやすくなります。国語、社会は見直しをする時間があったが、算数は全く時間が足りなかったなど、自分の実力や現状がわかり、どの教科のどの分野がどのくらい足りていないのか、これから何に注力すべきなのかが見えてきます。
つまり、より精度の高いラストスパートができるということです。その意味からも、過去問を解くというのはとても大事なことなのです。
7.過去問演習の回数
過去問の重要性はおわかりいただけたと思いますが、よく親御さまから「過去問は過去何年分くらいを何回くらいすればいいか」という質問を受けます。
過去問はできるだけ過去に遡ってたくさんやるに越したことはないのですが、時間にも限りがあります。もし過去15年分を1回行おうと考えているのなら、過去5年分を2~3回行った方がいいでしょう。
入試の傾向や難度は年々変わりますので、15年前の入試の内容よりは直近の方が傾向を知る上で信ぴょう性が高いからです。それでも毎年どこかの学校で、10数年前の過去の入試と同じような問題が出題されていたりもしますので、余裕があれば古い過去問にも目を通した方がいいに違いありません。
また、例えば過去5年分を3回行うのであれば、1年前の過去問を3回連続、2年前の過去問を3回連続……と進めるのではなく、1年前、2年前……5年前の順に進め、また1年前に戻るというように3周した方がいいでしょう。
なぜなら、同じ問題を連続して解いていると意識をしなくてもついつい答えを覚えてしまう可能性があるからです。答えだけを覚えてしまい、点数だけは取れるようになり解った気になってしまっては逆効果ですので、気をつけてください。
とにかく、最低でも第一志望校の過去問は過去5年(余裕があればそれ以上)の問題を2回以上は繰り返しましょう。
併願校・第2第3志望校についても時間の許す限り、最低直近1、2年くらいのものを一度は目を通しておくようにしましょう。
8.親が手伝う効果的な過去問演習法
過去問は塾でも取り組んでいると思いますが、家庭で行う際には注意が必要です。特に小学生ではなかなか一人で正しく行うのは難しいでしょう。できましたら親御さまにお手伝いしていただくことが理想です。
過去問はただやみくもに問題を解くのではなく、次の3つのステップに従って正しく行ってください。
1)時間を計る
時間を計るだけでいいので、親御さまが手伝ってあげてください。本人が一人でやると、ついつい自分に甘えてしまい、もうすぐ解けるという段階で時間になった時に30秒だけ終了時間を延ばすということをやってしまいがちです。
実際の入試では終了のチャイムが鳴ったら1秒たりとも待ってくれません。現状と志望校との正しい差異を計るためにも、そのあたりは厳しくしましょう。
2)自己採点と合格点のチェック
採点につきましても、できましたら親御さまがお手伝いしてあげてください。本人が自己採点すると、特に記述解答については甘い採点になりがちなので、本人のためにも厳しく採点していただきたいです。
3)解き直しの徹底
過去問を解き終わりましたら、当然間違えた問題の解き直しが必要です。解き直しをしなければ過去問をやる意味がありません。できれば過去問ノートを作成し、解答は過去問に直接書かず、ノートに書いてどの問題をどう間違えたのか、いつでも見直せるようにしてください。
間違った問題について、塾で習ったばかりの単元なら塾の先生にも聞きやすいのですが、家庭でやった個人の過去問の間違いについて、集団塾の先生には聞きにくいかもしれません。だからと言ってそのまま放置していては何にもなりません。
そういう意味でも、ラストスパートのこの時期だけでも志望校について精通しているプロの家庭教師や個別の教師に過去問を見てもらうのがおすすめです。
とにかく一番やってはいけないことは、わからなかった問題を何も精査せずにそのままにしておくことです。できなかった問題を原因もわからずそのままにしておくことは、精神的にも不安感が高まるだけですので、必ずきちんと分析し消化しておくようにしましょう。
そして最も大事なことは、お子さまが合格点に達していなくても、何度も同じ問題を間違えたとしても、親御さまが感情的にならないようにすることです。
「前にやった問題じゃない。どうしてできないの!」「こんなに間違えて、どうするつもり!」「ぜんぜん合格点に足りてない。もっとがんばりなさい!」などというネガティブな言葉は逆効果ですから決して言わないようにしましょう!