年末も間近となり、いよいよ受験本番が迫ってきました。そこで今回は、2023年入試に役立ちそうな「時事用語」と「西暦数字」について、キーポイントを解説いたします。
CONTENTS:
③「円安」
⑩「国葬」
年が明けると、すぐに入試が始まります。受験生にとっては正にラストスパート真っ只中、過去問演習など志望校対策を行っているところだと思います。
よくこの時期に、「時事問題対策は必要ですか」という質問を受けます。確かに時事問題が出題されない学校もありますから、必要がない場合もあるでしょう。しかし、時代の流れ的にも「世の中の出来事に広く関心を寄せ、自分で考えること」が求められています。今年から出題されるかもしれませんし、一般常識として頭の隅に入れておいて損はありません。
また、時事問題というと、社会科だけの問題と思われがちですが、そうでもありません。
時事に関する今年のキーワードは、社会科ではもちろんのこと、近年では科目横断型の出題として理科と社会の融合問題のようなものも出題されています。場合によっては国語で出題される可能性もあります。
どのような形で出題されるかはわかりませんが、これから挙げる2022年を代表する「時事用語10選」について、押さえておくに越したことはないでしょう。それぞれの用語に対し、ポイントとなる「キーワード」を1つ以上入れて内容を説明できると、ポイントアップです。とくにこれまで時事問題が出題されている学校を受験する場合は、しっかり対策をしておきましょう。
最後に、毎年複数の学校の算数で出題される「西暦数字」についても、その考え方などを解説いたします。ぜひ覚えておいてください。
2022年も「新型コロナウイルス」の影響を受けた一年でした。とくに7月には、オミクロン株BA.5が流行し、第7波として猛威を振るいました。感染者数は過去最多となり、医療崩壊の危機に陥りました。これは第6波のBA.2と比べ、感染力が格段に高くなったことを意味しています。
それでも60歳未満の重症化率は低いため、世界ではコロナウイルスと共存する「ウィズコロナ」に踏み出した国も多く、ほとんどの国民がマスクを着用している日本とは違い、マスク着用義務を撤廃した国も増えました。
日本でも、昨年や一昨年に比べると規制も緩み、コロナに対する意識も変わってきています。
「ウィズコロナ」や「ポストコロナ」時代にどうウイルスと対峙していくのか、インバウンド需要も狙いたい日本としては、世界とどう足並みを揃え、経済を回復させていくのか、今後の大きな課題となっています。
そのような中、2022年10月11日、「全国旅行支援」が始まりました。政府が実施する全国を対象とした観光需要喚起策です。旅行代金の最大40%相当が割引され、地域のクーポンが最大3千円分付与されます。利用するには、本人確認書類とワクチン3回の接種証、またはPCR検査等の陰性証明が必要となります。
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2022年2月24日、ロシアが西の隣国、ウクライナに侵攻しました。首都キーウなどへのミサイル攻撃や空爆が始まり、3月にはザポリージャ原発を掌握。稼働中の原発が武力攻撃を受けるという、史上初めての事態に世界中が衝撃を受けました。
ウクライナがロシアと敵対するNATO(北大西洋条約機構)への加盟を希望したことに反発したことなどが主な理由とされています。
多くのウクライナの一般市民が犠牲となり、国外への避難を余儀なくされています。このような一方的な力による軍事侵攻は許されないことで、日本を含め、アメリカや西側の国々は第三次世界大戦になることを避けるため、ロシアに対し強い経済制裁を科しています。
これにより、ロシアから石油や天然ガスなどのエネルギー資源が手に入りにくくなり、世界的に電気代やモノの値段が高騰し、大きな影響を受けています。
もはやロシアとウクライナという2国間だけの問題でなく、日本においても物価上昇はもちろん、エネルギーや安全保障問題など、さまざまな影響が出ており、決して対岸の火事ではありません。
ウクライナのゼレンスキー大統領は徹底抗戦姿勢を崩さず、追い詰められたロシアのプーチン大統領は核兵器の使用をほのめかし、核の脅しを繰り返しています。1962年のキューバ危機以降で最も重大な世界の安全に対する核の脅威と呼ばれていて、世界中がプーチン大統領の動向を注視しています。
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長らく115円前後の円高が続いていた日本の円は、2022年の春ごろから円安が進み、9月には140円台となり、急加速。日銀も歯止めをかけることができず、10月半ばには150円台に突入。1990年以来およそ32年ぶりの円安水準となりました。
これは、アメリカと日本の金融政策の違いによる金利差の拡大により、急速な円安が進んだものとされています。アメリカでは大幅な利上げをしたのに対し、日本では金融緩和を継続。低金利状態が続いています。これにより、円を売ってドルを買う動きが強まりました。
エネルギーや食品の多くを輸入に頼っている日本は、物価が上昇。賃金が上がらないままの物価高に、家計への影響も大きく、早急な対応が求められています。
一方、円安を生かし、外国人観光客の呼び込みを図る目的から、コロナ禍により規制されていた水際対策が大幅緩和される運びとなりました。インバウンド消費の復活が、経常収支の改善につながり、円安の「歯止め」になると期待されています。
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「マイナ保険証」とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用することです。マイナンバーカードの個人認証機能を利用し、病院や薬局の窓口で従来の健康保険証に代えて利用できるようにするもので、2021年10月から本格運用が始まりました。利便性は高いものの、個人情報の漏洩を不安視する国民も多く、なかなか普及しないのが課題でした。
そこで、2022年10月、河野太郎デジタル大臣は、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に伴い、紙やプラスチックカードの健康保険証を2024年秋に廃止する方針を発表しました。既存保険証の新規発行を停止することで、マイナンバーカードへの置き換えを推し進める狙いがあります。
事実上の義務化となりますが、マイナ保険証を持たない人や医療機関のシステム導入、訪問診療など、課題は残っています。
【キーワード:河野太郎デジタル大臣, マイナンバーカード, 健康保険証廃止】
オリンピックの開催はずいぶん昔のことにように感じられますが、2022年2月のことです。どこで開催されたか、地図で指し示せるでしょうか。中国、北京ですね。どこにあるのか、どんな特徴があるのかも言えるようにしておきましょう。
東京に続き、コロナ禍での冬季オリンピックとなりましたが、東京との違いは何でしょうか。無観客と有観客の違いが大きかったですね。中国はわずかな感染でも許さない、たいへん厳しい「ゼロコロナ政策」下での開催でした。
日本は18個のメダルを獲得し、過去最多となりましたが、スキージャンプの高梨沙羅選手がスーツの規定違反で失格となったり、スノーボードの平野歩夢選手の採点が不可解だったりするなど、採点基準や検査の在り方が問われる場面もありました。
また、フィギュアスケートのROCのカミラ・ワリエワ選手をめぐるドーピング問題からスポーツの公平性のあり方にも厳しい目が向けられた大会となりました。
一方、公式マスコットであるパンダのビン・ドゥンドゥンは大人気で、ショップに何時間も並んでも買えない人がいるほどで、日本でも大きな話題となりました。
【キーワード:ゼロコロナ政策, 有観客, ドーピング問題, ROC, スポーツの公平性, ビン・ドゥンドゥン】
2022年7月10日、第26回参議院選挙が行われました。選挙期間中に起きた安倍晋三元首相銃撃死亡事件の衝撃が残る中、自民党が単独で改選議席の過半数を確保して大勝し、公明党とともに昨年の衆院選に続き、参議院でも引き続き安定した基盤を確保しています。
憲法改正に前向きな自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の4党の獲得議席は93議席となり、憲法改正の発議に必要な参議院全体の3分の2の議席を上回りました。
これに対し野党側は立憲民主党が議席を減らし、少数政党が議席をさらに確保したことで、野党内の主導権争いが激しくなっています。与党に対抗するだけの勢いは欠いているといえるでしょう。
今回の参院選では、女性の立候補者数が181人と全体の3割を超え、当選者は35人と、ともに過去最多となりました。この流れがさらに進むのか期待されます。
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2022年7月11日、「世界人口デー」に発表された「世界人口推計」によると、世界の人口は、11月に80億人に達し、2023年にはインドが中国を抜いて世界で最も人口が多い国になると予測されています。
世界人口は、1950年以降最も低い増加率で推移し、2020年には1%を下回りました。国連の最新の予測によると、世界人口は2030年に約85億人、2050年には97億人に増える見込みです。2080年代中に約104億人でピークに達し、2100年までそのレベルに留まると予測されています。
一方、日本の人口は、2021年10月1日時点で、総計1億2,550万2,000人。10年連続で減少幅が拡大しており、とくに若年層が顕著です。厚労省が2022年6月上旬に公表した、1人の女性が生涯に産む平均的な子どもの数「合計特殊出生率」2021年は、1.30で、6年連続の低下です。
2060年には日本の総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準になると推計されています。この変化は、千年単位でみても類を見ない、極めて急激な減少で、日本の少子高齢化が進み、猶予のない状態と言えるでしょう。
※これまで当たり前に思っていた「世界で一番人口の多い国=中国」が来年には「インド」になります。世界は刻々と変化しています。人口増加の国もあれば、減少する国もあります。その結果、経済成長や社会保障などに、どういう影響があるのかまで考えておくといいでしょう。
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MLB(メジャーリーグベースボール)ロサンゼルス・エンゼルスに移籍した大谷翔平選手の活躍が連日日本でも報道されています。2022年のシーズンでは、投手として28試合に登板し、15勝9敗(勝ち星はリーグ4位タイ)、防御率2・33(同4位)。奪三振数は219(同3位)で、規定投球回を4回上回る166回を投げています。打者としては、157試合に出場して打率2割7分3厘、34本塁打、95打点。打率は昨季の2割5分7厘を上回りました。
これまで投打で活躍する「投打二刀流」は、野球の神様ベーブ・ルース以降、MLB史上にも何人かが挑戦しているものの大谷選手ほどの活躍はなく、最近の野球では本格的な二刀流選手は皆無で、MLBも日本のプロ野球も「二刀流はない」とされてきました。
しかし、2020年より、MLBで「二刀流選手(Two-way Player)」がルール上公式に定義されました。大谷選手はこの二刀流選手第1号に適用され、MLB史上初の「公式」二刀流選手となりました。大谷選手は正に「野球界の常識や歴史を変えた」選手だといえるでしょう。
そんな大谷選手とMLBロサンゼルス・エンゼルスは、2022年10月、来期の年俸を今季の550万ドル(約8億円)から545%増の大幅昇給、3000万ドル(約43億4000万円)で合意したと発表しました。日本選手では歴代最高年俸となります。
こうした大谷選手の投げて打っての「投打二刀流」の大活躍は、見る者にたくさんの勇気や元気を与えてくれましたし、改めて「二刀流」の選手が注目され始めてもいます。
2022年10月のプロ野球ドラフト会議でも、二刀流を視野に入れた選手が注目を集めました。大谷選手が今後どこまで野球の歴史を塗り替えるのか、ますますの活躍を期待せずにはいられません。
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近年になり「ゲリラ豪雨」という言葉を耳にするようになりましたが、ここ数年は「線状降水帯」という言葉をよく聞くようにもなりました。注目されるようになったのは、2014年8月の広島県での集中豪雨以降だともいわれています。
「線状降水帯」とは、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなし、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで、線状に伸びた地域に強い降水をもたらす(大雨を降らせる)ものです。
線状降水帯のように、積乱雲が同じ場所で次々と発生するメカニズムは「バックビルディング」(後方形成)と呼ばれています。九州など日本の南方ほど発生しやすい傾向があり、毎年のように顕著な大雨が発生し、甚大な災害が生じています。
気象庁は2022年の6月より「線状降水帯」による大雨の予想について、大まかな地域を対象に半日前からの情報提供を開始しました。産学官連携で、線状降水帯による大雨について早めの避難につなげるため、スーパーコンピュータ「富岳」も活用し、線状降水帯予測を開始しました。
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2022年9月27日、安倍晋三元首相の国葬が、賛否が割れる中、日本武道館にて行われました。「国葬」とは、国に功労のあった人の死去に際し、政府が主催し全額国費で執り行う葬儀「国葬儀」のことで、首相経験者では1967年の吉田茂元首相以来、55年ぶり、戦後2例目となります。
岸田文雄首相が示した国葬の根拠は、安倍元首相が「憲政史上最長の通算8年8カ月の首相在任」「東日本大震災からの復興や経済再生、日米関係を基軸とした戦略的外交」「国際社会からの国をあげた弔意」「民主主義の根幹である選挙中の銃撃」の4点です。
国葬には218の国や地域、それに国際機関などから合わせて700人程度が参列し、このうち現職の首脳級は34人、国内の参列者は3500人ほどで、合わせて4200人ほどが参列しました。一般の献花者は、2万6000人ほどで、ネット献花では約1ヵ月間で50万人を突破したとされています。
その一方「国葬反対」を唱えるデモも起こり、国民を分断する事態となりました。同時に「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」と自民党を中心とした政治との関係など多くの課題が残り、岸田内閣の支持率が大きく下落する要因となりました。
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「入試年度の西暦数字」は毎年多くの難関中学の算数で出題される数字です。算数の大問1の計算問題中に含まれていたり、文章題の中で「2023日後」と問われたり、「規則性の問題」で「2023番目」や「2023個の物を分配する」など、さまざまな問題での使用が考えられます。
つまり、「2023」がどのような数字なのか、その特徴を知っておくと大きなヒントとなり、有利になります。
2023という数字ですが、一見何で割り切れる数字なのかがわかりにくく、素数かと思うかもしれませんね。
それもそのはず、2023を素因数分解すると、
2023=7×17×17
となります。
問題を解いていく中で「17」という数字が出てきたら「来たぞ!」「もしかすると2023が関係しているのかも」とひらめくと、案外スムーズに解き進めることができるかもしれません。
同時に、
・289(17×17)
・119(17×7)
という2つの数字も覚えておきましょう。素数のように見えますが、2023の約数ですので2023に繋がるかもしれません。
「時事用語10選」や「西暦数字」について、出題されるか否かは正直なんとも言えません。
とくに時事用語に関しては、どういう形式の問題で出題されるかもわかりませんので、ここではヒントとなるような情報をまとめてお伝えしました。
解説文をそのまま覚えるということではなく、バックグラウンドとなる知見として理解しておいてくださいね。さまざまな問題に対処できると思います。また、それぞれにポイントとなるキーワードをご紹介していますが、そちらが出題される可能性もあります。併せて覚えておきましょう。もし受験校で出題されたらラッキーですよ!
時事問題のポイントは、ただ単にその用語の内容を説明するだけではなく、その背景や要因とそれによる影響、今後の課題などを理解しておくこと、また必要に応じて自身の意見も述べられるように準備しておくことが理想です。
西暦数字の2023につきましては、来年も必ずどこかの中学校で、しかも複数の学校で取り上げられることは間違いありません。今年も関西では灘、甲陽、東大寺といった最難関校に加え、四天王寺や大阪星光など多くの学校で西暦数字(2022)を用いた出題がありました。
受験生は「見覚えのある数」として、頭の片隅に入れておいて損はないでしょう。
できましたら、今回挙げた用語や数字はもちろん、それ以外にも今年の出来事について、家族で食事中などに楽しく会話ができるといいですね。受験勉強をしているというより、知らず知らずのうちに時事通となって得意分野になるかもしれませんし、もしかすると直前に何気なく会話したことが入試に出題されるかもしれませんよ!
もうあと2ヵ月ではなく、まだ2ヵ月あります。
まだまだ伸びます!
体調管理はしっかりと、
最後まで諦めずに頑張りましょう!!