中学受験をするなら「いつから塾に通わせる?」「費用はどのくらい?」「そもそも通塾は必要?」など、中学受験の塾選びについてのポイントと注意点を徹底解説いたします!
CONTENTS:
1. これから中学受験を考える方へ
近畿圏では毎年1月の中旬、関東圏では2月の初旬に中学入試が終わります。毎年この時期になると、中学受験を考えていないご家庭でも「〇〇さんは××中学に合格した」などという話が耳に入り、「やっぱりうちの子も」と考えるようになりがちです。そのため、中学受験に関する問い合わせがぐんと増える時期でもあります。
中学受験といっても、何も知識がないと、「何をどう始めればいいのかわからない」や、「よく中学受験は親子の受験と言われるが、親は何をしたらいいのか」、「塾に行かないとダメなのか」、「どこの塾がいいのか」、「いつから始めればいいのか」、「費用はどのくらい必要か」など、いろいろな疑問がわいてきて不安になってしまうこともあると思います。
ここでは、これから中学受験を考えるご家庭に向けて、主に中学受験塾について解説しながら、さまざまな疑問にお答えしていきます。
2. 塾には通わせるべき?いつから?
中学受験は塾に行かないと本当に無理なのか?
よく保護者から「中学受験をするなら塾に行かせないとダメなのでしょうか」と尋ねられることがあります。そのような場合、基本的には「難関校以上を目指すなら、中学受験に実績のある塾に通塾する場合が多い」と説明しています。
なかには「中学受験とはいえ、しょせんは小学生が受けるテスト。大人なら簡単に教えることができる」と安易に考えている人もいます。一度、試しに灘中など最難関と言われる中学入試の過去問を見てみるといいでしょう。
初めて見ると驚くと思います。算数などは半分も解けないでしょうし、国語も大人が読むような難解な文章を読まされ、こんなに語彙力が必要なのかと衝撃を受けるでしょう。
学校の授業と塾の授業は別物!
公立の小学校で授業中に解いている問題と、中学入試で出題される問題とはまったくの別物と思ったほうがいいでしょう。当然、学校の授業と塾の授業では、その内容が大きく異なります。学校の問題は教えられても、中学受験の問題はその道のプロではないとまず難しいと思ってください。
逆にいうと、中学受験をする小学生たちはこのような問題を毎日解いているわけですから、それだけでもすごいことなのです。なかなか個人1人で頑張れるものではないでしょう。
難関校を目指すなら、中学受験塾はほぼ必須と言わざるを得ないのが現状です。
中学受験のスタートはいつ?
一般に中学受験に向けての勉強を始める時期は、小学4年生からが多く、小3の2月から中学受験のための進学塾に通い始めるのがスタンダードと言われています。逆に言うと、それまで学校以外の学習を何もしていなくても、そこからのスタートで難関校までの実力を十分つけることができるということです。
もちろん、小5や小6から塾に行き始めて合格する子どももいないことはありません。しかし、そのような子もそろばんなど何かしら学んでいて得意分野があったり、親が中学受験をよく知っていて教えられていたりする場合が多いように思います。
最近ではより先取りしたいと、小学3年生(小2の2月)から始めるという生徒も増えています。最難関校を目指す子どものなかには、小学1年生から通塾するという生徒もいます。当然、早く始めたほうが小4で本格的にスタートするときに学習習慣などがついていて、有利になることは多いと思います。
その一方で、あまり早く始めすぎることで、早々に勉強疲れをしてしまい、小5、小6で「塾を辞めたい」と言い出す子どもも少なくないので注意が必要です。そのような場合、無理に早く塾に通わせる必要はないと思いますが、小4のスタート時になるべく上位クラスに行かせたいと思うのでしたら、通わせたい塾に強い家庭教師など個別講師に、本人が勉強嫌いにならないようにペースを見ながら指導できるような形が望ましいでしょう。
3.中学受験の指導は特別なテクニックが必要
中学受験と大学受験は違う!
たまに「先生は東京大学か京都大学卒の人にしてください」と言われることがあります。もちろん優秀な先生もたくさんいらっしゃいますが、注意してほしいのは、その先生に中学受験の経験があるか否かです。
中学受験の経験がなく、公立中学・高校から最難関大学の数学科を卒業し、大学受験生の家庭教師をしている講師であっても「中学受験を考えている小学生の算数の指導できますか」と聞くと、中学受験を知っている人の多くは「大学受験は指導できますけど、中学受験は難しいです」と答える場合がほとんどです。中学受験の算数と大学受験の数学はぜんぜん違うからです。
高学歴だからといって中学受験指導に強いとは限らない
高学歴の講師志望者が、中学受験をあまり知らず「生徒は小学生ですよね、小学生の問題なら大丈夫ですよ」と軽く返事をする人がいます。そのような人に灘中など最難関中学の入試の過去問を見せると、「少し時間をもらえますか」と頭を悩ませます。
しばらくして「解けました」と言うので、解き方を見ると「ⅹ」や「y」などを使った方程式を使って解いているケースがほとんどです。小学生は方程式を習いませんので、これでは小学生に指導はできません。自分が解くということと教えるということはまた別物なのです。
中学受験にはそれ専用のテクニックがあり、それはそれで別に習わないとわからないことも多いのです。「小学生だから教えるのは簡単」ではなく、「小学生だからこそ教えるのが難しい」のです。小学生こそうまくのせて、難題を解かせなければいけません。
つまり、中学受験を考えるのであれば、高学歴かどうかというより、中学受験の経験があるか、もしくは中学受験の指導が豊富にある講師に指導してもらうことが大事です。
4. 中学受験におすすめの塾とは?塾費用は?
大手中学受験塾とは
中学受験塾として高い実績を持ち、この業界で大手と呼ばれている塾は、近畿圏では浜学園、希学園、日能研、馬渕教室、能開センターなど、関東圏ではSAPIX、四谷大塚、早稲田アカデミー、日能研、栄光ゼミナールなどが有名です。
これらの大手塾は小学校の授業のように、先生が前に立って教える集団指導となります。クラスは概ね成績別によるクラス編成となっております。
大人数の授業は苦手なので1クラス数名の少人数制がいいという子どもや、個別指導や家庭教師など、個人指導のほうが向いているという子どももいます。個人指導は自分のペースで進められるというメリットがある反面、自分がどの位置にいるのかがわかりにくくなるというデメリットもあります。
理想的な塾の通い方
個人指導のみの場合でも、定期的に大手塾の公開テストだけでも受験しておくほうがいいでしょう。試験結果として点数や偏差値、順位などが詳しく出て返却されるので、自分の志望校に対して学力が足りているのか、またはどれほど足りていないのかが一目でわかります。これらがわかることによって、自分の弱点なども把握できるため今後の学習にたいへん有益なものとなります。
また集団塾はそこで仲間ができることで、志望校合格に向けて切磋琢磨する良さがあります。ライバルでもありますが、いい仲間となって互いに励まし合い、モチベーションを上げることにも繋がります。
できれば、集団塾に通いながら、家庭教師などの個人指導で苦手分野などをフォローすることが理想的です。家庭教師をつけるのは、集団塾の学習にさらに個人学習をプラスするという考えではなく、集団塾での取りこぼしを補い、より合格を確実にしていくという考え方でいいでしょう。
塾の費用は?
各塾によって授業料は違いますし、学年によっても異なりますが、大手塾のだいたいの月額の予算としては、以下の通りです。
4年生⇒2万円~4万円/月
5年生⇒2.5万円~5万円/月
6年生⇒3万円~6万円/月
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もちろんこれ以上のこともこれ以下の場合もあるかもしれませんが、概ね上記のような感じで考えておけばいいでしょう。また、この他に春夏冬期講習やオプション講習、教材費や模試代等がかかることがほとんどです。それも併せて考えておきましょう。
5. 中学受験塾選びのポイント
中学受験塾を選ぶ基準
中学受験における塾の必要性がわかったところで、数多くある学習塾のなかで何を基準に塾を選べばいいのかと迷ってしまうかもしれません。
中学受験塾にはそれ特徴があります。灘や開成など最難関校に特化しているような塾、中堅難関校に多くの合格者を排出している塾、一定の地域の学校に合格者を多く出している塾など、さまざまです。
学校別以外にも、毎週復習テストがある塾や隔週テストの塾、宿題の多い塾、逆に少ない塾、生徒数の多い塾、少人数制の塾など選ぶ基準はさまざまです。
迷った場合は、以下のような基準で選ぶとよいでしょう。
- 志望校別
- 利便性(通いやすさ)
- 費用
- 雰囲気(性格に合った塾)
- 日時やスケジュール(他の習い事等の兼ね合い)
次にそれぞれの基準ポイントを詳しくみていきましょう。
①志望校別で選ぶ
前述のように、塾には得意とするレベルや地域などがあり、それぞれに特色があります。
実際に合格実績を見ると、どの学校を得意としている塾なのかが何となく見えてきます。
ちなみに、下記の表は2022年の関西大手進学塾別に灘中合格者数を多い順に表したものです(カッコ内の数字は前年度比)。
浜学園 |
馬渕教室 |
希学園 |
日能研 |
96(±0) |
70(-1) |
48(+1) |
43(+13) |
SAPIX |
能開センター |
進学館 |
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34(+8) |
11(+1) |
8(+1) |
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なんとなくでも志望校が決まっているのなら、その学校を得意とする塾を基準に選ぶのは一つの考え方として正しいといえるでしょう。
②利便性(通いやすさ)で選ぶ
通いやすさも塾選びの大事なポイントです。週に半分ほど通うとなれば、あまり遠くなると塾の行き帰りだけでも時間のロスになりますし、肉体的な負荷も大きくなります。
学校や塾の宿題もありますから、通塾だけで疲れてしまうと、心身ともに負担が大きくなるでしょう。子どもだけで夜遅く通うのは心配ですし、送迎のことも考えると、やはり通いやすさも大きな要素といえるでしょう。
③費用で選ぶ
経済的な理由も大きな要素となるのは間違いありません。前述したように、費用は安いところもあれば、高いところもあります。ご家庭の事情にもよるでしょうし、無理のない範囲で通うのに越したことはありません。
一方で多少無理をしてでも、後で後悔のないよう今ここでがんばらせたいという考えもあるでしょう。大切なことは、ご家庭でよく話し合って納得する塾を選んであげることです。
④雰囲気で選ぶ
いくら距離や費用がマッチしていても、本人がその塾に性格的に合わないのであれば、無理に通わせてもいい結果にはなりません。
ネームバリューだけで選んで、実は本人にはまったく向いていなかったということもよくある話です。
まずは一度資料請求がてら直接出向いて塾の雰囲気などを見学したり、できれば無料体験などで実際に授業を受けたりすることをおすすめします。
活気がある、落ち着いた雰囲気、厳しそう、和気あいあいとしているなど、行ってみないとわからないこともたくさんあります。
本人が「ここに通いたい」と思えることが何より大切です。
⑤日時やスケジュールで選ぶ
塾に通うと毎週月・水・金に算数・国語・理科などといった通常の授業がある上に、毎週ではなくても月に1度は日曜日に公開テストや特訓授業などがあります。
当然、別の習い事をする時間は少なくなります。野球やサッカーなどを習っていると、塾のない曜日であれば練習には行けますが、試合はほぼ土日なので、塾の公開テストと重なったりすることも多くなります。そのたびに試合に出たい子どもと、塾の試験を受けてほしい親とでもめることのないように、事前にきちんと話し合っておく必要があります。
英語やピアノ、ダンスなどの習い事も通塾曜日との相談となってきます。中学受験に向けて、何の習い事をどこまでやるのか、塾や家庭教師の先生とも相談し、本人も納得できるように決めましょう。中学受験をするのであれば、通塾によって生活が一変することも理解しておくことが大切です。
6. よくある塾選びの間違い
塾を選ぶ基準をお伝えしましたが、選ぶ際にやってはいけないことや気をつけたい注意事項があります。以下は「よくある塾選びの間違い」ですので、気をつけてくださいね。
楽しい塾はいい塾か?
どこの塾を選ぶかという話になった時に、よく聞くのが「友達の〇〇くんが通っている塾だから」という理由です。勉強嫌いで塾も行きたくないと言っていた子どもが、友人が通っているから、楽しそうだから「行ってもいい」という気になったといいます。
確かにきっかけはこのような理由で入塾し、そこからメキメキと実力を発揮、見事志望校に合格ということもあります。しかし、皆が必ずそうなるかというと難しいものがあります。
塾は勉強をしに行くところですので、放課後も友人と楽しく遊べる感覚で通塾するようでは意味がありません。授業中はただ椅子に座っているだけではなく、少なくともしっかり聞いて勉強しなければなりません。そのあたりの見極めは必要でしょう。
面倒見のいい塾とは
「あの塾は面倒見のいい塾だからおすすめです」という、「面倒見のいい塾」という言葉をよく耳にします。
これは、単に集団授業をするだけではなく、個人1人ひとりの生徒に対してきちんと向き合い、学習や受験のアドバイスなどをしてくれる塾のことを指します。
しかし、これまで数多くの進学塾出身の生徒を見てきたなかで、同じ塾であっても人によっては「面倒見がいい塾だ」と感じる人もいれば、「面倒見が悪い」と感じる人もいます。
例えば、最難関校に合格した生徒の親が「子どもが通っていた塾はとても面倒見のいい塾だった」と言っていたとしても、中堅校に合格した生徒の親に聞くと、同じ塾なのに「面倒見の悪い塾だった」と言われることもあります。
成績上位者にはやさしく、下位者には冷たいという話は実際になくはありません。逆に成績下位者であっても「とても親身に相談にのってくださいました」という塾もたくさんあります。いわゆる「切り捨てない塾」です。
つまり、面倒見がいいかどうかは人によって違うということです。当然ですが、ホームページなどで掲載されているコメントに悪いことは載せていないでしょうし、同じ塾でも教室によって違うことも多く、実際には入塾してみないとわからないと思っていたほうがいいでしょう。
塾に入ればだいじょうぶ?
よくある勘違いとして、「大手進学塾に入れたから、中学受験はもうだいじょうぶ」という考えです。もちろん塾に入ればすべてOKではありません。中学受験はそれほど甘くはありません。
塾にはカリキュラムがあり、毎回きちんと宿題をこなしていくことでそれなりに学力はついていきます。塾にもよりますが、毎回大量に宿題が出されるので、1人で家で解くことができず、答えを丸写ししてやったことにしてしまうという子どもも少なくありません。これでは塾で怒られることもないですが、身にもなりません。
しかし、塾は生徒の理解度とは関係なく、カリキュラム通りに進んでいきます。
理解できていない、本来はもっと時間をかけて勉強するべき単元でも、塾は無関係に次の単元に進んでしまいます。
毎回毎回すべて取りこぼしなく理解して進むのはほぼ不可能ですが、理解できなかったところを後で復習して取り戻すことができる子どもは、ぐんぐん伸びて他より抜きんでることができます。逆に理解できかったことをそのままにしている子どもは、後れをとってどんどん差がひらいていきます。
模試などの大きなテストはもちろん、毎週のようにある復習テストの間違い直しもたいへん大事です。しかし、翌週にまたすぐに次のテストがありますし、宿題もあるので、なかなか間違い直しができていないままになっているケースも多いでしょう。当然ですが、成績は伸び悩みます。
この「直し」ができるかどうかが成績UPに繋がり、志望校合格へ導くカギとなります。
塾に入れたからOKではなく、いかに取りこぼしなく自宅でも弱点補強学習を進めていけるかが重要なのです。
オプション授業はすべて受けるべき?
中学受験塾には通常の授業に加え、春夏冬講習やさまざまな名称の「特訓講習」があり、それなりに費用もかかります。よく「塾から勧められたのですが、特訓講習は受けたほうがいいのでしょうか」という質問を受けます。
同じ志望校を目指す仲間が特訓講習を申し込んでいると、自分も受けないと後れをとってしまうと焦りを感じるかもしれません。そして、塾が勧めるがままに受講すると、その特訓授業でも宿題が出て負担が増し、さらに間違い直しや弱点補強に時間を費やすことが難しくなります。無理に特訓講習を受講することで、逆に足を引っ張ることになる可能性もありますから注意が必要です。
もちろん、その志望校を目指すには受講したほうがいいという講習もありますし、同じ講習でも人によって受講したほうがいい場合とそうでない場合があります。トータルで考えて、本人にとって本当に必要なのか否かよく見極めることが大切です。
7. まとめ~塾外学習の大切さ
今回はこれから中学受験を考えたいと思われている方に向け、塾について細かくお伝えいたしました。
中学受験を独学で行うのはかなり難しく、ある意味大学受験よりも厳しいと言えるでしょう。難関校以上の中学受験を考えるならば、志望校に強く、お子さまの性格に合った塾を選ぶことが理想です。
一方で、塾に入れさえすればいいということでもなく、間違い直しなどの家庭学習も必須です。それが難しければ、家庭教師などプロの講師に個人的に指導してもらうのもいいでしょう。
実際、大手塾に行きながらそのフォローで家庭教師の指導を受けているという生徒も多数います。塾の進度より先取りして学習したいという要望もありますが、多くは塾の間違い直しや弱点補強として考えられているようです。
誰一人として同じ実力・能力の生徒はいません。それぞれ性格も異なりますから、学習の進め方も違います。どのような塾が向いているのか、どの講座を取ることが有効なのかなど、勉強だけでなく受験相談もできるといいでしょう。