2023年の中学入試から、今回は東大寺学園中について振り返ります。今年度の受験データを細かく分析、各科目の傾向やポイント、2024年の対策等について徹底解説いたします!
CONTENTS:
1.東大寺学園中2023年入試の特徴
■試験時間と配点
東大寺学園中入試は、国語・算数・理科の3教科、または国語・算数・理科・社会の4教科受験のどちらかを選ぶことができます。試験時間は算数が60分、他教科は50 分です。
配点は最難関中学の男子校の中で唯一全教科均等配点をしていて、4教科各100 点の400 点満点となっています。4教科受験では、4教科の合計点または国算理の3教科の合計の4/3倍のうち、高い方を総合点としています。
3教科受験は、得点300点満点を4/3 倍して400 点に換算します。他校によくある国算社という3科評価はありません。
■4科受験と3科受験について
前述のような配点法のため、東大寺を第一志望にしている受験生のほとんどが4教科で受験します。もちろん社会科があまり得意でない受験生や、灘中や甲陽学院中のように社会科が試験科目にない学校を第一志望校にする場合は3教科受験もあるでしょう。
東大寺学園中は統一受験日から3日目が受験日なので、毎年初日、2日目に灘中や甲陽学院中を受験した生徒の併願校となっているケースが多く、今年もこの併願パターンが多かったようです。
灘中と甲陽学院中は3教科受験ですので、毎年のことですが、3科受験と4科受験の生徒の成績を比べたとき、特に算数においては3教科受験の生徒の方が受験者平均点も合格者平均点もかなり高くなります。今年も受験者平均点で15.8点、合格者平均点で13.6点も3科受験のほうが4科受験より高くなりました。
このことからも灘中や甲陽学院中といった最難関を目指す受験生の算数のレベルが相当高いことがわかり、3教科で東大寺学園中を受験するなら、算数のレベルを十分に上げておかないと厳しいとも言えるでしょう。
2.2023年東大寺学園中の入試データ
※( )内は昨年比 <人>
【募集人員】 200名 |
出願者数 |
受験者数 |
合格者数 |
3科受験 |
373(+29) |
349(+18) |
202(+42) |
4科受験 |
594(+36) |
554(+29) |
207(-5) |
合 計 |
967(+65) |
903(+47) |
409(+37) |
2023年の東大寺学園中入試は、昨年まで2年連続で志願者数、受験者数ともに減少していましたが、2023年度入試では上記表のように増加しています。
しかし、合格者数も大きく増加したため、実質倍率は過去10年間で2021年に次ぐ低さの2.21倍でした。それまでは2.5倍前後で推移していたので、ここ数年やや倍率が低くなっています。
これは従来176名の募集定員が、2021年度入試から200名になったのが原因で、受験者が減っているというわけではありません。
3.地域別、志願者数・合格者数
2023年東大寺学園中入試で府県別に合格者数が多い順に並べたものが下の表です。
※( )内は昨年比 <人>
【募集人員】 200名 |
出願者数 |
受験者数 |
合格者数 |
大阪府 |
471(+65) |
439(+60) |
195(+16) |
兵庫県 |
108(+9) |
98(+5) |
58(+14) |
京都府 |
124(-29) |
116(-31) |
53(-7) |
奈良県 |
135(-2) |
129(-1) |
44(+5) |
愛知県 |
50(+3) |
49(+2) |
24(-2) |
滋賀県 |
17(+3) |
15(+1) |
7(+2) |
三重県 |
13(+4) |
12(+3) |
2(+1) |
和歌山県 |
2(-1) |
2(-1) |
0(-1) |
上記以外 |
47(+13) |
43(+9) |
26(+9) |
合 計 |
967(+65) |
903(+47) |
409(+37) |
今年は、出願者数が東大寺学園のある奈良県と隣接する大阪府で大きく増加したものの、同じく隣接する京都府は大きく減少しましたことが特徴的でした。
兵庫県からの受験者は微増でしたが、合格者数は大きく増加しました。その一方で兵庫県の受験者は灘中や甲陽学院中を第一志望にしている併願者も多いため、合格しても辞退者が多いのも例年通りと言えるでしょう。
4.東大寺学園中志望者の受験パターン
東大寺学園中は毎年統一受験日から3日目(今年は1/16)が受験日となります。
統一受験日前の前受け受験として、愛光、海陽、岡山白陵、北嶺、函館ラ・サール等を受験した生徒が多く見られました。
統一入試日以降は1日目と2日目の2日間受験として灘や甲陽学院を受験するか、1日目に大阪星光学院や洛星、高槻等を受験し、2日目に清風南海、西大和学園、高槻B等を受験して本番の3日目に臨むパターンが多く見られました。
前半で合格していない受験生は、4日目以降に清風南海Bや六甲学院B、洛星後期を受験したと思われます。
前受(お試し受験) |
1日目(1/14) |
2日目(1/15) |
3日目(1/16) |
・愛光(愛媛) ・海陽(愛知) ・岡山白陵(岡山) ・北嶺(北海道) ・函館ラ・サール(北海道)
|
・灘(兵庫) ・甲陽学院(兵庫) ・大阪星光(大阪) ・洛星(京都) ・高槻(大阪) |
・灘(兵庫) ・甲陽学院(兵庫) ・清風南海(大阪) ・西大和学園(奈良) ・高槻B(大阪) |
・東大寺学園(奈良)
【4日目以降(1/17~)】 ・清風南海B(大阪) ・六甲学院B(兵庫) ・洛星後期(京都) |
5.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の東大寺学園中合格者数は多い順に下記の通りでした。
※( )内は昨年比 <人>
浜学園 |
馬渕教室 |
希学園 |
日能研 |
能開センター |
150(±0) |
112(-5) |
86(+16) |
38(-1) |
33(-19) |
SAPIX |
進学館 |
成基学園 |
京進 |
第一ゼミナール |
21(+9) |
11(-2) |
8(+1) |
4(-2) |
4(+2) |
東大寺学園中の合格者は、今年も浜学園が圧倒的に多く、150名を輩出しました。全合格者が409名ですので、36.7%もの合格者が浜学園から出たことになります。
今年やや減少したものの、馬渕教室もここ数年コンスタントに100名以上の合格者数を出しています。
今年大きく増加したのは希学園で、昨年に比べ16名増えて86名の合格者を出しています。希学園は2年連続で16名増と飛躍的に伸びています。希学園は灘中へも昨年に比べ16名増加と今年大きく飛躍しています。
逆に大きく減少したのは能開センターでした。昨年の52名から33名へと19名も減りました。
6.科目別平均点
東大寺学園中合格者の各教科の平均点と受験者平均点との差を表したものが下記の表です。
(点)
|
受験者平均 |
合格者平均 |
合格者平均との差 |
国語(3科) |
59.9 |
63.9 |
4.0 |
国語(4科) |
58.1 |
64.0 |
5.9 |
算数(3科) |
59.1 |
71.0 |
11.9 |
算数(4科) |
43.3 |
57.4 |
14.1 |
理科(3科) |
60.2 |
66.6 |
6.4 |
理科(4科) |
56.6 |
64.2 |
7.6 |
社 会 |
65.8 |
71.9 |
6.1 |
※全教科 各100点満点
■難易度の推移について
東大寺学園中の昨年2022年の試験はたいへん難易度が高くなりましたので、今年は昨年に比べるとやや易化しましたが、それでも過去10年で見てみると、2022年と2014年に次ぐ高い難度で、かなり難しい試験でした。
昨年は特に算数が難しかったので、通常は合格者平均と受験者平均の差が大きく出るところ10点ほどしか差が付きませんでした。今年はやや易化した分、昨年よりは差がつく試験となりました。
他校でも同じことが言えますが、やはり他の教科に比べ算数の出来不出来で差がつくことがわかります。
■東大寺学園中を受験するなら4科か3科か?
特徴的なのは、前述の「1」でもお伝えしましたが、3科受験者は主に灘中や甲陽学院中といった3科受験の最難関校を第一志望に考えている受験生の併願校として受験する場合が多いので、3科受験者と4科受験者の算数の点数に差があることです。受験者平均点で15.8点、合格者平均点で13.6点も差がついています。
東大寺学園は全教科均等配点で、4科受験でも3科と比較して点数が高い方を評価点にしてくれます。上記の点数を見ても、東大寺学園中を第一志望に考えるのであれば、社会は例年安定して平均点が高いので、4科で受験したほうがややハードルは下がると言えるでしょう。
7.東大寺学園中、科目別の傾向と2024年の対策
2023年の東大寺学園中入試を参考に、教科ごとの傾向と対策をご紹介します!
◆国語◆
【試験時間・配点と難易度】
東大寺学園の国語入試は、50分100点満点の試験です。2023年の入試は昨年よりやや易化したものの、昨年の難度が高かったため、今年も例年に比べると難しい試験となりました。
【構成】
今年も例年通りの試験構成で、大問1に漢字・語句、大問2と大問3が長文読解という3題構成でした。
【大問1】
例年東大寺学園中の漢字はたいへん難しいことで有名です。文字自体はさほど難しくないのですが、小学生が使うとは思えない語句を書かせます。
昨年までに比べると取り組みやすかったとはいえ「チクジョウ(築城)」「ソウマトウ(走馬灯)」「ラクチョウ(落丁)」など小学生には難しい言葉が出題されました。
また、短文作成問題では「ついぞ」を使って20~30字で作文するという出題でした。果たして意味が分かって、きちんと作成できた小学生が何人いるのだろうと思うほどです。
【大問2、3】
大問2と3の長文読解は、今年も例年通り説明的文章と文学的文章の2題でした。
東大寺学園中の国語の記述は字数制限のあるものが多く、今年も30字以内、50字以内、60字以内、80字以内という記述解答の問題が4題出題されました。
制限時間が50分とやや短いので、字数に合わせてすぐに手を動かせる記述力・作文力を養っておく必要があります。
◆算数
【試験時間・配点と難易度】
東大寺学園中の算数入試は、60分100点満点の試験です。昨年はここ数年で一番難しい試験でしたので、今年は昨年に比べ易化し、例年並みの難易度に戻りました。
昨年たいへん難しかった分、受験者平均点と合格者平均点の差が10点ほどしかつかなかったのですが、今年はやや易化してこの差も14.7点と大きくなりました。
【構成】
昨年は問題数が増えましたが、今年は例年並みに戻りました。とはいえ、問題用紙がB4サイズ4枚、解答用紙が1枚と、算数にしては問題用紙の枚数が多いのが特徴的です。解答用紙は両面の一枚でほとんどが解き方を書かせる形式です。
正解に行きつかなくても思考の過程を部分点として加味されますので、普段から解き方をしっかりと書く癖をつけておきましょう。
【出題単元】
2021年までは最初に計算問題が1題出題されていましたが、昨年は計算問題がなくなりました。昨年だけの一時的なことなのか注目されていましたが、今年も計算問題はありませんでした。
図形、規則性・整数問題は例年通り今年も出題がありましたが、例年頻出していた「速さ」の問題が今年は出題されませんでした。
【対策】
大問1の単問集合以外は全て解き方を書く記述解答方式ですので、部分点が狙える解答が作成できるようにしっかり対策する必要があります。他人が見てわかり易いように思考過程を残す練習は必須です。
◆理科
【試験時間・配点と構成】
東大寺学園中の理科入試は、50分100点満点のテストです。問題用紙はB4用紙7枚と解答用紙が別に1枚あります。
例年、生物と地学の分野から各1題と化学と物理の分野から各2題の6題構成が多いのですが、数年に一度7題構成となります。今年度入試は地学分野からも2題の7題構成でした。
【難易度】
今年は昨年に比べ易化しましたが、昨年の試験がここ数年で最も難度の高い試験でしたので、今年は易化したとはいえ例年に比べるとやや難しめの試験でした。
昨年よりも易化した原因として、小問数が昨年より10問以上減少していることと、それに伴って計算問題も10問ほど減少したことなどが挙げられます。
【対策】
問題数や計算問題が大きく減少したものの、問題用紙を見てもわかるのですが、問題文が長く多くの字数を読まされます。字数だけで見ると昨年より大きく増加しています。
長文読解力も必須なので、長文問題をたくさん解いて慣れておくトレーニングが必要です。
◆社会
【試験時間・配点と構成】
東大寺学園中の社会入試は50分100点満点の試験で、問題用紙はB4用紙9枚とボリュームがあり、解答用紙が別に1枚あります。
【難易度】
受験者平均点は昨年同様65.8点で例年並みの難易度でした。
受験平均点65.8点、合格者平均点71.9点と、他の3科目に比べると点数の取りやすい教科となっています。4教科受験をする生徒は社会でしっかりと点数を稼いでおく必要があります。
【出題内容】
2023年の出題分野も、歴史・地理・公民・総合と例年通りの出題でした。
2021年は「鬼滅の刃にちなんで漫画に関する歴史問題」、2022年は「成人年齢に関する公民分野の問題」といったように、時事に絡めた問題が出題されるのも東大寺学園中の特徴です。
今年は「コロナウイルスに関する文章」からさまざまな小問が出題されました。
【対策】
解答方法は記号選択がほとんどで、4択が多い傾向にあります。中には誤っているものを選ぶ問題も含まれていますので、問題文をしっかりと細かく読み進めるトレーニングを行っておく必要があります。
問題自体はさほど難問ではありませんが、枚数が多いので多くの文章を読むことになり、最後の方で読み疲れて読み間違わないように注意しましょう。
また、日ごろから社会の出来事に関心を持ち、ニュースや新聞などに目を通して親子で話し合う習慣をつけておくことをおすすめします。出題形式などは過去問が参考になりますので、しっかり過去問演習もしておきましょう。
8.まとめ~東大寺学園中合格への道~
東大寺学園中入試の傾向や対策について解説してまいりました。2024年度入試が難化するのか易化するのか、これまでの傾向が踏襲されるのか否かなどは誰にも予測はできませんが、これだけははっきりと言えます。どのような試験であっても慌てずに受験できるよう、今からしっかり準備しておくことです。
自主性を重んじる自由な校風の東大寺学園は、毎年多くの東大・京大進学者を輩出している中高一貫校の男子校です。昨今のような少子化でも、毎年多くの受験者がチャレンジする人気校で、関西地区の最難関中学と位置付けられています。
小学生が自分1人で最難関校の受験勉強するのは難しいと思われますから、親御さまもいっしょになって真剣に受験に取り組んであげてください。どう対策していけばいいか不安に感じたら、志望校に特化したアドバイスができる受験のプロに早めに相談することをおすすめいたします。
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