2023年の中学入試から、今回は甲陽学院中について振り返ります。今年度の受験データを細かく分析、各科目の傾向やポイント、2024年の受験対策等について徹底解説いたします!
CONTENTS:
1.甲陽学院中2023年入試の特徴
2.2023年甲陽学院中の入試データ
3.甲陽学院中志望者の受験日程パターン
4.大手塾別合格者数
5.科目別平均点
6.科目別の傾向と対策
7.まとめ~甲陽学院中合格への道~
1.甲陽学院中2023年入試の特徴
■試験の難易度
2023年の甲陽学院中の入試は、昨年大きく易化した反動で大きく難化しました。ここ数年の中でも受験者平均点、合格者平均点、合格最低点ともに最も低い点数でした。
2022年は、313.2点とかなり高い受験者平均点でしたが、今年は282.4点でしたので、昨年よりも30点以上低くなったことになります。国語と理科はそうでもなかったのですが、算数が大きく難化したのが原因です。
■試験時間と配点
甲陽学院中の入試は灘中入試と同様に2日間入試で、国語・算数は各55分の各100点満点の2日間(2回ずつ)ですので、国語と算数はそれぞれ200点満点となります。理科は1日目に1回だけで、55分の100点満点、2日間3教科の合計500点満点で判定されます。
2.2023年甲陽学院中の入試データ
(前年比)<人>
|
2021年 |
2022年 |
2023年 |
募 集 人 員 |
200 |
200 |
200 |
志 願 者 数 |
410(±0) |
344(-66) |
381(+37) |
受 験 者 数 |
380(-3) |
327(-53) |
366(+39) |
合 格 者 数 |
215(-2) |
211(-4) |
221(+10) |
実 質 倍 率 |
1.76 |
1.54 |
1.66 |
甲陽学院中入試は、灘中と同じ試験日の2日間入試ということもあり、毎年最難関中学の中では倍率はさほど高くありません。2022年入試は、志願者・受験者ともに大きく減少し、実質倍率も大きく下がりましたが、今年はやや持ち直しました。
他の最難関校に比べ、比較的倍率は高くないとはいえ、やはり難度の高い最難関レベルであることに違いはありません。
3.甲陽学院中志望者の受験日程パターン
甲陽学院中志望者の受験日程パターンを表したものが下記の表です。
前受け校 |
・愛光(愛媛) ・北嶺(北海道) ・函館ラ・サール(北海道) |
|
1日目<甲陽> 1/14(土) |
2日目<甲陽><併願校> 1/15(日) |
3日目以降<併願校> (1/16) |
国語(55分・100点) 算数(55分・100点) 理科(55分・100点) |
国語(55分・100点) 算数(55分・100点) |
・東大寺学園(奈良) ・洛南高附属(京都) ・淳心学院(姫路) ・清風後期(大阪) 【4日目以降(1/18~)】 ・六甲学院B(兵庫) ・白陵後期(兵庫) ・関西学院B(兵庫) ・神戸大附属(兵庫) ・洛星後期(京都) |
【午後】 ・西大和学園(奈良) ・高槻B(大阪) ・須磨学園3(兵庫) |
関西統一入試日前に前受けとして愛光、北嶺、函館ラ・サールなどを受験、統一日初日と2日目の午前で本命の甲陽学院中、2日目の午後に西大和学園か高槻B、または須磨学園3回目を受験する生徒が多く、3日目に東大寺学園、洛南高附、淳心学院後期、清風後期を受験するパターンが多く見られました。
3日目の夕方には甲陽学院中の合格発表がありますので、合格していればこれで終了となりますが、不合格だった場合は4日目以降に六甲学院B、白陵後期、関西学院B、神戸大附属、洛星後期などを受験するパターンが多いようです。
4.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の甲陽学院中合格者数は多い順に下記の通りでした。
(前年比)<人>
浜学園 |
希学園 |
日能研 |
馬渕教室 |
83(-14) |
57(+21) |
36(+2) |
28(-10) |
進学館 |
SAPIX |
第一ゼミナール |
能開センター |
19(-1) |
11(+2) |
6(±0) |
5(±0) |
今年も浜学園が他塾に大きく差をつけましたが、ここ数年増減を繰り返しています。今年は14名減でしたので、来年は増えるのか注目です。
特筆すべきは希学園です。灘中や東大寺学園中の合格者数でも大きく躍進した希学園が、甲陽学院中でも大きく数字を伸ばしました。逆に馬渕教室は、灘中も東大寺学園中も合格者数減でしたが、甲陽学院中も大きく減少しています。
5.科目別平均点
甲陽学院中合格者の各教科の平均点と受験者平均点との差を表したものが下記の表です。
(前年比)<点>
|
受験者平均 |
合格者平均 |
合格者平均との差 |
合格者最高点 |
国 語 |
117.4(-0.2) |
125.5(+3.0) |
8.1(+3.2) |
165(+8) |
算 数 |
100.8(-33.4) |
115.0(-35.1) |
14.2(-1.7) |
197(-3) |
理 科 |
64.2(+2.8) |
67.9(+2.9) |
3.7(+0.1) |
87(+1) |
※国語、算数は各200点、理科は100点の計500点満点
2023年の甲陽学院中入試は、2022年がたいへん易しかった試験でしたので、その反動で大きく難化しました。難化とはいえ、国語と理科は易しかった2022年と同程度でした。2022年の国語は、受験者平均点と合格者平均点の差が5点もありませんでしたが、今年は例年並みの差がつきました。
大きく難化したのは算数で、昨年と比べると受験者平均点も合格者平均点も30点以上下がっています。算数だけを見ると直近10年で最も平均点の低い、つまり難度の高い試験となりました。その分例年に比べると算数で差がつきにくい試験になっています。
それでもやはり他教科に比べると算数で差が出ることに間違いありません。
6.科目別の傾向と対策
今年度の甲陽学院中入試を参考に、教科ごとの傾向と対策をご紹介します!
◆国語
【難易度】
甲陽学院中の2023年国語入試は、昨年に比べて1日目はやや難化、2日目はやや易化し、2日間通してみると昨年と同程度の難易度でした。ここ数年と比べても概ね例年並みの難易度でした。
【試験時間・配点と構成】
甲陽学院中の国語の試験構成は、1日目と2日目とで構成が大きく変わる灘中とは違い、2日間とも同じような問題構成になっています。
1日目、2日目ともに試験時間55分の100点満点の試験で、問題用紙はB4用紙2枚の大問2題構成。説明的文章と文学的文章の長文読解で、その小問の中に漢字や語句の問題が含まれています。
【傾向と対策】
・漢字
漢字問題は、本文中の言葉(線が引かれてる語句)を漢字にするという形式の問題です。灘や東大寺に比べると難易度は高くありませんので全問正解したいところです。
・記述
語句・漢字以外は、字数制限のない記述解答がほとんどで、今年も記述問題で6割強の配点があったと思われます。解答欄の大きさから自分で字数を判断しなければなりません。今年は解答欄の大きさからみて10~80字くらいの解答が多かったように思います。
記述解答は部分点がもらえるので、白紙解答は絶対に避けましょう。どん欲に1点を取りに行く姿勢が必要です。甲陽学院中を受験するなら、記述演習は必須となります。
・物語文
毎年のことですが、甲陽学院中の物語文の問題は、小学生には登場人物の心情を理解するのが難しいと思われるような問題があります。少し大人の思考を持ち合わせておかないと難しいかもしれません。
中学受験国語科専門の先生によっては、甲陽学院中の長文読解問題が一番難しいという先生もいるくらいです。小学生が読むには少し難しいくらいの文学にも慣れておき、登場人物の心情をしっかり追っていけるような演習をしておいた方がいいでしょう。
◆算数
【難易度】
昨年までの甲陽学院中の算数入試は2年連続で易化し、2022年は比較的取り組みやすい試験でしたが、その反動で今年2023年は昨年に比べ大きく難化しました。
昨年に比べ、受験者平均点も合格者平均点も30点以上下がりました。特に1日目は、易しかった昨年と比べ約20点も下がりました。今年の難易度は2日目の方が高く、受験者平均点は47.6点とたいへん低くなりました。
昨年の算数は200点満点の生徒もおりましたが、今年は算数の最高点が174点と過去10年でも最も低い点数となりました。
【試験時間・配点と構成】
甲陽学院中の算数は、国語と同様に2日間同じような問題構成で、1日目、2日目ともに試験時間55分の100点満点の試験。今年はどちらも大問6題、小問14題構成でした。
今年も大問1以外はすべて解き方を書く解答形式で、正答できなくてもそこまでの過程で部分点を得られる可能性があります。
【傾向】
毎年、平面図形、立体図形、速さ、数の性質の単元が頻出されています。甲陽学院中の算数の特徴は、図形問題の配点が高めで、近年は作図力を要求される問題も増えています。
今年も1日目の大問5は図形の面積を問う問題でしたが、図が書かれておらず問題文を読んで正確に図が書けないと難しい問題でした。
【対策】
例年解き方を書かせる解答が多いので、部分点が充分に期待できます。最後まで行きつかなくてもわかるところまで粘り強く答案を作成する力が必要です。
毎日の学習の中で途中の式や図などもきちんと書く練習をしておきましょう。
特に「数の性質」「場合の数」「平面図形」「立体図形」「速さ」は頻出単元ですので、しっかりと準備しておきましょう。中でも立体図形の切断と影の問題は頻出です。作図力も採点時の評価対象となりますから、自分で作図し解き進める力も身につけておきましょう。
◆理科
【難易度】
甲陽学院中の2023年の理科入試は、最難関校の中でも1、2を争うほどの難しさと言っても過言ではない難度の高い試験です。そのせいもあり、ここ数年受験者平均点と合格者平均点の差は5点以上つかない試験となっています。
とくに2020年、2021年の試験は大変難しく、2022年は易化し、今年はさらにやや易化しましたので、比較的取り組みやすい試験だったと言えるでしょう。そうは言っても今年もたいへん難しい試験であったことに違いはありません。
【試験時間・配点と構成】
理科の試験時間は、55分の100点満点、毎年大問6題構成です。物理と化学の分野から各2題、生物と地学の分野から各1題の6題という構成も例年通りで、小問数も62問と例年並みでした。
例年よりやや点数が上がったのは、計算問題と思考問題が減り、知識問題が増えたことが一因といえるでしょう。
【傾向】
今年もそうですが、例年物理と化学分野の難易度が高く、生物と地学分野は比較的取り組みやすい傾向にあります。
過去10年を振り返ると物理分野では「力学」と「電気」の単元、化学分野では「中和」と「溶解度」の単元が頻出です。
【対策】
物理と化学問題の小問の後半には超難問が含まれることがあります。55分という時間内に60問以上解くことになるので、問題の取捨選択も合否を分ける重要なポイントとなります。
普段から多くの演習を重ね、難易度の判断を身につけなければ取捨選択もできません。その上で、生物・地学の分野と物理・化学の分野の小問前半で確実に得点できるよう、過去問などでしっかり演習しておきましょう。
7.まとめ~甲陽学院中合格への道~
甲陽学院中入試の傾向や対策について解説してまいりました。2024年度入試が難化するのか易化するのか、これまでの傾向が踏襲されるのか否かなどは誰にも予測はできませんが、これだけははっきりと言えます。どのような試験であっても慌てずに受験できるよう、今からしっかり準備しておくことです。
甲陽学院中は、灘中と並び、関西圏最難関中学と位置付けられている中高一貫の男子校です。春は桜のトンネルのできる夙川沿いの遊歩道を通学し、学校は芦屋市との市境の西宮の閑静な住宅街にあり、たいへん恵まれた環境にある学校です。
授業の進度はたいへん速く、中学1年間で中学3年分のカリキュラムを終わらせるとも言われています。
関西の最難関中学の中では、毎年比較的倍率は低めで1.7倍前後ですが、今年は受験者数も増え試験内容も難化し厳しい入試となりました。倍率が低いからと言って、簡単には入学することができない最難関校であることに違いはありません。
甲陽学院中を第一志望とするのであれば、対策は早ければ早いほどいいでしょう。どう対策していいか不安に感じたら、志望校に特化したアドバイスのできる受験のプロに早めに相談することをおすすめします。
甲陽学院中対策ならお任せください!
保護者の方の疑問にお答えし、不安を解消する