2023年の中学入試から、今回は関西圏最難関の共学校、西大和学園中学校について振り返ります。今年度の受験データを細かく分析、各科目の傾向やポイント、2024年の対策等について徹底解説いたします!
CONTENTS:
1.西大和学園中入試の特徴
西大和学園中は関西圏の最難関中学と位置付けられていますが、募集定員が男子180名に対し女子は40名と大幅に少なく、特に女子受験生にとってはかなりの狭き門となり、関西のトップクラスの女子が集まる入試となっています。
実際、今年も女子の合格最低点は男子より10点高い結果でした。しかし、昨年2022年は8点差でしたのでやや広がったのは確かですが、2021年は40点差、2020年は56点差でしたので、男女差は年々縮小傾向にあると言えるでしょう。
西大和学園中の入試は、国語・算数・理科の3科受験または社会を加えた4科受験を出願時に選択することができます。
試験時間と配点は、国語、算数が各60分で150 点、理科と社会は各40分で100点の計500 点満点で、得点の計算方法は以下の通りです。
<3教科型> 評価点
・国語・算数・理科の合計点×1.25
<4教科型> 評価点=下記①②のうち高得点の点数
①国語・算数・理科・社会の合計点
②国語・算数・理科の合計点×1.25
また、西大和学園は帰国生入試の他、3教科型・4教科型以外に英語重視型入試もあり、下記A・Bの2種類のどちらかを選択することになります。
<英語重視型入試A >
国語と算数が各60分の150点、英語の筆記試験が40分の100点、英語のエッセイライティングが30分の70点、英語面接が30点の計500点満点で評価されます。
<英語重視型入試B >
国語と算数が各60分の150点、日本語による面接と英検取得級により加点されます。加点は英検1級で100点、準1級で75点、2級で50点です。
英語重視型入試の算数のテストは通常の3科・4科で受験する生徒の試験内容とは異なります。
その他に21世紀型特色入試というのがありますが、今回はこの試験については省かせていただきます。
2.2023年の入試データ
(前年比)<人>
募集人員 |
志願者数 |
受験者数 |
合格者数 |
実質倍率 |
男子180 女子40 合計 220 |
955(-79) 225(+11) 1,180(-68) |
866(-93) 213(+8) 1,079(-85) |
384(+7) 78(+9) 462(+16) |
2.26(-0.28) 2.73(-0.24) 2.34(-0.27) |
※帰国生・英語重視型入試・21世紀型特色入試除く
2023年の入試は昨年に比べ、受験者数は減りましたが合格者数が増えましたので、実質倍率は大きく下がりました。昨年の倍率が高かったので、例年並みの倍率に戻ったとも言えます。
特に昨年の男子はここ10年で最も高い倍率となりましたが、今年はやや落ち着きました。女子も数年前まで5~6倍といった高い倍率で推移していましたが、昨年2.97倍、今年も2.73倍と落ち着いてきてはいるものの、やはり高い倍率を保っていて狭き門であることに違いはありません。
3.西大和学園中志望者の受験日程パターン
西大和学園中志望者の受験日程パターンを表したものが下記の表です。
前受け校 |
・愛光(愛媛)・北嶺(北海道)・岡山白陵(岡山) |
|
1日目 1/14(土) |
2日目 1/15(日) |
3日目以降 1/16(月)~ |
・灘1(兵庫) ・甲陽学院1(兵庫) ・大阪星光(大阪) ・高槻A(大阪) ・清風理IIIプレ(大阪) ・明星前期(大阪) ・四天王寺(大阪) ・帝塚山1B(奈良) |
<午前> ・灘2(兵庫) ・甲陽学院2(兵庫) ・清風南海A(大阪) ・明星後期(大阪) ・帝塚山2A(奈良) ・金蘭千里後期(大阪)
<午後> ・西大和学園(奈良)
|
・東大寺学園(奈良) ・洛南高附属(京都) ・帝塚山2B(奈良) ・清風後期(大阪) ・大阪桐蔭S(大阪)
【4日目以降(1/17~)】 ・六甲学院B(兵庫) ・清風南海B(大阪) ・大阪桐蔭(大阪) |
【男子】
西大和学園中の受験日は統一日から2日目の午後ですので、男子であれば統一入試日までの前受けに愛光や北嶺など受験し、統一入試日から2日目の午前中までに灘・甲陽・大阪星光・高槻・清風理Ⅲプレ・清風南海・須磨学園・帝塚山・明星などを受験し、西大和に臨むパターンが多いでしょう。3日目以降は東大寺・洛南高附・清風・帝塚山・清風南海・六甲学院などとなるでしょう。
西大和学園中の入試本番までに灘や甲陽のような上位校にチャレンジするのか、帝塚山や明星などでしっかり押えるのか、同レベルの学校を別に受験するのかなど、さまざまなパターンが考えられます。
3日目以降も同様に東大寺や洛南高附にチャレンジするのか清風や帝塚山で手堅く勝負するのかなどさまざまです。本人と塾や家庭教師の先生とよく話し合って決めましょう。
【女子】
女子であれば統一入試日までに愛光や岡山白陵など受験し、統一入試日から2日目の午前までに四天王寺・高槻・帝塚山・清風南海・須磨学園・金蘭千里などを受験し、西大和に臨むパターンが多いでしょう。3日目以降は洛南高附・清風南海・帝塚山・大阪桐蔭などとなるでしょう。
男子と同様に、思い切ってチャレンジするのか手堅く勝負するのかなどの考え方により、併願校は大きく変わってきます。しっかり話し合って決めましょう。
4.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の西大和学園中2023年合格者数は多い順に下記の通りでした。
(前年比)<人>
浜学園 |
馬渕教室 |
希学園 |
日能研 |
能開センター |
260(+26) |
143(-43) |
129(+35) |
105(-8) |
59(+10) |
SAPIX |
進学館 |
第一ゼミナール |
京進 |
成基学園 |
58(+5) |
16(+2) |
6(-1) |
4(±0) |
2(-1) |
昨年2022年は2021年に比べ西大和学園中の合格者数が67名も減ったため、どこの塾も全体的に減少傾向でしたが、2023年の今年は昨年より合格者が16名増え、塾によって増減がさまざまな結果となりました。
昨年45名も減少した浜学園ですが、今年は26名増加して持ち直し、260名の合格者と2位以下を大きく引き離しています。一方、昨年他塾の合格者数が軒並み減少していた中で、4名の増加となった馬渕教室でしたが、今年は大きく減少しています。
日能研も昨年に続き減少し、今年大躍進の希学園に3番手の座を奪われました。能開センターは昨年大きく減少しましたが、今年はやや持ち直しました。SAPIXも昨年に引き続き合格者数を伸ばしています。
西大和学園中の入試は統一入試日2日目の午後のため、灘、甲陽学院、東大寺学園といった最難関大志向受験者の併願校として受験しやすい学校です。そのため、やはり男子最難関に強い塾は西大和学園中でも高い実績を残しています。
5.科目別成績データ
西大和学園中2023年入試合格者の各教科の平均点と受験者平均点との差は下記の通りでした。
(前年比)<点>
|
受験者平均 |
合格者平均 |
合格者平均との差 |
最高点 |
国 語 (男子) |
87.8(-7.3) |
98.7(-4.8) |
10.9(+2.5) |
129(-6) |
国 語 (女子) |
98.0(-3.1) |
109.2(+0.4) |
11.2(+3.5) |
134(+3) |
算 数 (男子) |
89.6(-12.9) |
103.5(-17.8) |
13.9(-4.9) |
138(-6) |
算 数 (女子) |
84.5(-15.0) |
99.1(-18.5) |
14.6(-3.5) |
126(-24) |
理 科 (男子) |
63.8(-1.6) |
69.8(-4.8) |
6.0(-3.2) |
95(-5) |
理 科 (女子) |
60.4(-5.2) |
67.0(-7.8) |
6.6(-2.6) |
84(-11) |
社 会 (男子) |
64.3(+8.1) |
69.1(+7.4) |
4.8(-0.8) |
95(+6) |
社 会 (女子) |
63.7(+5.4) |
68.9(+4.9) |
5.2(-0.5) |
85(-4) |
(※国語、算数は各150点、理科、社会は各100点の500点満点)
上の表のように、西大和学園中の2023年入試は昨年に比べ、社会科以外の平均点がほぼみな下がっていて、昨年より大きく難化したことがわかります。直近5年でも最も平均点の低い入試となりました。
特に算数が大きく難化し、昨年は合格者平均点と受験者平均点の差が18点以上ありましたが、今年はそこまで差が開きませんでした。
逆に国語は昨年より難化することにより、合格者平均点と受験者平均点の差が10点以上と大きく広がり、算数に近い得点差が出ました。
社会は昨年大きく難化し、ここ10年で最も平均点の低い試験でしたので、今年は大きく易化したとはいえ、例年並みに戻ったとみることができます。
6.西大和学園中、科目別の傾向と対策
今年度の西大和学園中入試を参考に、教科ごとの傾向と来年度2024年の対策をご紹介します!
◆国語
【難易度】
西大和学園中の2023年国語入試は、昨年に比べ難化しました。ただし、女子の合格者平均点は昨年よりも上がっていて、国語に強い女子受験生が多く集まっていることがわかります。
算数に目が行きがちですが、例年国語については男子の合格者平均点よりも女子の合格者平均点の方が高くなります。この男女差も昨年は5.3点だったのに対し今年は10.5点と大きくなっています。
【試験時間・配点と構成】
60分150点満点の試験で、大問3題構成。大問1と大問2は長文読解で、例年論説文と物語文が出題され、今年も同様でした。
大問3は、西大和学園中の特色でもある段落整序問題が出題されます。この問題は配点も大きいので確実に得点したいところです。西大和学園中を志望するなら、しっかりと対策しておきましょう。
また、大問3には段落整序問題の他に、毎年特徴的な出題があり、昨年は「なぞかけ」が出題され、今年は「形成文字」についての出題がありました。
【傾向と対策】
大問1、大問2それぞれに長文の字数制限のある記述解答があり、今年も90字以内の記述が各1題の合計2題出題されました。例年は40~80字程度の記述解答が多く出題されています。長文を書く力と、端的にまとめる記述力の両方をしっかりと身につけておく必要があります。
漢字は大問1、大問2の中の小問として出題されますが、さほど難度は高くありません。確実に得点したい問題です。今年は「そうしそうあい(相思相愛)」や「ていき(提起)」などが出題されました。西大和学園中受験者であれば全問正解できたと思います。
算数同様に国語の出来不出来も合否に大きくかかわってきますので、過去問などでしっかり対策しておきましょう。
◆算数
【難易度】
西大和学園中の2023年算数入試は、昨年に比べ大きく難化しました。直近5年を見ても最も難度の高い試験でした。難度が高かった分、受験者平均点と合格者平均点の差は昨年に比べ大きく縮まりました。
受験者が灘や甲陽、東大寺などといった最難関男子校の併願者も多い中、男子合格者平均点が103.8点と得点率7割にも満たなかったことからも、今回の難易度の高さがわかります。
【試験時間・配点と構成】
60分150点満点の試験で、例年通りの大問4題構成。問題用紙は10ページの冊子形式で、2022年は18ページでしたが、今年は2021年のページ数に戻りました。
ページ数は多く見えますが、例年、見開きの片面のほとんどが白紙で、計算用紙として使えるようになっています。ちなみに解答用紙は、解答のみで解き方を書く欄などはありません。
【傾向と対策】
大問1は計算問題と小問集合、大問2と大問3は単問集合、大問4は文章量を読ませる思考力が要求される問題です。大問2と大問3の単問集合では図形問題の出題割合が多いので、しっかり対策しておきましょう。
各大問の前半は解きやすい問題も多いので、ここでの確実に点数を取っておかなければなりません。1つのミスが命取りになりかねないので、注意しましょう。
今年も大問1から小問の後半の問題でやや頭を悩ます問題が出題されています。時間を要すると思ったら、後回しにするなど解きやすい問題から確実に解いていけるようにしたいところです。
解く順番、取捨選択も勝負を分けるポイントになりますから、過去問等で問題の見極め対策を行うと同時に、地道な計算演習とミス対策をしっかり行っておきましょう。
※ケアレスミス対策については、下記のブログ「3.算数でよくあるケアレスミスとその対処法」でご紹介していますのでご参照ください。
↓↓
『得点アップにつながる答案用紙の書き方!ケアレスミスをしやすいタイプと対処法』
◆理科
【難易度】
西大和学園中の2023年理科入試は、昨年よりやや難化しましたが、昨年が比較的易しい試験でしたので、例年並みに近づいた印象です。
昨年は受験者平均点と合格者平均点の差が男女とも9.2点と大きく広がりましたが、今年度男子は6.0点、女子は6.6点と差が縮まりました。
【試験時間・配点と構成】
40分100点満点の試験で、出題構成は今年も物理、化学、生物、地学の4分野から各1題の大問4題構成と例年通りでした。
問題用紙は冊子形式の16ページ構成ですが、さほど多くの文字数を読まされるわけではありません。以前は小問数が50問前後あり、40分という短い試験時間でスピードが要求されていましたが、昨年、今年と2年連続で小問数はやや減少傾向にあります。
【傾向と対策】
今年は大問4の物理分野の「おもりの運動」に関する問題がやや難問だったと思われますが、手が付けられないというような問題ではなく、実験内容の文章と各表をしっかり読み取れれば解答できる問題です。面倒がらずにしっかり整理して読み進めることができれば、捨て問にするほどの難問とまでは言えなかったでしょう。
化学分野は4年連続で「化学変化」に関する出題でしたが、各分野ともに年によってさまざまな単元から出題されているので、幅広く学習しておく必要があります。
受験者平均点や合格者平均点は昨年に比べ低くなり難化したのは確かなのですが、手も付けられないような難問は見当たらなくなりました。解きやすい基本的な問題もたくさんあるので、そこで確実にミスなく得点することが合否のポイントになります。
◆社会
【難易度】
西大和学園中の2023年社会科入試は、昨年大きく難化して今年は易化したということで、概ね例年並みに戻ったと言えます。西大和学園中の社会については、だいたい今年度くらいの難易度と思って問題ないでしょう。
【試験時間・配点と構成】
40分100点満点の試験で、例年大問5題構成。今年も地理、歴史、公民の各分野からの出題があり、概算ではありますが地理が約5割、歴史が約4割、公民が1割くらいの配点で、地理と歴史で9割、中でも特に地理重視の内容となっています。小問は例年1問2点×50問です。
西大和学園中の社会は記述解答が複数出ることも特徴的です。昨年は200字以上の記述がありましたが、今年は100字以下と大きく記述量が減ったのも易化の一因と思われます。
【傾向と対策】
毎年地形図の読み取りが出題されます。今年も大問2で出題がありました。昨年より大きく減ったとはいえ、記述解答問題が複数出題されます。記述対策は必須ですので、しっかり対策しておきましょう。また、用語解答は漢字指定も多いので、きちんと漢字で書けるようにしましょう。
また、公民分野では時事問題も出題されます。日ごろから新聞やニュースに関心を持ち、親子での何気ない会話などによって時事用語の説明ができるようになると理想的です。
7.まとめ~西大和学園中合格への道~
西大和学園中2023年の入試は、社会を除いて全体的に昨年より難化し、難度の高い入試となりました。受験者数はやや減少しましたが、それでも1000人を超える受験生が集まる人気校です。
来年2024年の入試がどうなるのかは誰にも予測できませんが、どのような状況下でも慌てずに受験できるよう、今からしっかり準備していきましょう。
西日本トップクラスの学力と国際性を重視した男女共学の私立校として人気が高い西大和学園。英語多読や米国ハーバード大学に滞在するリーダー養成プログラムも魅力で、関西圏の最難関校と位置づけられています。
前述の通り、特に女子にとっては狭き門の超難関校と言えるでしょう。関西の私立校の中で、今年も東京大学合格者数は灘中に次ぐ人数を輩出しています。
小学生が自分1人で最難関校の受験勉強をするのはとてもたいへんだと思いますから、親御さまもいっしょになって真剣に受験に取り組んであげてください。どう対策していけばいいか不安に感じたら、志望校に特化したアドバイスができる受験のプロに早めに相談することをおすすめいたします。
西大和学園中対策ならお任せください!
保護者の方の疑問にお答えし、不安を解消する