2023年の中学入試から、今回は京都を代表する中高一貫の男子校、洛星中学校について振り返ります。今年度の受験データを細かく分析、各科目の傾向やポイント、2024年の対策等について徹底解説いたします!
CONTENTS:
1.洛星中入試の特徴
洛星中の入試は統一入試日の初日に前期入試、しばらく空いて6日目に後期入試があります。他の最難関校と違い、2回チャンスがあるわけですが、「前期入試」は洛星中学を第一志望に考えている受験生はもちろん、統一入試日から3日目が受験日の洛南高附中の併願校として受験する受験生も多いようです。
「後期入試」には灘や甲陽、東大寺、大阪星光など兵庫、奈良、大阪の最難関校の合否結果が出た後なので、これらの地域で思った結果が出なかった受験生が殺到します。前期の180名募集に対して、後期は45名募集ですので、毎年かなりハイレベルな狭き門の戦いとなっています。
洛星中の受験は4教科型(国語・算数・理科・社会)か3教科型(国語・算数・理科)を事前に選択して出願します。出願後の変更はできず、他校によくあるような4教科と3教科とを比べて良い方を評価点とするアラカルト方式ではありません。
【前期入試】
前期入試の試験時間と配点は国語と算数が各60分の120点、理科と社会は各50分の100点の計440点満点で判定されます。3教科型は合計点340点満点を440点満点に換算して判定します。
【後期入試】
後期入試の試験時間と配点は、国語と算数が各70分の120点満点、理科と社会は各40分の80点満点の合計400点満点で判定されます。前期同様に3教科型は合計320点満点を400点に換算して判定します。
洛星中入試の大きな特徴は受験教科の順番です。洛星は理科、国語、算数、社会の順で試験が行われます。近畿圏でこのような順番の入試はあまりありません。今年の理科は大きく易化しましたが、昨年は近年にないほどたいへん難しい試験でした。昨年の受験生は精神的にかなりきつい試験だったでしょう。
やはり最初に行われる試験は緊張しますので、1教科目でうまくスタートできると2教科目以降もリズムがよくなります。洛星中志望者は特に理科が得意だと、気持ちよく受験できるかもしれません。
2.2023年の入試データ
(前年比)<人>
前期 募集人員 180 |
種別 |
志願者数 |
受験者数 |
合格者数 |
実質倍率 |
合計 |
444(-5) |
428(-6) |
256(+2) |
1.67(-0.04) |
|
4科 |
317(+6) |
312(+9) |
201(+9) |
1.55(-0.03) |
|
3科 |
127(-11) |
116(-15) |
55(-7) |
2.11(±0) |
後期 募集人員 45 |
種別 |
志願者数 |
受験者数 |
合格者数 |
実質倍率 |
合計 |
248(-35) |
226(-17) |
53(-1) |
4.26(-0.24) |
|
4科 |
123(-11) |
116(-3) |
25(+3) |
4.64(-0.77) |
|
3科 |
125(-24) |
110(-14) |
28(-4) |
3.93(+0.05) |
今年は志願者数、受験者数ともに微減しましたが概ね昨年並みでした。一方、合格者数は2名増加しましたので、実質倍率はやや下がりました。
例年理科に比べ社会の方が点が取りやすいのですが、ここ数年理科の難化が特に目立ちましたので、アラカルト方式ではない洛星中は3科受験が大きく減少しています。
3.洛星中志望者の受験日程パターン
洛星中志望者の受験日程パターンを表したものが下記の表です。
前受け校 |
・愛光(愛媛) ・北嶺(北海道) ・岡山白陵(岡山) ・岡山(岡山) |
|
1日目 1/14(土) |
2日目 1/15(日) |
3日目以降 1/16(月)~ |
<午前> ・洛星(京都)
<午後> ・東山前期A(京都) ・明星前期(大阪) |
<午前> ・東山前期B(京都) ・明星後期(大阪) ・立命館後期(京都)
<午後> ・高槻B(大阪)
|
・洛南高附属(京都) ・東大寺学園(奈良) ・帝塚山2B(奈良) ・同志社香里後期(大阪)
【4日目以降(1/18~)】 ・東山後期(京都) ・洛星後期(京都) |
洛星中を第一志望に考えている受験生の受験日程パターンとしては、統一受験日までに前受け校として、愛光、北嶺、岡山白陵、岡山など受験し、統一入試日午前の洛星中入試に臨みます。その日に2校受験するのなら、午後は東山、明星などが考えられるでしょう。
2日目の午前は東山、明星、立命館など、午後は高槻などのパターンが多いようです。洛星は2日目の夕方に前期入試の合格発表がありますので、ここで合格が決まればもちろんこれで終了です。
合格ではなかった場合は、3日目にチャレンジとして洛南高附や東大寺を受験するか、やや手堅く帝塚山や同志社香里などを受験、4日目以降は東山など受験し、6日目の洛星後期でリベンジを図ります。
4.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の洛星中合格者数は多い順に下記の通りでした。
(前年比)<人>
馬渕教室 |
浜学園 |
成基学園 |
希学園 |
106(+2) |
88(-1) |
46(-5) |
27(+9) |
日能研 |
京進 |
能開センター |
SAPIX |
23(-8) |
11(-6) |
8(-8) |
6(±0) |
今年は洛星中に限らず、全般的に希学園の躍進が目立ち、洛星中でも大きく合格者数が増えています。成基学園もコンスタントに多くの洛星中合格者を出しています。
逆に昨年に比べ8名減少した日能研が、合格者数で希学園に抜かされる結果となりました。ここ数年、馬渕教室が100名以上の合格者を出し、トップとして安定している印象です。
5.科目別成績2023年データ
洛星中は合格者平均点の公表をしておりませんので、今年の受験者平均点のみ下記にご紹介いたします。
(前年比)<点>
【前期】 科目 |
受験者平均点 |
受験者平均点の得点率 |
理 科 |
59.7(+9.9) |
59.7% |
国 語 |
67.5(-8.1) |
56.3% |
算 数 |
66.2(-10.9) |
55.2% |
社 会 |
76.3(+3.9) |
76.3% |
※配点は国語と算数は各120点、理科と社会は各100点の440点満点
【後期】 科目 |
受験者平均点 |
受験者平均点の得点率 |
理 科 |
50.8(+19.3) |
63.5% |
国 語 |
69.6(-1.6) |
58.0% |
算 数 |
76.6(+11.1) |
63.8% |
社 会 |
52.9(-3.2) |
66.1% |
※配点は国語と算数は各120点、理科と社会は各80点の400点満点
昨年入試では洛星中の理科が前期も後期も大きく難化し、例年にない高い難度だったことが2022年入試の一つの話題でもありました。その反動で今年の理科は、前期も後期も大きく易化しましたが、大きく易化したとはいえ昨年の難度が高すぎたので、概ね例年並みに戻ったといえるでしょう。
今年の前期の算数は大きく難化し、例年と比べてもやや難しい試験でした。逆に後期の算数は大きく易化し取り組みやすい試験内容となりました。
昨年ほどは理科との点数の差はないにしても、やはり社会は高得点勝負で安定しています。
6.2023年度入試からみる科目別の傾向と対策
今年度の洛星中入試を参考に、来年度の教科ごとの傾向と対策をご紹介します!
◆国語
【難易度】
洛星中の2023年国語入試前期は、昨年が易しかったこともあり、今年は大きく難化し、概ね例年並みとなりました。後期もやや難化しましたが、こちらもほぼ例年並みの難度でした。
【試験時間・配点と構成】
60分120点満点の試験で、例年通りの大問2題構成。大問1が長文読解で、大問2は漢字の書き取り問題です。
問題用紙はB5の冊子形式で18ページですが、問1は10ページ目でようやく出てきます。最初からかなりの長文を読むことになりますので、覚悟が必要です。
大問1の長文読解問題は近代文学からの出題が多く、今年は梶井基次郎の「夕凪橋の狸」でした。ちなみに2022年は有島武郎の「一房の葡萄」、2021年が井伏鱒二の「山椒魚」、2020年は芥川龍之介の「トロッコ」でした。
【傾向と対策】
洛星中の国語大問1の読解はやや偏りがあり、過去10年くらい振り返ると、芥川龍之介の作品が2回、宮沢賢治が2回、井伏鱒二が2回出題されています。
今年は選択解答がやや減少し、記述解答の割合がやや増加しました。記述解答は今年も字数指定のないものばかりでしたが、解答欄の行数だけは決まっているのでその行数に合わせた字数で解答する必要があります。
今年の解答欄を確認すると、3行の記述が2題、2行の記述が2題、1行の記述が2題でした。3行記述はきちんと要点を踏まえたうえで、しっかりとした長文記述が必要です。
逆に1行記述は、要点を外さず端的に短くまとめる記述力が必要です。どのような字数にも対応できるようにする記述の訓練が必須となります。
大問1の小問の語句問題や大問2の漢字には、さほど難問はありません。確実に得点源にしたいところですので、過去問や問題集などで、漢字や記述対策をしっかり行っておきましょう。
◆算数
【難易度】
洛星中の2023年算数入試は、昨年に比べ前期は大きく難化、後期は大きく易化しました。前期だけを見るとここ数年で最も難度が高い試験でした。逆に後期は受験者平均の得点率が63.8%と高く、ここ数年で最も易しかったとみられます。
【試験時間・配点と構成】
60分120点満点の試験で、大問6題構成、小問20問程度という例年通りの問題数でした。洛星の問題用紙はB4用紙5枚で、算数にしては問題用紙の枚数が多いのも洛星中の特徴です。
大問1は今年も計算問題からのスタートでした。大問2は特殊算の小問集合でさほど難度は高くありません。大問1、大問2は得点を落とさないようにしたいところです。
大問3は図形の小問集合、大問4は速さ、大問5は平面図形と立体図形、大問6は光の反射(平面図形)からの出題でした。やや図形単元に偏りのある試験と言えるでしょう。
【傾向と対策】
例年「平面図形」「立体図形」「速さ」「比・割合」「数の性質」の単元は頻出です。速さの問題は昨年も今年も小問の後半がやや難しかったので、まずは小問の前半をしっかり解き切り、後半は後回しにするなど解く順序や問題の取捨選択も大事になります。
後半の問題であっても小問1や小問2は比較的易しい問題も含まれています。途中の難問に時間と取られ過ぎないようにしましょう。
洛星中の算数は解き方を書く欄のない解答のみの形式です。解き方が正しくても、最後に計算ミスをしてしまえば1点ももらえませんので、よく注意して正確に解き進める必要があります。
とくに大問1、2などの易問で、ケアレスミスをしないようにすることも合否のポイントとなります。
※洛星の算数は、ケアレスミスが許されない、正確な計算力、作業力が求められる試験となります。ケアレスミス対策については、下記のブログ「3.算数でよくあるケアレスミスとその対処法」でご紹介していますのでご参照ください。
↓↓
『得点アップにつながる答案用紙の書き方!ケアレスミスをしやすいタイプと対処法』
◆理科
【難易度】
洛星中の2023年理科入試は、昨年に比べると易化はしたものの、昨年の試験がたいへん難しかったので、例年と比較するとやや難度高めの内容でした。
【試験時間・配点と構成】
50分100点満点の試験で、例年通り物理・化学・生物・地学の各分野から1題の4題構成で、問題用紙はB4用紙5枚。例年小問数は45問前後ですが、今年は38問と少なめでした。
今年も難度の高い計算問題の割合が多く、問題数は少なかったのですが時間の余裕はなかったものと思われます。洛星中志望であれば、計算問題が苦手だと厳しい結果になるでしょう。
【傾向と対策】
計算問題というと、物理分野や化学分野と思われがちですが、今年も地学分野の「地層」の問題、生物分野の「エネルギー代謝」の問題でも計算問題が出題されました。
今年に関しては約7割が計算問題と、例年と比較しても計算問題の割合が多い年でした。今年は大問1の地学、大問2の物理の計算問題がやや難問でしたので、前半で時間を使いすぎると比較的解きやすい後半まで解き切る時間が足りなくなります。
時間がかかりそうな計算問題は後に回すなど、解き進める順序、問題の取捨選択も大事になります。過去問などでしっかり対策をしておきましょう。
◆社会
【難易度】
洛星中の2023年社会科入試は、昨年に比べ易化、例年と比較してもやや易しい試験でした。受験者平均点で76.3点ですから比較的取り組みやすい内容の試験であったことがわかります。
【試験時間・配点と構成】
50分100点満点の試験で、問題用紙はB4用紙5枚。毎年、歴史・地理・公民の各分野から出題がありますが、歴史分野からの出題割合が高い傾向にあります。例年の割合を大まかにみると、歴史が5割、地理と公民で残り5割を半々くらいの割合です。
問題数は昨年よりやや減ったとはいえ、毎年70問程度と多いのですが、さほど時間に追われるような内容ではありません。記述解答も毎年5~6問出題されますが、1行程度の記述で長文記述はありません。
【傾向と対策】
今年もそうですが、問題用紙の始めに「特に指定がない場合、漢字で書ける部分はできるだけ漢字で書きなさい」と書かれています。人物や用語などは漢字で書けるようにしておきましょう。
また、毎年時事問題の出題がありますので、日ごろから新聞やニュースにも関心を向けておき、用語の解説ができるようにしておきましょう。親子の何気ない日常の会話で話ができると、受験勉強にも親子のコミュニケーションにもなりますので一石二鳥ですよ!
7.まとめ~洛星中合格への道~
ここ数年、洛星中の入試は理科が難化していますが、社会は点数が取りやすい試験となっているため、4科受験の生徒が増え3科受験が大きく減っています。今年は算数も大きく難化したため、洛星前期受験者はかなりきつかったと思います。
来年2024年度入試がどうなるかは誰にも予測できませんが、どのような状況下でも慌てずに受験できるよう、今からしっかり準備していきましょう。
洛星中学校は「キリスト教カトリック精神に基づく“全人教育”」を目標に、生徒の自主性を重んじた授業やクラブ活動、学校行事、宗教行事など「心と身体のバランスのとれた人間を育てる」教育を行っています。中高一貫ならではの特色ある教育や進路指導で高い進学実績があり、京都を代表する中高一貫の最難関男子校とされています。
小学生が自分1人だけで難関中学の受験に取り組むのはたいへんです。ぜひ親御さまもいっしょにサポートしてあげてください。どう対策していけばいいか不安に感じたら、志望校に特化したアドバイスができる受験のプロに早めに相談することをおすすめいたします。
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