2023年の中学受験が終わって早半年、次年度の受験も刻々と迫ってきています。2024年入試の変更点として大注目なのが滝川中の共学化。この話題を中心に、中高の共学化が進む流れについて徹底解説いたします!
CONTENTS:
1. 激化する中学受験!2024年で受験業界が注目するニュース
1. 激化する中学受験!2024年で受験業界が注目するニュース
2023年の中学受験者数は、首都圏では過去最多、近畿圏でも前年度より大幅に上昇するなど、都市部を中心に中学受験が激化しています。
そのような中、毎年一部の学校ではより優秀な生徒を呼び込むために、さまざまな改革や入試の変更(入試日や時間の変更、入試教科の変更など)を行っています。来年2024年入試についても、さまざまな変更があるでしょう。
現時点でわかっている2024年度入試における変更として、受験業界で大きなニュースになっているのが、兵庫県の名門男子校である「滝川中学の共学化」です。
2. 滝川中学校とは?
兵庫県の中高一貫の男子校と言えば、灘中をはじめ、甲陽学院中、六甲学院中、甲南中、淳心学院中、報徳学園中といった歴史ある名門校がそろっていて、滝川中もそのうちの一校としてよく知られています。
滝川中学校は、創立100年を超える名門校で、とくに兵庫県民であれば親や祖父など身内や隣人が「かつて通っていた学校だった」などという話もよく聞いたりするでしょう。
最近では高校野球で甲子園に出場するなど、スポーツに力を入れている学校というイメージが強いかもしれませんが、毎年国公私立大学医学部をはじめ、難関国公私立大学に多数の卒業生を輩出していることでも有名で、正に文武両道の進学校です。
そのような名門男子校の滝川中が共学化するというニュースは、やはり来年度入試の大きなトピックとなります。これは単に滝川中学が共学化するということだけでなく、他の関西圏の受験にも大きな影響を与え、ひいては中学受験全体にも広く影響を及ぼす可能性があるのです。
3. 激減する男女別学!なぜ共学化が進むのか?
共学化せざるを得ない時代背景
近年、少子化が進んでいることは周知の事実ですが、中学受験者数自体はほとんど減少していません。それどころか冒頭で述べたように増加していて、そのピークは2025年とも2027年とも言われています。いずれにせよ来年2024年の中学受験が激化することは容易に想像できます。
少子化で大学全入時代となった昨今、進学率重視の傾向が強くなり、難関上位校の人気が上がる一方で、進学実績が高くない学校は募集定員を割ることも増えています。
そのため、多くの学校が男女別学を廃止して共学化し、校名を改称したり(男子校はそのままの校名を継承、女子校は「女子」と入っているため、改称することが多い)、高校の募集を停止して完全な中高一貫教育校になったりしています。
同時にインターナショナルな「国際」や、医学部を目指す「医進」に特化したコースを新設する学校も目立つようになりました。
少子化が進む中、私立の学校が生き抜くためには時代の流れに合わせた何かしらの改革が必要になるのでしょう。
共学化すると何が違う?
進学率に関わらず、名門校の共学化が進んでいます。大きな話題となったのが、2002年の早稲田大学の附属校、早稲田実業(東京)の共学化です。高等部商業科募集を停止し、中等部・高等部ともに男女共学を実施しました。そこからここ20年の間に実に多くの学校が共学化に踏み切ることになりました。
共学化することで、当然ですがトイレやロッカールームなど、校内のさまざまな施設が新設されます。それに伴い新校舎ができたり、施設がリニューアルされたり、オシャレなカフェができたりするので、やはり受験生への大きなアピールにはなるでしょう。
実際、異性の同級生が入ることで、進学実績にも変化が見られることが多いのもまた事実です。男子にとっては精神年齢の高い女子が加わることでいい影響が得られますし、女子にとってもいい意味の緊張感が生まれ、向上心が増します。その相乗効果で、進学実績が躍進することが実際にあるようです。
次に共学化した主要校の一例を見てみましょう。
4. 共学化で人気校へ大転換!3校の実例
共学化に成功した事例として、その代表格となる3校をご紹介します。
1)渋谷教育学園渋谷
華麗なる変身として知られるのが、渋谷教育学園渋谷中学高等学校(東京)、通称「渋渋」です。渋谷教育学園幕張中学校・高等学校(千葉)、通称「渋幕」の姉妹校として人気が高い中高一貫校ですが、現在では「渋幕」も「渋渋」もどちらも最難関校。とくに女子は御三家と並ぶかそれ以上の超がつくほどの最難関校です。
その超難関「渋渋」の前身は、渋谷女子高校、通称「渋女」。コギャルの代表校的な存在で、進学校とはおよそ無縁でした。1996年に共学となり、校名も「渋谷教育学園渋谷(渋渋)」に改称。コギャル校から一転して、国際理解を重視した教育プログラムと原宿という立地もあって、人気はうなぎ上り。偏差値も急速にアップし、現在はオシャレな都心の進学校として不動の人気を誇っています。
2023年の大学合格実績は、東大40名、京大7名、国公立医学部11名、難関国公立大97名、難関私立大501名、海外大37名と輝かしい実績を上げています。
2)広尾学園
広尾学園(東京)も渋渋と同様に、その前身は女子校でした。「順心女子学園」という大正時代の1918年に設立された女子の中高一貫校でしたが、少子化のあおりを受け、一時は1500名いた生徒も500名まで減少。廃校寸前でした。
2007年に学校名を「広尾学園」に改称し、共学化。国際化で特色を打ち出し、廃校寸前から一転。現在の「国際」ブームの先駆けとなりました。2011年には医進・サイエンスコースも設置され、さらに人気が上がって瞬く間に難関上位校の仲間入りを果たすことになりました。
2023年の大学合格実績は、東大7名、京大3名、医大72名、難関国公立大74名、難関私立大649名、海外大148名と、わずか十数年で驚くべき実績を残しています。
3)高槻中学校
高槻中学校(大阪)は、1940年に当時の大阪高等医学専門学校(現大阪医科薬科大学医学部)の藤堂献三理事長が設立した男子校です。長らく男子校でしたが、やはり少子化などの流れから、2004年に高校募集を停止し、2017年より中学1年に女子生徒を受け入れ共学化されました。
高槻中は2023年の今年、共学化して初めて卒業生を出すことになり、受験業界からも注目されていました。その高槻の今年の大学合格実績は下記の通りでした
〈人〉
|
2023年 |
2022年 |
昨年比 |
東 京 大 学 |
5 |
3 |
+2 |
京 都 大 学 |
27 |
24 |
+3 |
大 阪 大 学 |
25 |
18 |
+7 |
神 戸 大 学 |
22 |
17 |
+5 |
難関国立10大学合計 |
96 |
80 |
+16 |
国公立大学医学部医学科 |
35 |
14 |
+21 |
私立大学医学部医学科 |
67 |
51 |
+16 |
上記の表を見てわかるように、今年度は前年と比べトータル70名も合格実績が上がったという結果になっています。これは大幅アップと言ってよく、やはり共学化の効果はあったと言えるでしょう。
ちなみに、兵庫県内では、1999年にやはり歴史ある伝統校だった須磨女子中高等学校が、須磨学園中高等学校と改称し、現在では兵庫県を代表する人気の中高一貫進学校に成長しています。
他に、もともと女子校だった夙川学院中高も、当初は決して難関中高と呼ばれる学校ではなく、どちらかというとスポーツの強い女子校というイメージの強い学校でした。それが2016年に共学化し、2019年に学校法人須磨学園夙川中高となり、今や関西圏では難関上位校と呼ばれる学校になっています。
また、男子校だった関西学院中学部が2012年に共学化した時にも大きな話題となり、優秀な女子生徒がたくさん集まったと注目を浴びました。
前述した共学化に成功した事例は、ほんの一例にすぎません。これらの学校を見てわかるように、多数の実績例もあることから、今後もさらに男女別校が減少し共学化が進むものと推測されます。
5. より混戦が予想される2024年の関西中学受験
立地のよい滝川中
滝川中は神戸市須磨区にあり、電車通学の場合「板宿」駅から徒歩5分ほどと利便性が高く、道も平坦で通いやすい学校です。滝川中の近くには、前述しました同じく兵庫県で人気の須磨学園中があります。須磨学園中は、滝川中同様に「板宿」駅を最寄り駅とし、滝川中の近くを通って徒歩約15分の所にあります。
今回の滝川中の共学化は、須磨学園中や同じ学校法人の夙川中などにも影響するでしょう。須磨学園中と滝川中は同日に受験することも余裕でできますので、これまで須磨学園中の併願校を夙川中にしていた受験生が滝川中に流れる可能性も高くなります。
夙川中は「板宿」駅と同じ神戸地下鉄の「湊川公園」駅から上り道で徒歩約12分の所にあります。「湊川公園」駅は「板宿」駅より4駅「三宮」寄りで、「三宮」駅からは3駅目ですので、駅としては神戸の中心である「三宮」駅に近いといえます。
男子に比べ女子は通いやすさも学校選びの大きなポイントにしていることも多いので、駅近の滝川中はその点でも大きな強みとなるでしょう。
滝川中の共学化による周辺校(須磨学園中・夙川中)への影響
現在、関西圏の最難関共学校は女子の定員が少ないので、かなりの狭き門です。今回の滝川中の共学化は、女子にとっては選択肢が広がることになり、この地域の総体的な受験者数が増える可能性はあります。
以前、当ブログの「須磨学園中の入試分析」でも述べましたが、須磨学園中は数年前まで志願者数・受験者数を大きく伸ばしていましたが、ここ数年はやや減少傾向にあります。安全志向で夙川中に流れた可能性もありますが、今回の滝川中の共学化により、2024年のこの地区の中学受験は混戦し、激化することは間違いないでしょう。
滝川中と須磨学園中、夙川中はもちろん、周辺校の受験者数にどのような影響が及ぼされるのか大きな注目を浴びそうです。
6. 新設1年目で入学するメリット・デメリット
新設校や共学化で一新した学校は注目校ではあるものの、その一年目に入学するのはなかなか勇気がいることかもしれません。前例がないので、さまざまなことが不明で不安に感じるのも当然ですし、共学化1年目なら同性の先輩もいないのでお手本となる人もなく、部活動なども好きにできる反面、寂しく感じるかもしれません。
しかし、その一方で、他校に比べ先生方や職員が丁重に接してくれる可能性も高いですし、前述したように校舎やトイレなどの施設が新しくてきれいなことは大きなメリットでもあります。
ちなみに滝川中の場合は、男子校だった学校が女子を受け入れることになったので、更衣室やトイレなどの増設・新設はもちろん、校舎が改装されたり、体育館も新築され、グラウンドもきれいな人工芝に変わったりするなど、校内のさまざまな施設が新しくなるそうです。これらは間違いなく受験生への大きなアピールになることでしょう。
また、新しく作られる滝川中の女子の制服も気になるところかと思います。令和時代にふさわしく、女子のトップスはボレロかブレザー、ボトムスはスカートかスラックスを選べるそうですよ!
●新設される学校に入学するメリット・デメリットのまとめ●
<メリット> ・校舎や施設、設備などが新しくなってきれい ・1年目なので大事にされる(親身に指導してくれる) ・先輩がいないので、自分たちの自由にできる
<デメリット> ・前例がなく、進学実績などさまざまなことがわからない ・先輩がいないので、相談できない・寂しい
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7. まとめ~どうなる?滝川中。どうする?2024年受験!
2024年は滝川中の女子生徒募集初年度というで、ある程度人気は出ると思います。その一方で、倍率が上がることを見据えてあえて敬遠する受験生もいるでしょう。
また、男子生徒においてはその分入学者数が減ることになるので、実質狭き門になると思われます。それを踏まえて、男子の志願者が減るのか、逆に増えるのかなども注目です。
共学化1年目の滝川中をねらい目と考えるのか、敬遠するのか、今年の受験生にとっては悩ましいところでしょう。
後に超進学校に成長したときのことを考え、いまのうちに入学するのが得と思うのか、無難に既存の学校を選ぶのかは、ご家庭それぞれの考え方です。
いずれにせよ、滝川中の共学化が2024年の中学受験全体に少なからず影響を及ぼすことに違いはありません。激化する受験をどう乗り切るか、志望校選びに不安や迷いを感じたら、ぜひいちど受験のプロにご相談ください。