秋になるとそろそろ過去問を始める受験生も多いでしょう。過去問はいつから始め、何年分を何回やるか、また注意すべき点など過去問演習についてプロ目線でお答えします!
CONTENTS:
1. 実は間違った認識が多い過去問演習!
意外と正しく認識されていない過去問
中学受験生も秋になるといよいよラストスパートとなり、過去問演習を行う機会も多くなります。
しかし、過去問について意外と正しく認識されていないのもまた事実です。塾などでも「そろそろ過去問をやりなさい」などと言われても、いつから、どのくらい、どのようにすればいいか今一つわかっていない生徒も多いように思います。
そもそも過去問は何のためにやるのかを理解できているでしょうか。学校で行う問題集と同じような感覚でやっていると、大きな落とし穴にはまってしまう可能性もあり要注意です。
そもそも過去問はなぜやるべきなの?
過去問を解く目的は、主に次の3つです。
● 難易度を知る
● 問題と解答の形式を知る
● 時間と問題量の配分を知る
過去に出題された同じ問題は、実際の入試には出ません。過去問でその学校の対策をするのは、過去問の問題をそのまま暗記して答えられるようになるということではなく、あくまで上記3つの理由で対策するということです。
試験の難易度はどのくらいなのか、問題の内容や出題形式、また解答形式は本人にとって得意とするものなのか、あるいは苦手なものなのか、問題量と時間はどうなのか、最後まで解ける量なのか、時間が余るのか余らないのか、過去問の目的はその学校の入試の傾向を知ることにあります。
2. 教科別に見る過去問演習の特徴
同じ学校の入試でも、教科ごとにさまざまな特徴があります。
国語
・ 長文読解問題に毎年物語文と説明文が出題される
・ 毎年長文の記述解答の問題が出題される
・ 最終問題に漢字の書き取り問題が出題される
・ 詩、俳句など、韻文の出題がある
算数
・ 毎年大問1が計算問題
・ 頻出単元がほぼ決まっている(図形や速さなど)
・ 解答のみを書くのか、解き方も書くのか
・ 受験年の西暦数字を用いた出題がある
理科
・ 物理、化学、生物、地学の各分野からの出題、または出題分野に偏りがある
・ 計算問題が多く出題される
・ 記述解答の問題がある
・ 問題文が長い、図や表、グラフが多い
社会
・ 地理、歴史、公民の各分野からの出題、または出題分野に偏りがある
・ 解答に漢字などの指定がある
・ 記述解答の問題がある
・ 時事問題が出題される
上記はほんの一部にすぎませんが、教科ごとによくある特徴です。過去問演習を行うことによって、このような各学校の教科ごとの特徴がわかります。当日の試験での時間配分や試験に向けての心構えができるメリットがあります。
3. 過去問演習を行うメリット
前述した時間配分の把握や心構えの他に、その学校の問題が自分に合っているか否かが事前にわかることも大きなメリットの1つです。
同じレベルの学校で迷っているときに、両方の学校の過去問を解いてみて、こちらのほうが解きやすい、問題の内容が自分に合っていると思えるほうを選択するというのも1つの考え方です。
過去問演習のメリットをまとめると以下のようになります。
● 問題が自分に合っているか否かがわかる
● 傾向を知ることにより、当日の心構えができる
● 事前に時間配分をどうすればいいのか対策ができる
● 難易度を知ることにより、捨て問や問題に優先順位をつけるなどの対策がとれる
● 出題傾向を知ることにより、必要な単元を重点的に学習することができる
それでは、過去問はいつから何年分をやるのがいいのでしょうか。
4. 過去問はいつから?何年分をやるべき?
過去問を始める時期
過去問については、「いつから過去問をやればいいですか」や、「何年分やればいいですか」「何回繰り返すのですか」といった質問を本当によく受けます。
しかし、結論からいいますと、本人の学習進度や志望校レベル、受験校数などにもよりますから、人それぞれです。一概には言えません。
とはいえ、最低でも入試の2~3か月前には過去問を始められているのが理想です。少なくとも2か月前になってもまったく過去問に触れていないという状況は避けてくださいね。
過去何年分を何回演習するのか
塾や講師の考え方や個人の進度などにより多少の違いもありますが、その学校の特徴を知るためにも過去問は、3~5年分くらい演習しておきたいところです。
書店で販売されている赤本などの過去問も、だいたい5~6年分が掲載されています。それを3回くらい繰り返し、余裕があればさらに古い過去問にも挑戦してみてください。
もし時間が十分にあって、過去問10年分を2回か、過去20年分を1回か迷っているのであれば、前者である過去10年分を2回演習することをお勧めします。
学校の教育内容が昔とは大きく変わっていることもあります。男子校や女子校が共学になっていたり、新しいコースができていたり、あまりに古い過去問は、内容が変わっていてあまり参考にならない場合もあります。傾向を見るには、やはりより直近の試験のほうがいいでしょう。
また、第2、第3志望校の場合は、過去3年分くらいを1回以上演習するくらいで十分でしょう。
過去問演習をする時期・回数のまとめ
● 遅くとも入試の2~3か月前には過去問演習を始める
● 少なくとも第1志望校は、過去3~5年分を3回ほど繰り返す
● 第2、第3志望校は、過去3年分を1回以上
● 20年分を1回よりは、10年分を2回
5. 過去問演習のやり方
過去問演習は、間違ったやり方で行っても意味がありません。過去問演習は正しいやり方で行いましょう。
同じ年度の過去問を続けて行わない
過去問5年分を3回やる場合、同じ年度を続けて3回行うのではなく、違う年度を一通りやってから2回目を行うようにしてください。例えば、2023年の問題が終わったらすぐに繰り返すのではなく、2022年~2019年の問題を行ってからまた2023年の問題に戻るようにします。
続けて同じ年度の問題を解いていると、意識せずとも答えを覚えてしまう可能性があるため、少しインターバルを空けることも必要です。仮に答えを覚えてしまっていい点数が取れたとしても、本当に理解できているか判断できないため、演習を行う意味がありません。
過去問でいい点数を取ることが目的ではなく、本番の入試で合格することが目的であることを忘れないようにしましょう。
間違った問題は、他の問題集などの類題を演習する
過去問で間違った問題をできるようになるまで何度でもやり直すことは大切ですが、あまり同じ問題を何度もやり直しても、解答を覚えてしまいます。
解き直しが終わったら、他の問題集や他校の類題で間違えた単元の問題を演習するようにしましょう。
本番と同様に時間を計る
もう一つ、過去問を解く上で必ず行うべき重要なことがあります。それは、入試同様に時間を計って行うことです。
冒頭でも、そもそも「なぜ過去問を解く必要があるのか」という理由を述べました。理由の1つに「試験時間と問題数を知る」とお伝えしましたが、実際の試験時間でその問題数に挑戦しないと、時間と問題数のバランスを知ることができません。
「時間をかければできる」では困ります。決まった時間の中で出題された問題をどこまで解けるのかで勝負は決まります。
そこで、時間の計測はぜひ親御さまが行ってあげてください。6年生とはいえ、まだ子どもです。「あとちょっとだから」と、つい悪気なく30秒、1分と伸ばしてしまう恐れがあります。
30秒くらいいいじゃないかと思われるかもしれませんが、本番では1秒たりとも延長は許されません。本人のためになりませんから、過去問演習は本番同様、時間厳守で行ってください。
6. 過去問演習を行う際の3つの注意点
前述したとおり、過去問演習を行う際は必ず本番と同様に時間を計って行うことを含め、3つの注意点があります。それは次のとおりです。
- 必ず時間を計って行う
- 過去問だけに頼らない
- 傾向の慣れすぎに要注意!
前述もしましたが、過去問の試験時間は必ず厳守してください。よく「過去問をやったら9割取れた」と嬉しそうに報告してくる受験生がいます。その時に「きちんと時間を計ったか」と聞くと、「時間は計ってない」と答えます。これでは「9割取れた」の信ぴょう性は全くありません。
過去問演習は本番に向けての予行演習なので、過去問演習でのミスは本番に向けてのいいヒントになります。過去問はいい点数を取ることを目的としていません。
間違いをすることが問題なのではなく、どういった間違いをするのか、事前に知ることが大切で、それが合格への大事なヒントとなるのです。その大事なヒントを発見することができないのは、逆にもったいないですよね。
たまに志望校対策は「過去問だけ」と豪語する受験生がいます。「過去問を10年分10回やったから対策はバッチリ」と自慢気に語ったりしますが、これはたいへん危険です。
過去問は、あくまで過去に出題された問題です。同じ問題は出ません。答えを丸暗記しても、何の役にも立ちません。過去問はその学校の出題傾向を知り、自分の苦手分野や時間配分を把握するために行いますから、「過去問をやったからだいじょうぶ」と思わないようにしてくださいね。
前述の②にも通じることですが、過去問はその学校の出題傾向を知るために行います。しかし、その一方で「傾向に慣れすぎる」のにも注意が必要です。
先の過去10年分を10回演習し、大問1には何が出題されて、2は長文問題、3は記述…といった傾向を知っていると、本番でも「ああ、やっぱりここでこの問題だ、よし、時間配分はバッチリだ」と安心できるでしょう。
しかし、突然傾向が変わることもあります。これまで出題されていなかった単元が出たり、それまでは記述がなかったのに、その年に限ってハードな記述を求められたりすることもあります。
その場合、「そんなはずはない」「なんで今年に限って」とパニックになってしまい、頭が真っ白になって本来解ける問題までミスってしまうということもあります。
過去問はあくまで参考です。過去問と同じ問題はもちろん、これまでの傾向が絶対ではありませんし、そこで9割できたから本番も取れるとは限りません。その意味でも過去問だけに頼らず、頻出単元を中心した他の問題集や他校の問題など、幅広く学習しておくに越したことはないのです。
7.まとめ~親子で取り組む過去問演習
今回は過去問演習についてお伝えしました。「5.過去問演習のやり方」でも述べましたが、過去問演習を行う際は、親御さまも時間を計ったり、採点してあげたりと、ぜひ協力してあげてください。
そこで少々点数が悪くても、「なにやってるの。こんなとこで間違えている場合じゃないでしょ」と怒るのではなく、「本番じゃなくてよかったね。いい練習になったね」と笑顔でやさしく励ましてあげましょう。
これから過去問に取り組もうと思っている人はもちろん、もうすでに過去問に取り組んでいる受験生も、改めて過去問演習をする意味を考え、やり方を見直してみてくださいね。
それでもなかなか過去問に手がつけられない、親御さまが見てあげる時間がないなど、過去問に関するお悩みがあったら、残りの数か月だけでもプロの家庭教師に相談してみましょう。大事なラストスパートは専門家に任せるのも1つの手ですよ!
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