2024年の中学入試から、日本最難関中学と言われる灘中について振り返ります。今年度の入試データを細かく分析し、各科目の傾向やポイント、来年2025年の入試対策について徹底解説いたします!
今年も関西では1月に中学入試が終わり、2月からはどこの進学塾も新学年としてスタートを切りました。今回から難関各校の今年度入試をシリーズで振り返ってまいります。
まずは第一弾として、今年も灘中学の入試について解説いたします。
CONTENTS:
1. 最新(2024年)灘中、入試データ
|
2022年 |
2023年 |
2024年 |
募 集 人 員 |
180 |
180 |
180 |
志 願 者 数 |
652(-35) |
745(+93) |
747(+2) |
受 験 者 数 |
623(-27) |
730(+107) |
736(+6) |
合 格 者 数 |
255(+28) |
281(+26) |
265(-16) |
実質倍率(倍) |
2.44 |
2.60 |
2.78 |
2024年の灘中入試は、募集人員180名に対し志願者数が747名、受験者数が736名でした。昨年は一昨年に比べ、受験者数が100名以上増えましたが、今年もわずかながらも昨年よりさらに増加しました。
受験者数の増加に加え、合格者数は昨年より16名減少しましたので、今年は昨年や一昨年に比べ狭き門となりました。実質倍率は、2.78倍で、過去10年間において平均的な倍率となりました。
2.都道府県別、志願者・合格者数
下記は、2024年灘中入試の都道府県別に合格者数が多い順に表にしたものです。
※( )内は前年度比 (人)
都道府県 |
志願者 |
合格者 |
都道府県 |
志願者 |
合格者 |
||||
兵庫県 |
166 |
(+3) |
70 |
(-5) |
大分県 |
4 |
(-1) |
1 |
(+1) |
大阪府 |
157 |
(-14) |
61 |
(+9) |
海外 |
1 |
(+1) |
1 |
(+1) |
東京都 |
111 |
(+19) |
46 |
(-1) |
北海道 |
4 |
(±0) |
0 |
(±0) |
京都府 |
39 |
(+7) |
19 |
(+6) |
茨城県 |
2 |
(±0) |
0 |
(-1) |
神奈川県 |
40 |
(+3) |
15 |
(±0) |
栃木県 |
2 |
(+1) |
0 |
(-1) |
愛知県 |
60 |
(-5) |
13 |
(-5) |
群馬県 |
2 |
(+2) |
0 |
(±0) |
埼玉県 |
17 |
(-7) |
9 |
(-3) |
静岡県 |
3 |
(+2) |
0 |
(-1) |
奈良県 |
20 |
(-5) |
8 |
(-4) |
石川県 |
1 |
(-1) |
0 |
(±0) |
福岡県 |
27 |
(+2) |
6 |
(+1) |
富山県 |
1 |
(+1) |
0 |
(±0) |
岡山県 |
18 |
(-1) |
5 |
(+1) |
福井県 |
1 |
(+1) |
0 |
(±0) |
千葉県 |
5 |
(-2) |
2 |
(±0) |
徳島県 |
4 |
(+3) |
0 |
(±0) |
広島県 |
18 |
(+5) |
2 |
(-2) |
香川県 |
2 |
(+2) |
0 |
(±0) |
岐阜県 |
6 |
(±0) |
2 |
(+1) |
愛媛県 |
7 |
(-1) |
0 |
(-2) |
滋賀県 |
8 |
(-1) |
2 |
(-2) |
高知県 |
3 |
(-2) |
0 |
(-3) |
三重県 |
3 |
(-1) |
1 |
(-1) |
佐賀県 |
3 |
(±0) |
0 |
(±0) |
長崎県 |
1 |
(-4) |
1 |
(-1) |
鹿児島県 |
3 |
(-2) |
0 |
(-2) |
熊本県 |
7 |
(+2) |
1 |
(±0) |
沖縄県 |
1 |
(+1) |
0 |
(±0) |
今年も灘中入試には日本全国から多くの志願者が集まり、その数は昨年以上でした。今年も地元の兵庫県と大阪府からの志願者が多いのですが、上記表を見てもわかるように関東地方からの志願者も増加傾向にあることがわかります。
日本全国47都道府県のうち、北は北海道から南は沖縄県まで33の都道府県から志願者が集まる灘中。この人気は衰えることを知りません。
3.灘中受験者の併願校日程パターン
前受(お試し受験) |
1日目(1/13) |
2日目 (1/14) |
3日目(1/15) |
・愛光学園(愛媛) ・海陽学園(愛知) ・北嶺(北海道)
|
【午前】 国・理・算 |
【午前】 算・国 |
・東大寺学園(奈良) ・洛南高附属(京都) 【4日目以降(1/16~)】 ・六甲学院B(兵庫) ・白陵後期(兵庫) ・清風南海B(大阪) ・洛星後期(京都) |
【午後】 ・西大和学園(奈良) ・高槻B(大阪) ・須磨学園(兵庫) |
灘中の受験日程は例年通り、統一入試日初日(1月13日)午前に「国語・理科・算数」の試験があり、2日目(1月14日)午前に「算数・国語」の試験がある2日間入試です。
灘中受験者は、前受け(本命校受験の前に主に練習として受験するお試し受験)として愛光(愛媛)、海陽(愛知)、北嶺(北海道)などを受験するパターンが多いようです。
統一入試日以降の受験パターンとしては、統一入試日と2日目午前に灘中、2日目の午後に西大和または高槻や須磨学園、3日目に東大寺か洛南高附を受験。
灘中の合格発表が4日目の火曜日午前なので、4日目までは受験を続ける受験生が多く、4日目に六甲学院や白陵または清風南海などを受験。ここまでで合格できなかった場合は洛星後期を受験するという併願パターンが考えられるでしょう。
4.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の2024年灘中合格者数は多い順に下記の通りでした。
※( )内は前年度比 (人)
浜学園 |
馬渕教室 |
希学園 |
日能研 |
SAPIX |
111(+19) |
58(-2) |
53(-11) |
42(-10) |
33(+3) |
能開センター |
進学館 |
第一ゼミナール |
成基学園 |
|
13(+3) |
8(-1) |
2(-1) |
1(+1) |
|
今年は浜学園の合格者数が100名を上回り、他塾を大きく引き離す結果となりました。一方、昨年は大きく実績を伸ばした希学園と日能研は、10名以上の減少となりました。
近畿圏南部地域に強い能開センターが、今年は灘中を含め全体的に実績を伸ばしています。
SAPIXは最近でこそ関西でも目にすることが増えましたが、元々は関東の大手有名進学塾。今年も関東からの受験者が多く、33名の合格者を出しました。東京の最難関校受験の前受けとして受験した生徒も多かったようです。
関東の塾からは、やはり大手進学塾の「早稲田アカデミー」も灘中に52名もの合格者を出しています。この52名については、ほとんどが東京の最難関志望の生徒の練習として前受け受験したものと思われます。
今年も灘中は180名の募集に対し、265名の合格者を発表しています。前述のような関東の合格者から辞退者が多く出ることを見越しての発表となっています。
毎年お伝えしていますが、灘中受験者はこの入試が関西圏だけの戦いではないということをよく覚えておくべきでしょう。
5.科目別平均点
灘中合格者の各教科の平均点と受験者平均点を過去3年間で比較したものが下記の表です。
(点)
|
2022 |
2023 |
2024 |
合格者平均との差 |
国語1(80点)合格者平均 |
57.5 |
55.5 |
60.5 |
|
(受験者平均) |
(53.4) |
(51.1) |
(54.7) |
5.8 |
国語2(120点)合格者平均 |
70.9 |
70.6 |
72.9 |
|
(受験者平均) |
(64.2) |
(65.4) |
(66.9) |
6.0 |
算数1(100点)合格者平均 |
64.5 |
79.4 |
72.7 |
|
(受験者平均) |
(52.7) |
(63.5) |
(60.7) |
12.0 |
算数2(100点)合格者平均 |
65.3 |
65.8 |
72.2 |
|
(受験者平均) |
(53.8) |
(53.4) |
(59.2) |
13.0 |
理科(100点)合格者平均 |
69.9 |
72.6 |
77.6 |
|
(受験者平均) |
(60.4) |
(64.0) |
(70.5) |
7.1 |
※各配点は国語1が80点、国語2が120点、他は各100点
【灘中入試の難易度の推移】
2024年の灘中の入試は、ここ数年では2021年に次ぐ比較的易しい試験でした。昨年は一昨年に比べ易化し、今年度も昨年よりも受験者平均も合格者平均も全教科合計点で10点以上高くなりました。2年連続で易化したので、反動で来年度は難化することが予想されます。
受験者平均点と合格者平均点に差がつくのは、見ての通りやはり算数です。算数が苦手では、たとえ差がつきにくい国語でいい点が取れても、合格点に届かない可能性が高くなります。
灘中を受験するのなら、算数の強化が必須です。むしろ灘中に限ったことではなく、中学受験に算数強化は欠かせません。どこの中学でも受験者平均と合格者平均の差は算数で大きく出る傾向にあります。
また、灘中入試の算数以外の教科では、例年国語より理科で差がつく傾向にあります。ただし、国語は200点満点、理科は100点満点ということも踏まえ、各教科の力の入れ方を考慮しつつ学習していく必要があるでしょう。
6.灘中、科目別の傾向と2025年入試対策
今年度の灘中入試を参考に、教科ごとの傾向と対策をご紹介します!
◆国語◆
2024年の灘中国語入試は、1日目の「国語1」が80点満点のほとんどが知識問題、2日目の「国語2」は120点満点の長文読解中心という例年通りの出題パターンでした。
昨年、一昨年は例年と比べても難度の高い試験で、今年はやや易化したものの、例年と比べるとやはり平均点の低い難度の高い試験となり、3年連続で国語の難化が続いています。
今年は国語1で受験者平均点と合格者平均点の差が5.8点と、過去10年で2番目に差がつく試験となりました。国語2はほぼ例年並みの6.0点の差がつき、今年は国語でも受験者平均点と合格者平均点の差が比較的大きくなりました。
■「国語1」
試験時間は40分の80点満点の試験で、昨年、一昨年よりも少しだけ易化しましたが、今年も難度の高い試験となりました。毎年、慣用表現や外来語、俳句など難度の高い問題が出題され、最後に漢字しりとりという例年通りのパターンでした。
大問1は長文問題で、読解問題というより本文中に出てくる語句に関する知識問題がほとんどです。最後の漢字のしりとり問題は、今年も比較的取り組みやすい問題だったように思います。
毎年この漢字のしりとり問題で何分も手が止まってしまって時間が足りなくなるという受験生がいます。試験時間は40分と短いので、最初から時間配分を考えて解き進める必要があります。
灘中の国語入試問題は、子ども同士では使わないような難しい語句も普通に出題されます。テレビや新聞、または大人が話している会話の中で意味がわからない言葉やふだんは使わないと思うような言葉があれば書き留めておくといいでしょう。
辞書で調べたり、ご家族との会話の中で、「今の言葉の意味わかる?」などと、クイズのように問題を出してみたりするのも楽しいかもしれませんよ。
■「国語2」
試験時間は70分の120点満点の試験で、今年も長文読解問題3題構成でした。大問3は毎年「詩」が出題されます。大問1と大問2は随筆と論説文がほとんどで、過去10年間で物語文の出題は2回だけです。
ここ数年、問題文が長文化する傾向にありましたが、今年はやや落ち着いた印象です。それでも大問1と大問2で、今年も5000字近い文字数を読まされることになりました。読み進めるスピードも必要です。
国語2の解答形式はほとんどが記述解答で、文字数指定のないものがほとんどです。解答欄の大きさから、「長く具体的に答える」のか「短く端的に答える」のか判断し、どちらでも書けるようにしっかり対策しておきましょう。
問題数は例年30問程度で、今年も始めに漢字の書き取りが9問あり、残りはほとんど記述解答でした。
◆算数◆
今年も例年通り、1日目の「算数1」は答えのみの解答形式、2日目の「算数2」は解き方を書かせる解答形式の試験でした。「算数1」は昨年に比べやや難化しましたが、平年並みの難易度、「算数2」はやや易しめで、受験者平均は6割近く、合格者平均も72.2点とここ数年で最も高い点数となりました。
■「算数1」
試験時間は60分の100点満点の試験で、大問12問構成も例年通りでした。出題単元と出題数も例年と同じで、今年も大問1に計算問題が1問あり、数論・場合の数の単元が4問、平面図形が3問、立体図形が2問、速さが1問、文章題が1問という構成でした。
問題は難度の低いものから順に出題されるわけではありません。前半に難度の高い問題があり、後半に案外簡単な問題があったりもします。今年も12問構成のうち大問7の場合の数の問題は難問でしたが、大問11と12の立体図形の問題は比較的解きやすい問題でした。
難問に時間をかけすぎず、できる問題から解いていけるよう、模試や過去問などで取捨選択術を練習し、しっかり身につけておきましょう。
解答形式は解答のみで、解答欄に途中式などを書くスペースはありません。当然のことですが、いくら解き方が合っていても、最後の答えが合わなければ1点にもなりません。計算ミスなどケアレスミスの許されない試験です。
灘中の算数1試験は、計算の正確性と問題を解くスピードも求められます。毎日の演習の中で、この問題にはどの解法を用いたらいいのかということが迅速に判断できるようにならないと合格は難しいでしょう。
■「算数2」
「算数2」も試験時間は60分の100点満点の試験で、1日目の「算数1」と同様に出題単元と出題数は例年とほぼ同じです。今年も数論・場合の数が2問、平面図形1問、立体図形1問、比・割合が1問の5題構成でした。
大問は5問ですが、中に小問が数問あり、小問1までは比較的解きやすいのですが、小問2以降は小問1の答えを利用して解き進めることが多く、小問1で間違ってしまうとその大問で全滅してしまう可能性もあるので要注意です。
「算数1」とは違い、「算数2」は解答欄に解き方を書くスペースがあります。最後の答えまで行きつかなくても、できるところまででもきちんと解答欄に途中式を書いておくことで、部分点がもらえます。
逆に頭の中だけで解いて、答えは正解していても、解答欄に途中式がなければ点数がもらえない可能性もあります。普段から途中式や解き方を書いて解き進めるくせをつけておくことが大切です。
◆理科◆
試験時間は60分の100点満点の試験で、出題分野の割合もここ数年変わりはありません。物理と化学分野から各2問、生物と地学分野から各1問の6題構成です。
昨年は一昨年に比べ易化しましたが、今年度は昨年よりもさらに易化し、合格者平均点は77.6点とかなりのハイスコア勝負となりました。今年の試験は計算問題が10問程度と昨年の半分以下であったことが1つの要因かもしれません。来年度の試験は、計算問題が増加し難化する可能性があります。
例年物理分野と化学分野で難問が出題されていますが、今年も同様でした。今年は大問3の物理分野の問題が「消しゴムを用いて加えた圧力と体積の変化に関する問題」で、やや難問でした。ほとんどの受験生にとって初見の問題だったのではないでしょうか。それ以外の問題がやや易しめでしたので、この問題は後回しにしても良かったでしょう。
生物分野の「昆虫の進化に関する問題」も見慣れない内容の問題でした。この問題は問題文が長く、一見敬遠したくなりますが、落ち着いて丁寧に読み進めていけばヒントも隠されていてさほど難しくはなかったと思われます。
灘中の理科入試には計算力も求められるため、算数の計算練習を毎日行ってスピードを上げておきましょう。受験が近づくにつれ、理科にそれほど時間は割けなくなると思いますので、寝る前の30分だけなど、自分なりの理科時間を作るようにしましょう。
7.まとめ~灘中合格への道~
今年も昨年に続き灘中入試は全体的に易化したとはいえ、日本の最難関中学であることに違いはありません。今年も他校と比べると、たいへん難しい試験でした。当然のことですが、時間をかけてしっかりと対策をする必要があります。
先に紹介したデータを見てもわかるように、全国から受験生が集まります。その都道府県を代表する強者が集まるわけですから、学校はもちろん、地域の進学塾で優秀でも全く安心できません。そもそもこのレベルを的確に指導できる指導者も限られています。
総合進学セミナーには灘中受験に特化して指導できる講師も多く在籍しています。毎年のように灘中志望の受験生を指導しているため、入試傾向にも精通しています。お子さま1人ひとりの現状を踏まえ、入試までの限られた時間を無駄のない効率的な指導で合格を目指します。
灘中受験はもちろん、併願校の選定など、中学受験に関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
灘中対策もお任せください!
保護者の方の疑問にお答えし、不安を解消する