2025年の中学入試から、日本最難関中学と言われる灘中について振り返ります。今年度の入試データを細かく分析し、各科目の傾向やポイント、来年2026年の入試対策について徹底解説いたします!
今年も関西では1月に中学入試が終わり、2月からはどこの進学塾も新学年としてスタートを切りました。今回から難関各校の今年度入試をシリーズで振り返ってまいります。
まずは第一弾として、今年も灘中の入試について解説いたします。
CONTENTS:
1. 最新(2025年)灘中、入試データ
|
2023年 |
2024年 |
2025年 |
募 集 人 員 |
180 |
180 |
180 |
志 願 者 数 |
745(+93) |
747(+2) |
743(-4) |
受 験 者 数 |
730(+107) |
736(+6) |
734(-2) |
合 格 者 数 |
281(+26) |
265(-16) |
252(-13) |
実質倍率(倍) |
2.60(+0.16) |
2.78(+0.18) |
2.91(+0.13) |
2020年、2021年は新型コロナウイルスの影響もあり、志願者・受験者共に減少しましたが、ここ3年は志願者数も受験者数もコロナ禍前に戻り、ほぼ横ばいで安定しています。
今年は毎年増加していた関東からの受験者がやや落ち着いたことから、合格者数が2年連続で10名以上減少、実質倍率は3年連続で上昇し、2025年の今年は2.91倍と、例年と比べても高めで狭き門となりました。
2.都道府県別、志願者・合格者数
下記は、2025年灘中入試において都道府県別に合格者数が多い順に表にしたものです。
※( )内は前年度比 (人)
都道府県 |
志願者 |
合格者 |
都道府県 |
志願者 |
合格者 |
||||
兵庫県 |
170 |
(+4) |
68 |
(-2) |
岡山県 |
13 |
(-5) |
1 |
(-4) |
大阪府 |
164 |
(+7) |
66 |
(+5) |
高知県 |
3 |
(±0) |
1 |
(+1) |
東京都 |
106 |
(-5) |
42 |
(-4) |
佐賀県 |
1 |
(-2) |
1 |
(+1) |
神奈川県 |
41 |
(+1) |
16 |
(+1) |
熊本県 |
2 |
(-5) |
1 |
(±0) |
京都府 |
36 |
(-3) |
10 |
(-9) |
宮城県 |
1 |
(+1) |
0 |
(±0) |
愛知県 |
61 |
(+1) |
9 |
(-4) |
栃木県 |
1 |
(-1) |
0 |
(±0) |
奈良県 |
24 |
(+4) |
8 |
(±0) |
山梨県 |
1 |
(+1) |
0 |
(±0) |
滋賀県 |
10 |
(+2) |
6 |
(+4) |
静岡県 |
3 |
(±0) |
0 |
(±0) |
福岡県 |
24 |
(-3) |
6 |
(±0) |
長野県 |
1 |
(+1) |
0 |
(±0) |
埼玉県 |
13 |
(-4) |
5 |
(-4) |
岐阜県 |
4 |
(-2) |
0 |
(-2) |
茨城県 |
5 |
(+3) |
3 |
(+3) |
石川県 |
3 |
(+2) |
0 |
(±0) |
広島県 |
22 |
(+4) |
2 |
(±0) |
三重県 |
6 |
(+3) |
0 |
(-1) |
愛媛県 |
4 |
(-3) |
2 |
(+2) |
鳥取県 |
1 |
(+1) |
0 |
(±0) |
北海道 |
4 |
(±0) |
1 |
(+1) |
山口県 |
1 |
(+1) |
0 |
(±0) |
秋田県 |
1 |
(+1) |
1 |
(+1) |
香川県 |
3 |
(+1) |
0 |
(±0) |
千葉県 |
3 |
(-2) |
1 |
(-1) |
徳島県 |
5 |
(+1) |
0 |
(±0) |
福井県 |
1 |
(±0) |
1 |
(+1) |
長崎県 |
2 |
(+2) |
0 |
(±0) |
和歌山県 |
1 |
(+1) |
1 |
(+1) |
鹿児島県 |
2 |
(-1) |
0 |
(±0) |
今年も灘中入試には、北海道から鹿児島まで日本全国から多くの志願者が集まりました。今年もやはり地元である兵庫県と大阪府からの志願者が多く、実に合格者全体の4割以上を占めています。
関西圏の志望者数・合格者数はほぼ予想通りでしたが、ここ数年増加傾向にあった関東からの受験がやや減少気味で、少し落ち着いた感があります。
日本全国47都道府県のうち、今年も36の都道府県から志願者が集まった灘中。少子化であっても人気は衰えることを知りません。
3.灘中受験者の併願校日程パターン
前受(お試し受験) |
1日目(1/18) |
2日目 (1/19) |
3日目(1/15) |
・愛光学園(愛媛) ・海陽学園(愛知) ・北嶺(北海道)
|
【午前】 国・理・算 |
【午前】 算・国 |
・東大寺学園(奈良) ・洛南高附属(京都) ・神戸大附属(兵庫) 【4日目以降(1/16~)】 ・六甲学院(兵庫) ・白陵(兵庫) ・清風南海(大阪) ・洛星(京都) |
【午後】 ・西大和学園(奈良) ・高槻(大阪) ・須磨学園(兵庫) |
灘中の受験日程は例年通り、統一入試日初日(今年は1月18日)午前に「国語・理科・算数」の試験があり、2日目(1月19日)午前に再び「算数・国語」の試験があるという、全国的にも数少ない2日間入試を行っています。
灘中受験者は、前受け(本命校受験の前に主に練習として受験するお試し受験)として愛光(愛媛)、海陽(愛知)の特別給費、北嶺(北海道)などを受験します。統一入試日と2日目午前に灘中、2日目の午後に西大和または高槻Bや須磨学園(第3回)、3日目に東大寺か洛南高附、午後に神戸大附属を受験するパターンが多いようです。
灘中の合格発表が4日目の火曜日午前なので、4日目までは受験を続けるパターンが多く、4日目に六甲学院や白陵または清風南海などを受験し、ここまでで合格できなかった場合は、6日目の洛星後期を受験するといった併願パターンも考えられるでしょう。
先述の通り、灘中入試は統一入試日午前と2日目の午前ですので、受験しようと思えば初日の午後にも受験は可能ですが、各塾ともに灘中入試に専念するため2日目に備え、初日午後受験はあまり勧めていないようです。
4.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の2025年灘中合格者数は多い順に下記の通りでした。
※( )内は前年度比 (人)
浜学園 |
馬渕教室 |
希学園 |
日能研 |
98(-13) |
75(+17) |
57(+4) |
40(-2) |
SAPIX |
進学館 |
能開センター |
|
27(-6) |
12(+4) |
9(-4) |
|
今年も最多の合格者数を出した浜学園ですが、昨年は100名超えで他塾を大きく引き離していました。今年は再び100名を下回る結果となっています。一方、昨年は2位だった馬渕教室が大きく躍進したため、浜学園との差がかなり縮まりました。今年は進学館の合格者数も大きく躍進し、能開センターより多くの合格者数を出しました。
関東の大手進学塾として有名なSAPIXは、近年関西でも目にすることが増えていて、灘中の合格者数も毎年30名前後輩出しています。今年も27名の合格者が出ていますが、27名のうち25名は関東の受験者の実績で、関西の教室からの合格者は2名でした。
関東の受験者実績としては、関西に教室がないため上記の表には掲載していませんが、関東の大手進学塾「早稲田アカデミー」も48名(昨年は52名)の合格者を出しています。このほとんどは開成中など関東の最難関校受験の前受けとして受験したものと思われます。
今年も灘中は180名の募集に対し、252名の合格者を出しています。関東の合格者から辞退者が多く出ることを見越しての発表となっています。
いずれにせよ、毎年お伝えしていますが、灘中受験者はこの入試が関西圏だけの戦いではないということをよく覚えておくべきでしょう。
5.科目別平均点
灘中合格者の各教科の平均点と受験者平均点を過去3年間で比較したものが下記の表です。
(点)
|
2023 |
2024 |
2025 |
合格者平均との差 |
国語1(80点)合格者平均 |
55.5 |
60.5 |
53.7 |
|
(受験者平均) |
(51.1) |
(54.7) |
(47.7) |
6.0 |
国語2(120点)合格者平均 |
70.6 |
72.9 |
70.0 |
|
(受験者平均) |
(65.4) |
(66.9) |
(65.0) |
5.0 |
算数1(100点)合格者平均 |
79.4 |
72.7 |
66.3 |
|
(受験者平均) |
(63.5) |
(60.7) |
(51.4) |
14.9 |
算数2(100点)合格者平均 |
65.8 |
72.2 |
79.9 |
|
(受験者平均) |
(53.4) |
(59.2) |
(63.8) |
16.1 |
理科(100点)合格者平均 |
72.6 |
77.6 |
81.0 |
|
(受験者平均) |
(64.0) |
(70.5) |
(73.9) |
7.1 |
※各配点は国語1が80点、国語2が120点、他は各100点
【灘中入試の難易度の推移】
2025年の灘中の入試は、昨年2024年入試が比較的易しかったので全体的に難化したイメージがありますが、大きく反動したというほどでもありませんでした。
受験者平均点と合格者平均点に差がつくのは、見ての通りやはり算数です。算数が苦手では、たとえ国語でいい点が取れても差はつきにくいので、合格点に届かない可能性が高くなります。
灘中を受験するなら、算数の強化は必須です。灘中に限らず中学受験において算数の強化は欠かせません。どこの中学でも受験者平均と合格者平均の差は算数で大きくなる傾向にあります。
また、灘中入試の算数以外の教科では、今年もそうですが例年国語よりも理科で差がつく傾向にあります。ただし、国語は200点満点、理科は100点満点という事も踏まえ、各教科の力の入れ方を考慮しつつ学習していく必要があるでしょう。
6.灘中、科目別の傾向と2026年入試対策
今年度の灘中入試を参考に、教科ごとの傾向と対策をご紹介します!
◆国語
2025年の灘中国語入試は、1日目の「国語1」が80点満点の試験で、ほとんどが知識問題、2日目の「国語2」は120点満点の試験で、長文読解中心という例年通りの出題パターンでした。
受験者平均点、合格者平均点がここ数年で最も低く、たいへん難度の高い試験でした。特に国語1は受験者平均点が47.7点で、これは直近10数年間でも50点を下回ったことがありませんでしたので、いかに難度の高い試験だったのかということがわかります。
国語2も昨年よりやや難化し、例年と比較してもやや難度の高いレベルでした。今年は灘中入試にしては珍しく「物語文」の出題がありました。通常灘中の国語2日目は論説文と随筆と詩の3題ですが、今年は論説文と物語文と詩の3題でした。物語文が出題されるのは2020年以来で、その前は2016年でした。
■「国語1」
試験時間は40分で80点満点の試験。前述の通りここ数年で最も難度の高い試験でした。
今年も慣用表現や外来語、俳句、和語など難度の高い問題が出題され、最後に漢字しりとりという例年通りのパターンでした。
大問1のみ長文問題ですが、読解問題は2問だけであとは本文中に出てくる語句に関する知識問題です。試験時間も40分と短いので大問1で2000字以上の長文をしっかり読む必要はないのかもしれません。今年の外来語と俳句は比較的取り易かったと思われますが、和語の問題はたいへん難解でした。
「~しい」という言葉を答える問題で、各文章内に該当する言葉を答えさせるのですが、始めの文字と字数は書いてありますが、小学生に「さもしい」「かまびすしい」「しかつめらしい」「つつましい」などを答えさせるのは、さすが灘中といった出題でした。
毎年最後の漢字のしりとり問題で何分も手が止まってしまって時間が足りなくなる受験生がいます。試験時間は40分と短いので時間配分を考えて解き進める必要があります。
灘中の国語入試問題は、子ども同士では使わないような(大人でもほとんど使わないような)難しい語句も普通に出題されます。テレビや新聞、または大人が話している会話の中で意味がわからない言葉や聞きなれない言葉があれば書き留めておき、辞書などで調べるクセを付けておくといいでしょう。
■「国語2」
試験時間は70分の120点満点の試験で、今年も長文読解問題3題構成でした。前述の通り、例年は論説文、随筆、詩の3題構成ですが、今年は論説文、物語文、詩の3題構成でした。
灘中の長文読解対策をする際は、主に論説文、随筆、詩となりますが、4~6年に一度くらい今年のように物語文が出題されます。今年出題されたので、来年は出題される可能性は低いのかもしれませんが、油断はできません。
解答形式はほとんどが記述で、字数制限がなく解答欄の大きさを見て字数を考える必要があります。今年の解答欄を見ると2行から3行ほどの解答欄が多かったので、30~50字くらいでまとめるとよいでしょう。
例年問題数は30問程度(今年は31問)で、漢字の書き取りが9問あり、残りはほとんど記述解答となっています。
◆算数
今年も例年通り、1日目の「算数1」は答えのみを書く解答形式、2日目の「算数2」は解き方を書かせる解答形式の試験でした。「算数1」は昨年に比べ難化し、例年と比較しても難度の高い試験となりました。
逆に「算数2」は、易しかった昨年よりもさらに易しい試験となりました。「算数2」は受験者平均点でも63.8点と、6割を大きく超え、合格者平均点は79.9点と8割に届きそうなほどでした。
■「算数1」
試験時間は60分の100点満点の試験で、大問12問構成も例年通りでした。12問中の最初に計算問題が1題あり、数論・場合の数の単元が4題、平面図形が3題、立体図形が2題という出題構成もここ数年変わっていません。
これだけ出題傾向がはっきりわかっていても、なかなか点数が取れない灘中入試。日本最難関中学と言われる所以です。
今年も問題用紙は2枚で、1枚目の大問6と7、2枚目の大問11と12にやや難度の高い問題が出題されていていました。今年度の「算数1」は、大問5までスムーズに解き進め、大問6と7で時間をかけすぎずに比較的解きやすい大問8や9に進めていく解き方が理想です。このように、解く順番や問題の取捨選択ができるように日ごろからトレーニングしておく必要があるでしょう。
「算数1」は解答のみを記入する解答形式ですので、解答欄に途中式や解き方を書くスペースがありません。当然のことですが、いくら解き方が合っていても、最後の答えが合わなければ1点にもなりません。計算ミスやケアレスミスの許されない試験です。
「算数1」は計算の正確性と問題を解くスピードも求められます。日々の演習の中で、この問題にはどの解法を用いたらいいのかということが迅速に判断できるようにならないと合格は難しいでしょう。
ここ数年では最も受験者平均点の低い試験でしたので、難度の高い試験であることに違いはないのですが、灘中を受験する生徒であれば手も足も出ないような問題はなかったように思います。
■「算数2」
「算数2」も試験時間は60分の100点満点の試験で、大問5題構成。今年は5題のうち2題が「数論・場合の数」、1題が「平面図形」、1題が「立体図形」という単元からの出題も例年通りで、残り1題が「速さ」の単元でした。
「算数1」と違い、半分くらいは解き方を書くスペースがあります。最後の答えまで行きつかなくても、できるところまででもきちんと解答欄に途中式を書いておくことで部分点が期待できます。普段の演習から途中式や解き方を書くクセを付けておくことがとても重要です。
今年も最後の大問5であっても、その中の小問1と小問2は易しい問題でした。「算数1」同様に解きやすい問題から解き進めていけるようにしましょう。
合格者平均点が80点くらいと高かったので、多くの受験生が算数を受験した後に手ごたえを感じていたと思いますが、他の生徒も同様にできていたので不合格となってしまった受験生も見受けられました。
◆理科
試験時間は60分の100点満点の試験で、今年は5題構成でした。例年は物理と化学分野から各2題、生物と地学分野から各1題の6題構成でしたが、今年は化学が1題となり、5題構成となりました。
灘中の理科入試は2022年から3年連続で易化し、2025年の今年は例年に比べても易しい試験でした。昨年「合格者平均が77.6点とハイスコア勝負となりました」と当ブログでも紹介しましたが、今年は合格者平均が81.0点とさらにハイスコアな戦いとなりました。
昨年に比べ大問数が1問減り、小問数が10問ほど増えましたが、難度は大きく下がりました。さすがに来年度は少なくとも今年よりは難化するものと思われます。大問数や小問数の変化は今年だけなのか、今後も継続となるのかはわかりません。
例年の配点だと概ね物理と化学の分野で7割、生物と地学の分野で3割ですが、今年は化学が1題減ったため、各分野概ね均等の配点となっています。今年はそうでもなかったものの、例年は物理・化学分野から難度の高い問題が出題される傾向にあります。
例年の灘中理科の入試問題と見比べ、今年は問題用紙にやや空白が目立つ印象です。例年は問題用紙3枚に文字がぎっしり詰まっているイメージがありましたが、今年は大問1題ずつに1枚となったため、問題用紙の枚数は増えましたが、その分見やすくなっています。
灘中の理科入試には高い計算力が求められるため、計算練習を毎日行ってスピードを上げておきましょう。受験が近づくにつれ、理科にそれほど時間を割けなくなると思いますので、寝る前の30分だけなど自分なりに理科時間を作るようにしましょう。
7.まとめ~灘中合格への道~
少子化が進んでいる昨今でも、3年連続で実質倍率が上昇している灘中。日本最難関中学といわれるだけあって、その人気は衰えることを知りません。今年もたいへん難しい試験でした。決して生半可な対策では合格を勝ち取ることはできません。時間をかけてしっかりと対策をする必要があります。
先に紹介したデータを見てもわかるように、全国から優秀な受験生が集まります。その都道府県を代表する強者が集まるわけですから、学校はもちろん、地域の進学塾でトップクラスでも全く安心できません。そもそもこのレベルを的確に指導できる指導者も限られています。
総合進学セミナーには灘中受験に特化して指導できる講師も多く在籍しています。毎年のように灘中志望の受験生を指導しているため、入試傾向にも精通しています。お子さま1人ひとりの現状を踏まえ、入試までの限られた時間を無駄のない効率的な指導で合格を目指します。
灘中受験はもちろん、併願校の選定など、中学受験に関するお悩みがあったら、お気軽にご相談ください。
灘中対策もお任せください!
保護者の方の疑問にお答えし、不安を解消する