2025年の中学入試から、今回は東大寺学園中について振り返ります。今年度の受験データを細かく分析、各科目の傾向やポイント、2026年の対策等について徹底解説いたします!
CONTENTS:
◆国語
1.東大寺学園中2025年入試の特徴
■試験時間と配点
東大寺学園中入試は、国語・算数・理科の3教科、または国語・算数・理科・社会の4教科受験のどちらかを選ぶことができます。試験時間は国語と算数が60分、理科と社会は50 分です(※2023年までは算数のみが60分でしたが、2024年より変更となりました)。
近畿圏の最難関男子校中学の中で、唯一全教科均等配点を行っていて、配点は4教科各100 点の400 点満点となっています。3教科受験は、得点300点満点を4/3 倍して400 点に換算します。
4教科受験では、4教科の合計点または国算理の3教科の合計の4/3倍のうち高得点となった方が評価点となります。他校でよくある国算社という3科受験はありません。
■4科受験と3科受験について
前述のような配点法のため、東大寺学園を第一志望にしている受験生のほとんどが4教科で受験します。社会科があまり得意ではない生徒や、灘や甲陽学院のように社会科が試験科目にない学校を第一志望校にする場合は3教科で受験する受験生もいます。
東大寺学園は統一受験日から3日目が試験日なので、毎年初日、2日目に灘や甲陽学院を受験した生徒の併願校となっているケースが多く、今年もこの併願パターンが多かったようです。
灘と甲陽学院は3科入試ですので、毎年のことですが、3科受験と4科受験の生徒の成績を比べると、特に算数においては3教科受験の生徒の方が受験者平均点も合格者平均点もかなり高くなります。今年も受験者平均点で11.4点、合格者平均点で7.9点も3科受験のほうが4科受験より高くなりました。
このことからも灘や甲陽学院といった最難関を目指す受験生の算数のレベルが相当高いことがわかります。3教科で東大寺学園を受験するなら、算数のレベルを十分に上げておかないと厳しいでしょう。
2.2025年東大寺学園中の入試データ
※( )内は昨年比 <人>
【募集人員】 200名 |
出願者数 |
受験者数 |
合格者数 |
3科受験 |
354(-29) |
328(-39) |
201(+14) |
4科受験 |
548(-39) |
518(-38) |
213(-8) |
合 計 |
902(-68) |
846(-77) |
414(+6) |
東大寺学園中入試は、ここ数年志願者数、受験者数ともに増加傾向でしたが、今年は大きく減少に転じました。逆に合格者数は増加しましたので、実質倍率は2.04倍と下がり、受験生にとっては広き門となりました。
3.地域別、志願者数・合格者数
2025年東大寺学園中入試で府県別に合格者数が多い順に並べたものが下の表です。
※( )内は昨年比 <人>
【募集人員】 200名 |
出願者数 |
受験者数 |
合格者数 |
大阪府 |
423(-19) |
391(-21) |
190(-7) |
兵庫県 |
101(-30) |
94(-30) |
70(+4) |
京都府 |
133(-3) |
124(-7) |
51(-2) |
奈良県 |
131(+5) |
128(+4) |
43(+5) |
愛知県 |
48(+1) |
46(±0) |
26(+2) |
滋賀県 |
15(+2) |
14(+1) |
7(+1) |
三重県 |
16(+7) |
14(+6) |
3(+1) |
和歌山県 |
5(-2) |
5(-2) |
3(+2) |
上記以外 |
30(-29) |
30(-28) |
21(±0) |
合 計 |
902(-68) |
846(-77) |
414(+6) |
昨年に引き続き、受験者数が20名以上減少した大阪府ですが、これは3年前の水準に戻ったともいえます。兵庫県も今年の受験者数が30名減少していますが、昨年26名増加しているので、ほぼ2年前と同程度に戻っています。
今年は全体的に受験者減少の傾向にありましたが、地元奈良県と三重県は受験者数が増えています。
兵庫県の受験者数は大幅に減少したものの、合格者数は4名増えています。ただ、兵庫県の東大寺学園中受験者は、灘中や甲陽学院中を第一志望にしている併願者も多いため、合格しても辞退者も多い傾向にあります。
4.東大寺学園中志願者の受験パターン
前受(お試し受験) |
1日目(1/18) |
2日目(1/19) |
3日目(1/20) |
・愛光(愛媛) ・海陽学園(愛知) ・岡山白陵(岡山) ・北嶺(北海道) |
・灘(兵庫) ・甲陽学院(兵庫) ・大阪星光学院(大阪) ・洛星(京都) ・高槻(大阪) |
・灘(兵庫) ・甲陽学院(兵庫) ・清風南海(大阪) ・西大和学園(奈良) ・高槻(大阪) |
・東大寺学園(奈良)
【4日目以降(1/21~)】 ・清風南海(大阪) ・六甲学院(兵庫) ・洛星(京都) |
東大寺学園中は毎年統一受験日から3日目(今年は1/20)が試験日となります。
統一受験日前の前受け受験として、愛光、海陽、岡山白陵、北嶺等を受験した生徒が多いようです。
統一入試日以降は1日目と2日目に灘や甲陽学院の2日間受験をするか、1日目に大阪星光学院や洛星、高槻等を受験し、2日目に清風南海、西大和学園、高槻B等を受験して本番の3日目に臨むパターンが多く見られました。
前半で合格していない受験生は、4日目以降に清風南海Bや六甲学院B、洛星後期等を受験するパターンが多いようです。
5.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の東大寺学園中合格者数は多い順に下記の通りでした。
※( )内は昨年比 <人>
浜学園 |
馬渕教室 |
希学園 |
日能研 |
159(+1) |
107(+20) |
75(+10) |
45(-9) |
能開センター |
進学館 |
SAPIX |
成基学園 |
44(-12) |
18(+8) |
15(+4) |
6(+1) |
今年も昨年に引き続き、東大寺学園中の合格者は浜学園が圧倒的に多く安定しています。合格者数上位5塾の順番は昨年と変わりませんが、昨年大きく減少した2位の馬渕教室と3位の希学園が今年再び合格者数を伸ばしました。昨年増加した4位の日能研と5位の能開センターは減少しています。
昨年2位から5位までの合格者数が僅差になっていましたが、今年は差が広がることになりました。馬渕教室は2年ぶりに100名以上の合格者を出し、まだ差があるとはいえ浜学園にやや迫っています。上位5塾以外では、進学館の躍進が目立ちました。
6.科目別平均点
東大寺学園中合格者の各教科の平均点と受験者平均点との差を表したものが下記の表です。
※( )内は昨年比 <点>
|
受験者平均 |
合格者平均 |
合格者平均との差 |
国語(3科) |
64.1(+9.9) |
68.1(+8.1) |
4.0 |
国語(4科) |
62.1(+9.8) |
67.8(+8.6) |
5.7 |
算数(3科) |
66.2(+10.2) |
75.5(+9.1) |
9.3 |
算数(4科) |
54.8(+10.5) |
67.6(+10.8) |
12.8 |
理科(3科) |
61.7(-1.7) |
67.7(-2.3) |
6.0 |
理科(4科) |
57.5(-1.4) |
66.0(-0.8) |
8.5 |
社 会 |
63.1(-1.3) |
67.8(-2.8) |
4.7 |
※全教科 各100点
上記の表を見てわかるように、今年は国語と算数が易化し、理科、社会がやや難化しました。昨年の国語と算数がたいへん難度の高い試験でしたので、その反動からか今年はかなり平均点が上がっています。
理科は昨年より難化しましたが、やはり点数で差がつくのは算数であることがわかります。東大寺学園中を受験するのなら、算数強化が必須となります。
7.東大寺学園中、科目別の傾向と2026年の対策
2025年の東大寺学園中入試を参考に、教科ごとの傾向と対策をご紹介します!
◆国語
【試験時間・配点と構成】
東大寺学園中の国語入試は、2023年まで50分100点満点の試験でしたが、2024年からは60分100点満点に変更されています。
昨年まで問題用紙はプリント形式でしたが、今年は冊子形式の24ページ、大問4題構成でした。1ページ目が大問1の漢字問題、2ページ目以降は大問2~大問4の長文読解問題となっています。
2023年までは大問1に漢字、大問2と大問3が長文読解問題で物語文と論説文が出題されるという3題構成でしたが、昨年度より試験時間が10分延びたことに伴い、大問が1題増え4題構成となりました。
今年度も昨年同様に、大問1が漢字、大問2が短めの随筆、大問3が論説文、大問4が物語文という構成でした。
【難易度】
ここ3年ほど難度高い試験が続いていましたが、今年は上記平均点を見ても分かるように、大きく易化しました。例年は難しい大問1の「漢字の書き取り」が今年は比較的平易で、大問1は満点を取れた受験生も少なくなかったかもしれません。
やや難度が高かったのは「初戦を勝ちぬいた(ヨセイ)を駆って、2回戦でも勝利を収めた」の「ヨセイ(余勢)」が難しかったかもしれません。それ以外は東大寺学園中の漢字にしては比較的平易でした。
大問1の漢字問題の最後、9問目と10問目の「4字熟語の穴埋め」も比較的耳なじみのある熟語でしたので、これも平均点が上がった要因の一つと思われます。
【傾向と対策】
東大寺学園中の国語と言えば、大問1の「漢字の書き取り」が特徴的です。毎年、文字自体はさほど難しくはないのですが、小学生が使わないような難しい語句が多く出題されます。
中学受験の国語の漢字問題は、通常全問正解を目指すのが鉄則ですが、東大寺学園の国語では「漢字問題は7割目標」などと言われることがあります。しかし、前述の通り、今年の漢字問題は易しく、十分に全問正解を目指せる内容でした。
今年の「4字熟語の穴埋め」は、昨年の「金科玉条」「面従腹背」に比べ、今年は「意気投合」「専売特許」と小学生にも比較的耳なじみのある平易な熟語でした。
大問1の漢字問題は例年10問ですが、昨年今年と最後の9問目、10問目の2題が四字熟語の穴埋め問題となっています。今後もこの傾向が続くのか、また普通の書き取り10題に戻るのかはわかりません。
大問2以降の長文読解の解答は字数制限のある記述解答が多く、今年も20字以内、30字以内、80字以内の記述が各1題と、60字以内の記述が2題の計5題の記述解答がありました。
全体の記述量は例年並みですが、短い記述から80字と長めの記述までさまざまです。短く端的にまとめる力も、しっかり長文を書き切る力も必要となりますので、記述の練習はしっかり行っておく必要があるでしょう。
◆算数
【試験時間・配点】
東大寺学園中の算数入試は、60分100点満点の試験です。昨年までは問題用紙がB4用紙2枚のプリント形式でしたが、今年は4ページの冊子形式で、別に解答用紙が1枚。解答用紙は表裏両面に書く形式でした。
【難易度】
2022年の入試がたいへん難度が高く、2023年は例年並みに戻り、昨年2024年はまた難化し、その反動からか今年は大きく易化しました。昨年より受験者平均点が10点以上高く、過去10年でも最も易しい試験となりました。
東大寺学園中を志望する生徒であれば、今年の算数は60点分くらいは難なく取れたかと思います。今年は捨て問にするほどの超難問は無かったので、残り40点分のやや難問をどれだけ取れるかの勝負となりました。来年2026年度入試はほぼ確実に今年より難化すると思われます。
【傾向と対策】
昨年は算数の出題傾向が少し変わっていて、大問数が4題から5題に増え、通常1題だけのはずの大問1の計算問題が2題出題されました。これは2012年以来です。
これが昨年だけなのか今年も継続となるのか注目をしていましたが、概ね昨年の出題構成の継続でした。今年も大問5題構成で大問1のはじめの小問1と小問2は普通の計算問題でした。
出題は、「数論・場合の数」「速さ」「平面図形」「立体図形」の単元が頻出単元ですが、今年は「速さ」単元からの出題はありませんでした。「速さ」単元は2年前も出題がありませんでした。
頻出単元は当然のことですが、どのような単元から出題されても対応できるように、幅広く学習しておく必要があります。
今年もそうですが、例年大問1の小問集合以外は、ほとんどが解き方を書く記述解答方式です。入試は1点、2点で合否を争うので、部分点が取れる解答を作成できるようになることがとても重要になります。
普段から第三者が見てわかるように思考過程を書き残す練習をするなど、しっかりと対策をしておきましょう。
◆理科
【試験時間・配点と構成】
東大寺学園中の理科入試は、50分100点満点の試験です。問題用紙は、算数や国語と同様にプリント形式から冊子形式の18ページ構成と変わり、相当なボリュームがあり、別に解答用紙が1枚あります。
大問6題構成と7題構成の年度があり、昨年、一昨年と2年連続で7題構成でしたが、今年はまた6題構成に戻りました。今年度のように6題構成の年は通常、物理と化学の分野から各2題と、生物と地学の分野から各1題という構成です。7題構成の年は地学分野も2題出題されています。
【難易度】
昨年、一昨年と2年連続で易化しましたが、今年はやや難化しました。例年で比較してもやや難度の高い試験でした。今年の大問6の物理の問題は、アニメーションに関する見慣れない問題で、難度も高かったと思われます。
【傾向と対策】
例年、分野別の出題順序は、生物、地学、化学、物理の順で出題されることが多いのですが、今年は大問1が地学、大問2が生物、大問3・4が化学、大問5・6が物理の順でした。
今年も小問数50問を50分という限られた時間内に解き切らなければなりませんでした。後半の化学と物理ではやや難解な計算問題なども出題されます。前半の地学や生物の単元では基本的な知識問題も出題されるので、そこで時間をかけずに解き進め、後半に十分な時間を残せるよう、過去問などでしっかり訓練しておきましょう。
また、東大寺学園中の理科は、今年もそうですが、問題文に図や表も多いものの、かなり多くの文字数を読まされる試験となっています。また、通常の学習では見慣れないような出題もあります。とは言え、初見の事柄でも問題文をしっかり読めばヒントがあって、これまでに習った知識で解けるようになっています。
文章量に圧倒されることなく慌てず丁寧に読むことが大切です。文字を読むスピードや読解力も求められる試験でもあります。文章アレルギーにならないよう、文字慣れしておくことも必要です。
◆社会
【試験時間・配点と構成】
東大寺学園中の社会入試は50分100点満点の試験で、問題用紙は他教科と同様にプリント形式から冊子形式に変更になりました。問題冊子22ページと、別に解答用紙が1枚あります。22というページ数なので、理科と同じように多くの文字数を読まされることになります。
大問4題構成で、小問50問も例年通りで、地理・歴史・公民の各分野から出題があります。各分野から出題はありますが、地理と歴史からの出題が多く、分野による偏りがあります。
【難易度】
2025年の社会科入試は、やや難度の高かった昨年よりもさらに難度が上がりました。例年、受験者平均点が65~70点ほどで、合格者平均点が70~75点程度ですが、今年の受験者平均点は63.1点、合格者平均点が67.8点でしたので、例年と比較しても難度の高い試験だったことがわかります。
【対策】
解答方式は記号選択がほとんどですが、「正しいものを選びなさい」「誤ったものを選びなさい」「正誤の正しい組み合わせはどれか選びなさい」など選ばせ方が混在しているので注意が必要です。
特に正しい組み合わせを選ぶ問題は、選択肢をすべて読み切らないと答えられない問題です。選択問題がほとんどとはいえ、22ページもの問題を読み切るのはかなりきついと思われます。
まぎらわしい問題文には線を引くなどして間違えないようにしましょう。入試の最終教科で疲れも出るのは受験生みな同じです。多くの字数を読まされますが、最後まで集中力を切らさないことが大切です。
数問だけ語句で答える問題がありますが、「漢字で書きなさい」という指定があることも多いので、漢字で正しく書けるようにもしておきましょう。当然ですが、「漢字で書きなさい」という問題では漢字で書けなかったり、漢字を間違えたりしては失点となります。
50分で約50問の小問を解き切らなければなりません。社会の知識だけでなく、読解力、集中力、忍耐力がなければ、試験の後半で疲れが出てしまい、問題文を読んでも内容把握が難しくなる可能性があります。過去問や問題集などでしっかり対策しておきましょう。
8.まとめ~東大寺学園中合格への道~
自主性を重んじる自由な校風の東大寺学園は、毎年多くの東大・京大進学者を輩出している中高一貫校の男子校です。関西地区の最難関中学として知られ、毎年多くの生徒が受験する人気校です。今年は受験者数が減少しましたが、近畿圏のレベルの高い生徒が集まる人気校であることに変わりはありません。
総合進学セミナーには東大寺学園に特化して指導できる講師も多く在籍しています。毎年のように東大寺学園中志望の受験生を指導しているため、入試傾向にも精通しています。お子さま1人ひとりの現状を踏まえ、入試までの限られた時間を無駄のない効率的な指導で合格を目指します。
東大寺学園中受験はもちろん、併願校の選定など、中学受験に関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
東大寺学園対策もお任せください!
保護者の方の疑問にお答えし、不安を解消する