2025年の中学入試から、今回は甲陽学院中について振り返ります。今年度の受験データを細かく分析、各科目の傾向やポイント、2026年の受験対策等について徹底解説いたします!
CONTENTS:
1.甲陽学院中2025年入試の特徴
■試験の難易度
甲陽学院中の入試は、2023年に大きく難化し、昨年の2024年はさらに難化し過去10年でも最も合格者平均点が低く難度の高い試験でした。
今年度の2025年は昨年に比べると大きく易化し、例年並みの難易度に戻りました。国語と理科は、昨年に比べやや難度が上がったのですが、算数の合格者平均点は昨年に比べ30点以上も高くなりました。
■試験時間と配点
甲陽学院中入試は灘中入試と同様に2日間入試で、1日目に国語・算数・理科の3科目、2日目に国語と算数の2科目を受験します。
試験時間と配点は、全試験各55分の各100点満点の合計500点満点で評価されます。
2.2025年甲陽学院中の入試データ
(前年比)<人>
|
2023年 |
2024年 |
2025年 |
募 集 人 員 |
200 |
200 |
200 |
志 願 者 数 |
381(+37) |
394(+13) |
342(-52) |
受 験 者 数 |
366(+39) |
373(+7) |
319(-54) |
合 格 者 数 |
221(+10) |
220(-1) |
215(-5) |
実 質 倍 率 |
1.66(+0.12) |
1.70(+0.04) |
1.48(-0.22) |
甲陽学院中入試は、灘中と同じ試験日の2日間入試ということもあり、最難関中学の中ではさほど倍率も高くありません。それでも昨年一昨年と2年連続で受験者も増加し、実質倍率も上昇していました。
今年は上記表のように、受験者数が大きく減少し、実質倍率も10年ぶりくらいに1.5倍を割り込み、受験生にとっては広き門となりました。
他の最難関校に比べ、倍率はさほど高くはないとはいえ、やはり難度の高い最難関レベルであることに違いはありません。
3.甲陽学院中志願者の受験日程パターン
甲陽学院中志願者の受験日程パターンを表したものが下記の表です。
前受け校 |
・愛光(愛媛) ・北嶺(北海道) ・岡山白陵(岡山) ・函館ラ・サール(北海道) |
|
1日目<甲陽> 1/18(土) |
2日目<甲陽><併願校> 1/19(日) |
3日目以降<併願校> 1/20(月) |
国語(55分・100点) 算数(55分・100点) 理科(55分・100点) |
国語(55分・100点) 算数(55分・100点) |
・東大寺学園(奈良) ・洛南高等学校附属(京都) ・淳心学院(兵庫) ・清風(大阪) 【4日目以降(1/21~)】 ・六甲学院(兵庫) ・白陵(兵庫) ・関西学院(兵庫) ・神戸大附属(兵庫) ・洛星(京都) |
【午後】 ・西大和学園(奈良) ・高槻(大阪) ・須磨学園(兵庫) |
甲陽学院中の受験日程は、例年通りの2日間入試で、統一入試日初日(今年は1月18日)に「国語と算数と理科」の試験、2日目(1月19日)に「国語と算数」の試験が行われました。
甲陽学院中受験者は、統一入試日前に前受けとして愛光、北嶺、岡山白陵、函館ラ・サールなどを受験し、統一日初日と2日目の午前で本命の甲陽学院中を受験します。
甲陽学院中初日の午後に他校を受験することも物理的には可能ですが、灘中受験生同様に甲陽学院中を本命としているのであれば2日目に備え体力を温存しておくことも大事でしょう。
2日目の午後は、西大和学園、高槻、須磨学園などを受験し、3日目に東大寺学園、洛南高附に挑戦するか、手堅く淳心学院や清風などを受験する併願パターンが多く見られました。
3日目の夕方には甲陽学院中の合格発表がありますので、合格していればこれで終了となります。不合格だった場合は、4日目以降に六甲学院、白陵、関西学院、神戸大附属、洛星などを受験するパターンが多いようです。
4.大手塾別合格者数
関西大手進学塾の甲陽学院中合格者数は多い順に下記の通りでした。
(前年比)<人>
浜学園 |
希学園 |
日能研 |
馬渕教室 |
89(+1) |
56(+15) |
31(-3) |
27(-3) |
進学館 |
SAPIX |
能開センター |
|
18(+5) |
9(-4) |
3(±0) |
|
今年も浜学園が他塾に大きく差をつけトップをキープしています。浜学園は、ここ数年増減を繰り返していましたが、今年は1名増とはいえ久しぶりに2年連続で増加しました。
昨年大きく減少した希学園ですが、今年はその減少分くらい増加し、2年前の水準に戻りました。
全体的な人数は多くないのですが、灘、東大寺学園に続き甲陽学院でも合格者数を増加させた進学館の躍進にも注目です。
5.科目別平均点
今年度甲陽学院中合格者の各教科の平均点と受験者平均点との差を表したものが下記の表です。
※( )内は前年比 <点>
|
受験者平均 |
合格者平均 |
合格者平均との差 |
合格者最高点 |
国 語 |
111.7(-6.2) |
116.6(-8.2) |
4.9(-2.0) |
164(+4) |
算 数 |
119.9(+30.2) |
134.4(+32.8) |
15.3(+2.6) |
184(+21) |
理 科 |
60.8(-1.7) |
64.9(-2.7) |
4.1(-1.0) |
87(-6) |
※国語、算数は各200点、理科は100点の計500点満点
今年度の甲陽学院中の入試は、総合得点が高く大きく易化したように感じますが、国語や理科はやや難化し、算数が大きく易化して全体として高得点となりました。
上記の表の「受験者平均点と合格者平均点の差」を見ても分かるように、やはり算数の出来不出来が合否に大きく直結しているといえます。昨年のように難度が高くなると、皆ができないので逆に差が縮まりますが(昨年の合格者平均との差は12.7点)、今年のような難度ではより差が広がります。
6.科目別の傾向と対策
今年度の甲陽学院中入試を参考に、教科ごとの傾向と対策をご紹介します!
◆国語
【試験時間・配点と構成】
試験時間と配点は、1日目、2日目ともに試験時間55分の100点満点の試験。2日間とも長文読解の大問2題構成となっています。
大問1が論説文で、大問2が物語文なのも例年通りでした。年度により大問1が随筆になることもあります。ちなみに昨年の1日目は論説文と物語文、2日目は随筆と物語文でした。
漢字や語句問題などの知識問題は、各大問の中の小問として出題されています。
1日目と2日目とで構成が大きく変わる灘中とは違い、2日間とも同じような問題構成になっているのが甲陽学院中国語入試の特徴です。
【難易度】
2025年の甲陽学院中国語入試1日目は、たいへん難度が高くなりました。特に物語文の難度が高く難しい試験でした。2日目の国語入試はやや易化したものの、2日間の合計では例年と比較しても難度の高い試験となりました。難度が上がったことにより受験者平均点と合格者平均点の差が4.9点と大きく縮まり、あまり差がつきませんでした。
【傾向と対策】
・漢字
漢字や語句は単独問題ではなく、長文読解問題の中の小問として出題されます。同じ関西の最難関男子校の灘中や東大寺学園中に比べると難易度はさほど高くなく標準的な問題ですので、甲陽学院中を目指すなら確実に得点しておきたい問題です。
・記述
甲陽学院中の国語入試は、漢字と語句以外はほとんどが記述解答です。そのほとんどは字数制限がなく、解答欄の大きさから解答字数を判断することになります。解答欄の大きさもさまざまなので、多くの字数を書く力と短く端的にまとめる力の両方が必要です。甲陽学院中を第一志望にするなら記述対策は必須です。
記述対策として、多少不安を抱いたり自信がなかったりしたとしても、普段の学習時からまずは自分で書いて答えを出すことが大事です。
記述解答は満点を取ることは難しいですが、キーワードをしっかり押さえていれば部分点が期待できます。合否を分ける1点になるかもしれませんので、どん欲に1点を取りに行く姿勢が必要です。空欄にすることだけは避けるようにしましょう。
・物語文
甲陽学院中の長文読解は、今年もそうですが例年物語文の難度が高めです。やや大人向けの思考が必要になるような出題が多く、小学生には登場人物の心情を理解するのが難しいかもしれません。
生徒により得意不得意はありますが、今年は特にこの物語文の難度が高かったため、説明文でいかに点が取れたかが勝負の分かれ目になりました。
◆算数
【試験時間・配点と構成】
甲陽学院中の算数入試は、国語と同様に2日間同じような問題構成で、1日目、2日目ともに試験時間55分の100点満点の試験です。
B4用紙2枚の問題用紙に解答欄があり、問題用紙に答えを直接記入する形式です。
問題数は1日目、2日目ともに大問6題構成で、今年も例年通り小問数は15~20問でした。
【難易度】
昨年の甲陽学院中算数が関西圏でも話題となったほどの高難度の試験で、1日目も2日目も受験者平均点が40点台、合格者平均点でも5割ほどという低い点数でしたので、今年は予想通り大きく易化しました。
受験者平均点、合格者平均点ともに昨年より30点以上も高くなりました。しかし、これは例年と比較したら概ね平均的な難易度ともいえます。
毎年算数で受験者平均点と合格者平均点の差が大きく出るのですが、昨年は難度が高すぎたため、この差も12.7点と過去10年を見ても最も差がつかない試験でした。今年は例年並みの難度に戻ったこともあり、この差が15.3点とこれも例年並みに戻りました。
【傾向と対策】
例年、平面図形、立体図形、速さ、数の性質、場合の数の単元が頻出されていて、今年も同様でした。ただし、他の単元から出題されることも多く、比較的偏りが少なく、バランスの良い出題となっています。
大問1以外は解き方や途中式を書かせる問題で、解答に導く過程は加点対象となります。普段から解き方をしっかり書くクセを付けておくことが大切です。
甲陽学院中の算数は解答用紙が別にあるのではなく、問題用紙に解答欄がついていますので、解き方を書くスペースもさほど大きくありません。しっかりと答えが出せるのであれば、スペースの都合上解き方を少し省略しても、答えが正しければ満点がもらえる可能性も高いものと思われます。
しかし、最後の答えまで行きつけない場合は、そのスペース内でいかに部分点をもらえるかが勝負になります。ここでいかに1点、2点を積み重ねることができるかが合否の分かれ目となるでしょう。
◆理科
【試験時間・配点と構成】
甲陽学院中の理科入試は、試験時間55分の100点満点の試験で、今年も例年通り大問6題構成でした。物理と化学の分野から各2題、生物と地学の分野から各1題の6題という構成も例年通りで、ここ10年以上変わっていません。小問数は例年60問前後です。
【難易度】
2022年、2023年と2年連続で易化していましたが、昨年の2024年に続き今年2025年と2年連続でやや難化し、概ね例年並みの難易度となりました。
今年もそうですが、例年物理と化学の分野の難易度が高く、生物と地学の分野は単純な知識問題も出題されますので、比較的取り組みやすい傾向にあります。
昨年の試験は、受験者平均点と合格者平均点の差が5.1点と理科にしては開きましたが、今年はこの差が4.1点とあまり差がつかない試験となりました。
【傾向と対策】
甲陽学院中の理科試験の特徴と言えば、記述と作図を求める問題が毎年複数出題されることです。今年も短文記述解答が6題と作図解答が2題ありました。過去問などでしっかり対策しておきましょう。
物理と化学の分野では、表やグラフの読み取りからの計算問題が毎年出題されています。分野別には、物理分野では力学の単元、化学分野では中和計算の単元が頻出です。生物分野では実験や観察からの短文記述の考察問題が頻出しています。
地学分野では、地質の単元が多い傾向にあり、今年は地震、昨年は地層の問題が出題されました。他校によくある星座や月、太陽といった天体の単元は比較的少ないようです。
生物や地学分野については単純な知識問題もあり、比較的点数が取りやすいので得点源となります。この分野でいかに早く正確に解き進め、繁雑な計算の多い物理や化学に時間を残せるかがポイントです。
7.まとめ~甲陽学院中合格への道~
甲陽学院中は、灘中と並び、関西圏最難関中学と位置付けられている中高一貫の男子校です。春は桜のトンネルのできる夙川沿いの遊歩道を通学し、学校は芦屋市との市境の西宮の閑静な住宅街にあり、たいへん恵まれた環境にある学校です。
他の中高一貫校と違い、中学と高校の場所が離れていて、同じ西宮市内ですが中学は海の近くで高校は山の方面にあります。
授業の進度はたいへん速く、中学1年間で中学3年分のカリキュラムを終わらせるとも言われています。
関西の最難関中学の中では、毎年比較的倍率は低めで1.7倍前後ですが、今年は受験者が減少して実質倍率が1.5倍を割りました。倍率が低いとはいえ、簡単に入学することができない最難関校であることに違いはありません。
総合進学セミナーには甲陽学院中に特化して指導できる講師も多く在籍しています。毎年のように甲陽学院中志望の受験生を指導しているため、入試傾向にも精通しています。お子さま1人ひとりの現状を踏まえ、入試までの限られた時間を無駄のない効率的な指導で合格を目指します。
甲陽学院中受験はもちろん、併願校の選定など、中学受験に関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
甲陽学院中対策ならお任せください!
保護者の方の疑問にお答えし、不安を解消する