私はたくさんの子ども達を指導してきて、常々感じている事があります。それは「ありがとう」をたくさん言う子は成績が良いのではないか?という事です。
例えば、指導が終わった時に、教師である私に「ありがとうございました」と言う子や、休憩の時にお母さんがお茶を持ってきてくれたら「ありがとう」と言う子。ただそれだけの事です。
これがなぜ成績と関係するのかを、前後編2回に分けてお話します。今回はまず「自立」について考えてみましょう。
「自立」とは誰にも頼らず、一人で生きていくことだとよく思われがちです。しかし、私達は服を着なければ ならないので、服を作って売ってくれる人々に依存していますし、食べ物を食べないと生きていけませんから、農家や漁師の方々にも依存しています。現代の恵まれた衣食住では、それらに関わる技術や労力や資源に依存し、そもそも空気を吸っている以上は、空気にすら依存しているのです。
このように、ウロボロスの蛇さながら、自立を追い求めるにつれて、自分はあらゆる物に依存している事に気づかされます。つまり自立への第一歩は、まず自分があらゆる物に依存しているのを知る事ではないかと思うのです。その上で、自分で出来る事は自分でするように心掛ける。しかし多くの物に依存して生きる私達人間は、実のところ自分で出来る事など僅かです。それに気づくと、何かを他人にして貰った時に、自然と感謝の気持ちが生まれるのだと思います。自分を取り巻く環境は、当たり前に、自分の力によってのみ得られた物ではない。「ありがとう」は「有り難し」なのです。
説教くさくなりましたが、つまる所自らの依存を知り、心から「ありがとう」を言える人ほど、自立していると言えるのではないかと言う事です。
だからと言って子どもに「ありがとう」と言いなさいと、感謝の気持ちを強制する事は的外れです。前回のコラムでも書きましたが、気持ちを強制する事は出来ません 。まずは、いかに依存しているかに気づく事が大切なのです。
次回は、自立と成績の関係についてお話したいと思います。
◆算数科 前田敏孝◆