これはフランスの哲学者モンテーニュの「 賢い者が愚か者から学ぶ事の方が、 愚か者が賢い者から学ぶ事よりも多い」 という言葉から派生したものだと思われますが、 私はこの言葉がとても好きで、 勉強を頑張る子ども達に伝えたいと思います。
これを今の教育現場に置き換えてみましょう。単純に考えると「 賢者」とは教える者(教師)で、「愚者」とは教わる者(生徒) と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。
「賢者」とは、何事からも学ぶ(学ぼうとする)者で、対して「 愚者」とは、何事からも学ばない(学ぼうとしない)者です。 両者の違いは立場によるものではなく、その人間の生きる姿勢 によるものなのです。
例えば、成績優秀なA君と、努力してるように見えるのに、 なぜか成績が伸び悩んでいるB君がいたとします。 A君はそんなB君を見て、「 B君はあれだけ努力しているというのに成績が上がらず、 なんと愚かなのだろう。優秀な自分は、 自分より劣るB君から学ぶことは何も無い。」と思い、B君は「 これだけ努力しているのに、 なぜ自分は成績が伸び悩んでいるのだろう。 成績優秀なA君から何か学べることは無いだろうか。」 と考えたとします。この場合、現状の成績がどうであれ、A君は「 愚者」で、B君が「賢者」であると言わざるを得ません。 いずれB君はA君を超えていくでしょう。
私の指導経験から言っても、成績というのは波があるものです。 驕りや怠慢 によって成績が下降する事はいともたやすく、反対に、 謙虚な姿勢や地道な努力はいつぞや実を結ぶものです。
では心苦しくも「愚者」の烙印を押されてしまったA君は、 どうすれば「賢者」になれるのでしょうか。 B君の成績が伸び悩んでいる原因を分析し、 自分も二の舞を踏まないように気をつける。ここまでで、 ひとまず「愚者」の汚名は返上されるでしょう。とは言え「賢者」 への格上げまでは、あと一歩です。さらに、 謙虚な姿勢と地道な努力で成績を上げてくるB君の生き様から、 自らの姿勢を省みて学ぶならば、A君は、真の「賢者」 となれるのです。
◆算数科 前田敏孝◆