最近、通塾年齢がさがって、小さなころから勉強させる家庭がふえています。
塾にかよえば、長い通塾時間、大量の宿題、休みの日の公開テスト、家族で食卓をかこむ夜は月に何回......きっと、どこのお母さんでも
「こんなに勉強させてかわいそう」
と思ったことがあるのでは?
私ども家庭教師でも
「小さいころから勉強漬けでよいのだろうか?」
疑問に感じるときがあります。
たしかに難関校に入れば、大学受験、ひいては将来がラクになるだろう、これがわが子の幸せにつながるんだ、という考えもあるでしょう。しかし、そのやりかたが本当に自分の子どもにあっているのか、一度立ちどまって考えることも必要ではないでしょうか。
「受かればなんでもよい」という考えのもとに行われる指導が、知らず知らず子どもをおいたて、心に傷を残す可能性もあるのです。念願の志望校に入った途端、やる気をなくす子の話を聞いたことがありませんか。中学受験で燃え尽きてはダメなのです。長い将来「学び」はまだまだ続くのです。たいていの勉強は、ひとりで問題をといて解決する......のではなくて、塾・家庭教師VS子ども、または母VS子ども(時に驚くほど教えるのが上手いお母さんもおられます)で行われるでしょう。勉強がうまくいかないとき、責められるのは子どもです。
「受かれ」「成績よ、あがれ」
という心のもとに、思わず出る心ない言葉や態度。子どもを傷つけていませんか? 特に入試間近になると、
「これでは落ちる」「落ちたらうちの子ではない」などなど、暴言をはいていないでしょうか。
残念ながら実際の塾で、生徒に「おまえはきっと落ちる」と言う教師もいるのです。先生にしたら、「落ちるぞ」ということで危機感をあおり、生徒をふるいたたせたいのです。先生も熱心なのです。懸命なのです。でも、その指導法が心に傷を残すケースもあります。
いったい中学受験は「だれ」のためでしょう。
子どものためでしょう。
「成績が下がった」「また同じところを間違えている」責める前に、いったい誰のための勉強なのか、親子で話し合ってみるのもよいでしょう。またなぜその学校に行くのか、進路について真剣に話し合う「子育て」の場でもあります。
熱心さが駆りたてる大人の指導法が子供を追いつめないように、ほどよい距離感で、厳しく、やさしく指導にあたりたい、私たち家庭教師は子どもの側に立ち、常にそう考えています。
◆ 中学受験部 近藤奈央子 ◆