長く塾に通っているのに、なかなか成績ののびない時、いっそ塾をかえてかえてみては――?と思ったりしませんか? 六年生までで、一回だけなら「それもアリ」ではないでしょうか。長年、下のクラスで、馴れ合いの、やる気のない、ざわざわした雰囲気の中で、
―先生が悪いのか、
―塾があっていないのか、
―このまま下のクラスに甘んじてよいものか、
親だけもんもんと悩んで、子どもを通塾させているのなら、転塾も良いでしょう。相性のよい先生と出会えるかもしれません。テキストも思いのほかわかりやすく、事務の方も親身だったり......するかもしれません。子どももクラスアップして――。良かったですね。でも、また、成績がかんばしくなかったら? うまくいかなかったら? 再び転塾するのでしょうか?
いいえ、転塾は一回までです。
他塾へ行って、また古巣へ帰ってくるパターン。もしくは最良の塾を求めて、次から次へとかわり続けるパターン。どちらも見てきましたが、両パターンとも、子どもを疲弊させるだけで学力アップにつながりません。どの塾に行っても、授業にあわせてこなしていく宿題の曜日が違います。テストでの問われ方も異なり、当然教室の友達も違います。慣れるまでに時間がかかるのです。慣れて、落ち着いてきたころ、親の心に浮かぶ「いつまで、入った時と同じクラスにいるのかしら」の一言。ホラ!次に浮かぶセリフ。「やはり元の(別の)塾のほうが...」
基本的にどの塾に行っても同じです。大手塾ではほとんどが大差ないテキストのレベルに仕上がっています。先生は若干差があるかもしれませんが、平均してならすとほぼ似たような力の先生が教えています。どこの塾でも復習することで、内容理解と記憶の定着が深まる仕組みになっています。転塾してモチベーションをあげるのも「アリ」ですが、「変わっても一緒だった」「慣れるのに時間がかかった」などのリスクがあることも考えて、まずは「塾」を責めるまえに、振り返ってみましょう。普段の宿題は丁寧にやれていますか? やっつけ仕事ではないですか? ママに言われたことをこなす勉強マシーンになっていませんか? まちがったところは重要です。どこが理解できていないのか、つまづく思考回路はどこか。間違いをおさえられたらつぎは反復です。次回間違わないために、何度も反復学習をするのです。それらをこなして、なおかつ成績が上がらない時に、転塾を考えてもよいではないでしょうか。
◆ 中学受験部 近藤奈央子 ◆