勉強をする上で、体における一番重要な器官は脳だと思っていませんか?
もちろん脳は、考え、記憶し、学習する能力の中枢であり生きていく上で最も重要な器官です。
しかし、その脳に匹敵するほどの働きを司っている器官がもう一つあります。それは、「腸」です。
腸は食べ物を消化する器官では?と思っているかもしれませんが、単なる消化器官ではなく、実は無数の神経細胞が張り巡らされ身体中と繋がり、体調や免疫機能だけでなく脳や心の状態までをも左右しています。
腸は人の意思や脳からの指令とは別に、状況を認識・判断して働いているのです。
【脳と腸の関係】
なんだかやる気が出ない、気持ちが落ち着かない、勉強に集中できない……、
受験勉強をしていく中で多くの方が経験したことがあると思いますが、この目に見えない感情に実は腸が大きく関係しています。
「腸脳相関」という言葉があるように、腸と脳は自律神経やホルモンを介して繋がり、相互に調整し合っています。
特に、腸内細菌は、幸福感ややる気などのポジティブな感情を起こす「セロトニン」や「ドーパミン」の体内合成・機能と深く関わっています。
そのため、腸内環境が悪化すると感情が不安定な状態や、うつ状態などネガティブな思考で脳が疲労しやすい状態になります。
【腸内環境について】
腸内には非常に多くの腸内細菌が存在し、それらは大きく分けて「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3つに分類され、それらの菌のバランスによって腸の状態=腸内環境は決定されます。
善玉菌(乳酸菌etc)……人体にとって有用な働きをする菌
悪玉菌(ウェルシュ菌etc)……腸内腐敗や有毒物質を作る菌
日和見菌(大腸菌etc)……善玉菌とも悪玉菌ともいえず、優勢な方に加担して働く
◉悪玉菌が増えると……
脳の疲労やうつ状態を招く
悪玉菌が増え腸内環境が悪化すると、微生物や病原菌が侵入しやすくなり、それらに対抗するため免疫物質が過剰に生産されることで、脳内では神経情報伝達物質が低下し脳内の情報伝達が遅れます。
また、幸福感・やる気などポジティブな感情を起こすセロトニンやドーパミンの体内合成が上手く機能しなくなり、感情が不安定な状態や、うつ状態、自己否定などのネガティブな思考で脳が疲労しやすくなります。
免疫力が落ちる
腸内細菌は人の免疫の約70%を担っているため、悪玉菌が増え腸内細菌のバランスが崩れると免疫力が低下し、感染症などにかかりやすくなります。
便秘の悪循環(太りやすい・肌荒れ)
悪玉菌が増え腸内環境が悪化すると、腸の動きが悪くなり便が滞りやすくなるとともに、腸内に毒性のガスが溜まりやすくなります。
その結果、毒素や老廃物の排泄が滞り肌荒れや、代謝の低下により脂肪を溜め込みやすくなります。
◉善玉菌が増えると……
感情が安定し、前向きなりにやる気がでる
善玉菌が増え腸内環境が整うと、幸福感・やる気などポジティブな感情を起こす神経伝達物質が適切に合成・生産できるようになるため、気持ちが安定し、前向きな感情が生まれやすくなる。
免疫力が上がる
免疫細胞の多くが腸で作られているとともに、体外から侵入する病原菌に対しては下痢などの防御反応によりスムーズに排出することができるため、腸内環境が整うと免疫力や免疫反応が向上します。
体内でのビタミンの合成が増進する
腸内細菌により作られるビタミンB郡、ビタミンKなどの合成が効率的に行われるようになります。
【良好な腸内環境を作るために】
良好な腸内環境を作るのは、私たちの毎日の食事や運動・睡眠といった生活の質です。
その中でも、特に腸内環境に大きな影響を与えるのが食事です。
食事において、腸内環境を整えるために次のようなものがあります。
◎プレバイオティクス……腸内の善玉菌のエサとなるものを摂取して、善玉菌が元気な状態を作る。
<食物繊維>
食物繊維には「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類があり、腸内環境に寄与するのは主に水溶性食物繊維です。
水溶性食物繊維は、大腸で発酵・分解され善玉菌のエサとなり腸内環境を整えます。
水溶性食物繊維を含む食物には、昆布、わかめ、こんにゃく、大麦などがあります。
<オリゴ糖>
オリゴ糖は、糖類の一種で砂糖と比べると低エネルギーで、中でも難消化性オリゴ糖は消化されずに大腸まで届き、ビフィズス菌(腸内にいる善玉菌)のエサとなって菌を増やしてくれます。
ごぼう、アスパラガス、玉ねぎ、豆類、バナナ、はちみつなどに含まれています。
◎プロバイオティクス……摂取することで腸内環境を改善し、有益な作用をもたらす生きた善玉菌。
<乳酸菌>
乳酸菌は、空気中や様々な動植物の中に存在し、酸素がない腸内でも元気に活動する微生物です。
腸内では乳酸を作り、他の善玉菌であるビフィズス菌の働きを助けます。
味噌やチーズ、ヨーグルトなどの発酵食品や乳酸菌飲料などに含まれています。
<ビフィズス菌>
ビフィズス菌は、主に酸素のない大腸内で活動し、食物繊維などをエサにして、乳酸や大量の酢酸を生産し、腸内のpHを低下(酸性)させ悪玉菌の増殖を抑制します。
含まれている食品はあまりないためサプリメントや補助食品からの摂取や、腸内のビフィズス菌を元気にするためのエサとなる食物繊維の摂取が大切です。
<酪酸菌>
酪酸菌は大腸のエネルギー源となる酪酸を合成して、大腸の正常な働きを維持します。
乳酸菌などが胃酸でほとんど死滅するのに対して、酪酸菌は芽胞と呼ばれる非常に強い殻を持っているため、胃を通過して大腸まで届き活動できる菌です。
含まれる食品はぬか漬けや臭豆腐くらいしかないため、サプリメントや補助食品を活用する他、腸内にいる酪酸菌を増やすためエサとなる食物繊維の摂取することが重要です。
*ただし、体外から摂取する生きた菌は腸内で発育・定着することは困難なため、継続して摂取することが必要です。
◎その他
<ラクトフェリン>
ラクトフェリンは、母乳や涙、唾液、血液などに含まれているタンパク質の一種で、免疫調整作用や抗菌抗ウイルス作用、鉄吸収調整作用(貧血改善)、抗炎症作用など多彩な働きがあります。
腸においてはビフィズス菌(善玉菌)を増やし、悪玉菌の発生を抑制することで腸内環境のバランスを整える働きがあり、腸内の「良い菌を増やす」プレバイオティクスやプロバイオティクスと異なり、ラクトフェリンは「良い菌が増えやすくなる環境を整える」効果があります。
乳に含まれる栄養素ですが、熱や衝撃に弱く市販の牛乳などでは微量しか含まれていないため、サプリメントや補助食品から摂取するのがオススメです。
<レシピ>
〜フワトロ!長芋と豆乳のカルボナーラ風うどん〜
【材料】(2人分)
・うどん……2玉
・長芋……250g
(すりおろしたもの200g)
・モロヘイヤ……40g
▼▼▼ A ▼▼▼
・豆乳……200ml
・味噌……小さじ1
・白だし……大さじ1
・塩……2つまみ
▲▲▲ A ▲▲▲
・粉チーズ……大さじ3
・卵黄……2個
【作り方】
① 長芋は皮をむいてすりおろす。
モロヘイヤは葉っぱを茎からちぎって、沸騰したお湯で20~30秒茹でてザルにあげ、冷めたら水気を絞って細かく刻む。
② うどんは茹でて冷水でしめる。(冷凍うどんの場合は電子レンジなどで解凍して冷水でしめる。)
③ 鍋にAを入れて温まってきたら味噌を溶かす。
火を止めて、粉チーズと長芋を加えよく混ぜ合わせる。
④ 器にうどんを盛りその上から③をかけ、卵黄とモロヘイヤを添えたら出来上がり。
*食べる際は、全体をよく混ぜ合わせてから食べて下さい。
長芋には水溶性食物繊維のほか、レジスタントスターと言われる難消化性デンプンも含まれており、炭水化物ながら食物繊維同様の働きをして腸を整えてくれます。
また、豆乳には腸内の善玉菌のエサとなるオリゴ糖が非常に多く、腸内環境にとって良いだけでなく、大豆の優しい甘さと、濃厚さは発酵食品のチーズとも相性が良く料理に加えるのにもオススメです。
カルボナーラのようにクリーミーでありながら、長芋やモロヘイヤでさっぱりとした和風のカルボナーラをぜひ作ってみてください。
〜エビとアスパラの麹炒め〜
【材料】(2人分)
・むきえび……150g
▼▼▼ A ▼▼▼
・酒……小さじ1
・塩……1つまみ
・片栗粉……小さじ1
▲▲▲ A ▲▲▲
・アスパラ……60g
・レンコン……60g
・長ネギ……1本
・しめじ……50g
・にんにく……1片
・しょうが……1片
▼▼▼ B ▼▼▼
・甘酒(濃縮タイプ)……大さじ2
・塩麹……大さじ2/3
・塩……小さじ1/4
・しょうゆ……小さじ1/2
・酒……大さじ1
・片栗粉……小さじ1/2
▲▲▲ B ▲▲▲
・油……適量
【作り方】
① むきえびは背に切り込みを入れて背わたを除き、Aの酒、塩を加えて混ぜ、片栗粉をまぶす。
② アズパラは根本3cmほどを切り落として斜め切りにする。 レンコンは2〜3mmの厚さに切り、長ネギは斜め切り、しめじは石づきを取って小房にほぐす。
にんにく、しょうがはみじん切りにする。
③ Bの調味料は合わせて混ぜておく。
④ フライパンに油とにんにく、しょうがを入れて熱し、香りがたってきたらレンコンを中火で炒める。
アスパラ、長ネギ、しめじを加えてさらに炒め、えびを加えて炒める。
⑤ Bの調味料を加えて、エビと野菜に火が通るまでしっかり炒め合わせたら出来上がり。
*使用する甘酒は、そのままのむストレートタイプではなく、水やお湯などで割って飲む濃縮タイプを使用しています。
甘酒、塩麹に含まれる麹菌は日本古来の伝統的な菌であり、古くから日本人の食生活に根付いてきました。
麹菌は、直接腸内に届き働く菌ではありませんが、麹菌が作る酸性の酵素は腸内の善玉菌を活性化してくれます。
また、甘酒や塩麹には米と米麹の食物繊維が豊富に含まれているため、腸内で善玉菌のエサにもなります。
そのほか、麹菌はでんぷんとタンパク質の分解酵素を作り出し、食べ物の消化を助けてくれます。
甘酒を飲むのが苦手な方も、調味料として用いることで旨味と優しい甘みをバランス良く感じることができ、美味しく頂けますので試してみてください。