受験生の時間栄養学〜食事と時間の関係〜

  • 2022.08.30
  • 受験レシピ

受験生の中には学校の授業の後、塾などで夜遅くまで勉強する人も多いと思います。
そのような受験生を支える家族にとって、悩ましいのが夕食の摂り方ではないでしょうか。

忙しい勉強の合間を縫って、いつどのタイミングで、どのようなものを、どれだけの量を食べるのが良いのか、と考えたことがあると思います。

同じ食事内容・量であっても朝に食べる場合と、夜に食べる場合では栄養素の吸収や体重の増え方、血糖値などにおいて違う反応が起こり、これらの違いは勉強やメンタルにも大きく関わってきます。

そこで今回は、受験生にとって望ましい食事(夕食、朝食)の摂り方を、時間栄養学という分野からご紹介していきたいと思います。




◎夕食と成長ホルモンの関係

まず夕食において、夜の食事が体に与える影響を考える上で鍵になってくるのが「成長ホルモン」です。
成長ホルモンとは、タンパク質の合成を促したり、新陳代謝を高めたりするほか、各種ホルモンの分泌をコントロールする、人間の成長に欠かせないホルモンのリーダー的存在です。
身体的な成長だけでなく、脳の発達や記憶の定着、精神面にも大きく関わっています。
人の成長ホルモンは、就寝後の深い眠りに達した時(入眠後1~2時間)に分泌されます。

したがって、徹夜などにより睡眠の質が落ち、深い睡眠が妨げられると成長ホルモンの分泌は減少します。
また、成長ホルモンの分泌は夕食によっても大きく左右されます。
夕食や就寝前に糖質を摂りすぎて血糖値が上がり過ぎると、就寝中の成長ホルモンの分泌は減少します。

そのため、夕食は就寝の3時間程前までに済ませるようにし、それ以降は糖質以外を少量摂るなどの工夫が成長ホルモンの分泌を高める上で非常に重要になってきます。


◎栄養素の吸収傾向の違い

同じ食事をしても、栄養素の吸収率は食事を摂る時間帯によって違ってきます。
特に、朝食と夕食で大きく吸収率が変わる栄養素として「脂質」と「糖質」があげられます。

◆脂質
夜の時間帯は、体内では食事から得た中性脂肪を骨格筋や褐色脂肪組織(脂肪を燃やす働きが強い脂肪組織)へ取り込む力が弱くなるため、夕食では食後の中性脂肪の血中濃度は高くなりやすくなります。
そのため、脂質の多い夕食や夜食は肥満のリスクに繋がります。

◆糖質
人は糖質を摂ることで血糖値が上がり、上がった血糖値を下げるためにインスリンというホルモンを分泌します。
そのインスリンは、朝に分泌がよく働きも強いとされており、同じ糖質でも朝食で摂った際にはあっという間に血液中の糖が組織中に取り込まれます。
これに対して、夕食時ではインスリンの分泌量や働きが弱く、血中の糖が吸収されにくいため高血糖状態になりやすいのです。この夜間の高血糖は、勉強や睡眠の質の低下、中性脂肪増加(肥満のリスク)などの悪循環へと繋がります。


◎鍵を握る朝食

食事の中でも特に朝食は、人の体内時計のスイッチを入れる上で非常に重要な働きを担っており、これは日中の活動にも大きな影響を与えます。
人は朝食を欠食すると体内時計が後ろへずれていく(後退する)ことが分かっています。

つまり朝食抜きの習慣は体内時計の乱れを招きやすく、これにより昼間の集中力や思考力などが低下したり、食欲や睡眠リズムにも悪影響を及ぼしたりします。
またこの他にも、朝食を摂らない人の方が、摂る人と比べて肥満や抑うつ傾向が強いことなども分かっています。


◎夜型から脱出し、朝型になるための食事

一般的に人間には、朝から午前中に力を発揮しやすい朝型と、夕方から夜に力を発揮しやすい夜型(その中間の人を中間型と分類する) がいます。
これらは遺伝的要因に加えて、社会的要因、そして食事の影響を大きく受け形成されます。

これまで紹介してきた「夜間の成長ホルモンの分泌」や「朝食の摂取」を十分に行うためには、このうちの朝型タイプが理想的になります。
受験生にとっては朝型になることで、日中の集中力や思考力が高まり、就寝中の脳や身体の発達、健康増進へと繋がります。

たとえ夜型であったとしても食事の時間や内容、量を気をつけることにより朝型体質へと移行しやすくなることもあります。
 

<朝型になるための食事のポイント>

  • ・夕食の時間はできるだけ早めに摂る(就寝の3〜4時間前にすませられると理想的)
  • ・夕食の全体量を軽めにする
  • ・夕食には高脂質や高糖質のメニューは避けて、食物繊維やタンパク質をしっかり摂る
  • ・塾の前後で夕食を分ける場合は、塾前にタンパク質、脂質、糖質などをある程度しっかりと食べ、塾後にタンパク質や野菜などを消化の良いものを少量摂る(夜の血糖値上昇を抑える)
  • ・朝食をしっかり、たっぷり食べる(糖質・脂質・タンパク質なども積極的に摂る)

体内時計を朝にリセットし、朝型に時計を前進させるためによく知られているのが朝一番に浴びる「光」刺激ですが光だけでなく、「食事」も体内時計に大きな影響を与える因子となります。
そのため、上記のような食事スタイルにより自然と朝型へと移行しやすい体づくりをぜひ目指してみてください。


<レシピ>

(朝食編)

〜簡単!夏野菜の海鮮ナムル〜



【材料】(2〜3人分)

・お好きなお刺身……100g
・ズッキーニ……1/4本
・なす……1/2本
・大葉……5枚
▼▼▼ A ▼▼▼
・塩昆布……5g
・ごま油……大さじ1と1/2
・薄口しょうゆ……小さじ1
(なければ、普通のしょうゆでOK)
・すり白ごま……適量
▲▲▲ A ▲▲▲
・塩……少々
・お好みの薬味……適量


【作り方】

  • ① ズッキーニとなすは薄めのいちょう切りにし、塩をまぶして手でよく揉み込み2~3分置いた後、キッチンペーパーなどに包んで、出てくる水分を絞る。
  • ② 大葉は千切りにする。
    刺身は食べやすい大きさに切る。
  • ③ ボウルに、ズッキーニ、なす、大葉、刺身、Aの調味料を入れてよく混ぜ合わせ、冷蔵庫で30分程置いたら出来上がり。
    *ご飯の上に乗せて、海苔やわさび、ネギ、卵などお好みの薬味と一緒に食べても美味しいです。
    (お出汁をかけて出汁茶漬けにしても美味しく召し上がれます。)
     



DHA・EPA豊富なお刺身と、ビタミンミネラルたっぷりの旬の夏野菜を、旨味が詰まった塩昆布と一緒に和えてナムルにしました。
これだけでも、おかずの一品となりますし、ご飯の上に乗せればお手軽な海鮮丼ともなり、忙しい朝食メニューなどにもぴったりです。
細胞の炎症を抑え、脳の情報伝達をスムーズにするDHA・EPAは、朝に摂ることで吸収率が上がる傾向がありますので、ぜひ一度作ってみて下さい。

 

(夕食編)

〜なすと豚肉の重ね蒸し<夏野菜のやみつきダレがけ>〜



【材料】(4人分(なす2本分))

・豚肩ロース(ブロック)……200g
・なす……2本
・豚バラ肉……120g
▼▼▼ A ▼▼▼
・酒……大さじ2
・塩……小さじ1/3
▲▲▲ A ▲▲▲
(夏野菜ダレ)
・きゅうり……1/2本
・ミニトマト……4個
・玉ねぎ……1/4個
・薬味ねぎ……3〜5本
・大葉……5枚
▼▼▼ B ▼▼▼
・みりん……大さじ2
・酢……大さじ1
・しょうゆ……大さじ2
・砂糖……大さじ1/2
・おろししょうが、にんにく……各小さじ1/2
▲▲▲ B ▲▲▲


【作り方】

  • (夏野菜ダレ)きゅうり、ミニトマト、大葉、玉ねぎをみじん切りにする。
    薬味ねぎは小口切りにする。
  • ② 小鍋にBの調味料と玉ねぎを入れて一煮立ちさせる。
  • ③ 耐熱の保存容器にきゅうり、ミニトマト、大葉、薬味ねぎを入れ、そこにを回しかけゴムベラで混ぜたら、冷蔵庫で30分以上冷やす。
  • (なすと豚の重ね蒸し)なすはヘタを切り落とし、ピーラーで縦に1cm間隔で縞目に皮をむき、縦に5mm幅に切る。
  • ⑤ 豚肉はなすの長さに合わせて切り、塩(分量外)をまぶす。
  • ⑥ 耐熱容器に大きめのラップを敷き、なすと豚肉を交互に重ねていき、最後に軽く押すようにして成形する(2本分)。
    そこに、よく混ぜたAを回しかけて、器からはみ出しているラップをふんわりかけたら600Wの電子レンジで8分加熱する。
  • ⑦ 粗熱が取れたら、しっかり蒸し汁をきって、食べやすい大きさに切る。
  • ⑧ 器に盛り付け、その上から夏野菜のやみつきダレをかけて出来上がり。
    *なすと豚の重ね蒸しは、お好みで冷蔵庫で冷やしても美味しく召し上がれます。(切りやすくなります)
     



この一品で、タンパク質とたくさんの野菜が摂れるだけでなく、蒸すことで余分な油を使わず消化に負担がかかりにくいため、遅めの夕食にもオススメです。
夏野菜にはビタミンCやビタミンE、抗酸化物質といった、夏の暑さや紫外線から身を守るための栄養素が豊富です。
しっかり食べて、良い体調でこの大切な夏の時期を過ごしましょう。

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管理栄養士
浅田ゆうき先生

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