受験生の食事〜脳の働きを左右するアミノ酸〜

  • 2023.08.25
  • 受験レシピ

受験勉強は度々スポーツに例えられることもあるほど、ハードな一面を持っています。

長期間に及ぶ勉強は持久力と集中力を要しますし、本番の一発勝負で力を発揮するには瞬発力も必要になってきます。


これらはまさに日々の鍛錬によって磨かれ、力をつけていくのですが、合格を手にするには勉強以外にも忘れてはならない重要な要素があります。

それが「食事」であり、同じように勉強していても、毎日の食事(食生活)によって体調や精神面はもとより脳の働きにも大きな違いが出てくるのです。


受験勉強において脳は集中力、記憶力、やる気、疲れにくさなど実にさまざまな働きを要求されます。
このさまざまな働きに大きく関係してくるのが「アミノ酸」です。


そこで、今回は脳を効率的に働かせる力を養うために欠かせない「アミノ酸」について詳しくご紹介します。



 

◎アミノ酸とは?

私たちの体は、筋肉、骨、脳、皮膚、血液、ホルモンに至るまでほとんどがタンパク質で構成されており、体の中では水分に次いで2番目に多く含まれるのがタンパク質です。

そのタンパク質を構成しているのがアミノ酸であり、体を作る上での1番のベースとなる物質となります。


アミノ酸は常に体内でさまざまなタンパク質を作り出すために、必要に応じていつでも取り出せる状態で血液中にスタンバイしています。

その大きな特徴として、これらのアミノ酸は筋肉が疲れていれば筋肉に、脳が疲労していれば脳にというように、体内で必要としている部位から優先的に使われていきます。


その他にも、体は日々新陳代謝を繰り返し、大量の細胞がアミノ酸によって作り替えられているため、私たちは常に多くのアミノ酸を体内に有しておく必要があるのです。



◎アミノ酸の種類と働き

人間の体には20種類のアミノ酸が存在し、それらの組み合わせにより約10万種類ものタンパク質を作り出します。
また、アミノ酸は単体でも体内で働きそれぞれに異なる役割があります。

これら20種類のアミノ酸は大きく以下の2つに分類することができます。
 

◆非必須アミノ酸

20種類のうち11種類は「非必須アミノ酸」と呼ばれ、食事から摂取した栄養素(糖質・脂質・タンパク質など)を利用して体内で自動的に合成されます。

アルギニン・グルタミン・グルタミン酸・チロシン・グリシン・システイン・プロリン・アスパラギン酸・アスパラギン・アラニン・セリン

◆必須アミノ酸

20種類のうち9種類は「必須アミノ酸」と呼ばれ、人間の体内では合成することができないため、食事によって補給しなければなりません。
そのため、食事の偏りや質・量の低下によって不足すると、落ち着かない、不眠、免疫低下などさまざまな不調が起こりやすくなるため、その重要性がよく知られるようになりました。

バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・スレオニン・メチオニン・ヒスチジン・トリプトファン・フェニルアラニン

これらの中でも、特に脳の働きに大きく関係してくるアミノ酸があります。


B C A A(バリン・ロイシン・イソロイシン)
長時間の勉強や食事の不足により体内のエネルギー源が少なくなると、体内のアミノ酸がエネルギー源として大量に消費されます。
それに伴い、必須アミノ酸であるB C A Aと呼ばれるバリン・ロイシン・イソロイシンの体内の濃度が低下すると、集中力が落ちる、やる気が湧かない、効率が悪くなるなどの脳内疲労が引き起こされやすくなります。


グルタミン
アミノ酸の一種であるグルタミン酸は脳内の神経伝達物質として、記憶(特に長期記憶)の形成に重要な役割を果たしています。
このグルタミン酸は直接脳内に入っていくことができないため、食事からはグルタミン酸の材料となるグルタミン(レバー、豚肉、大豆、魚、卵などに豊富)を摂取することが有効だとも言われています。


ブレーンアミノ酸
ブレーンアミノ酸と呼ばれるイソロイシン・アルギニン・グルタミン酸・チロシンなどは、脳内の神経伝達物質のやり取りをスムーズにし頭の回転を速くしたり、これら興奮性のアミノ酸の働きによりやる気のアップなども強化してくれます。
またブレーンアミノ酸は壊れそうになった脳内の神経細胞を修復し長持ちさせる働きもあり、これが記憶の長持ちにも繋がります。

 

意識するのは必須アミノ酸だけでいいの?

体内で作ることのできないアミノ酸である必須アミノ酸は、食事からしか補給できないため、それらが不足しないようにサプリメントという形でもよく販売されており、その重要性や不足を意識する人も多くなりました。

一方で、非必須アミノ酸は体内で合成されるという理由であまり意識されない傾向にあります。


しかし、体内で合成されることは裏を返せば、絶対に体にとって不足してはいけない栄養素ということにもなります。

そのため、サプリメントなどで必須アミノ酸は十分摂っていても、そのほかの食事が疎かになり必要な栄養素が摂取できなければ、体はさらに深刻な不調を抱えることになりかねません。


まずは、土台となる食事で十分なタンパク質(アミノ酸)などの栄養を確保することが重要です。



タンパク質はどれだけ必要?

アミノ酸はタンパク質の構成物質であるため、食事においても肉や魚といったタンパク質を摂取することにより体内に吸収されます。
では、1日にどれくらいの量を摂れば良いのでしょうか?


◇1日に必要なタンパク質

必要なタンパク質量は、厚生労働省が発表している食事摂取基準を参考にするあるいは、以下のような簡単な計算でももとめられます。

目安量はこの計算からもとめられると思いますが、食品に含まれるタンパク質量は実にさまざまです。
 


◇食品に含まれるタンパク質

タンパク質:12.5g  タンパク質:23.0g  タンパク質:23.3g  タンパク質:6.2g  タンパク質:4.3g

 

それぞれの食品に含まれているアミノ酸の種類や量は異なるため、普段からできるだけ多くの種類の食品(タンパク質)を摂取することが重要です。

 


<レシピ>

〜エビと卵と牛肉の春雨サラダ〜



【材料】(4人分)

・牛肉薄切り……150g
・むきえび……50g
・卵……1個
・春雨……30g
・紫玉ねぎ……1/2個
・ニラ……6本(20g)
・大葉……適量
▼▼▼ A ▼▼▼
・ナンプラー……大さじ1と1/2
・しょうゆ……大さじ1/2
・レモン汁……大さじ2
・砂糖……大さじ1
・ニンニク……1片
▲▲▲ A ▲▲▲


【作り方】

  • ① 牛肉は沸騰したお湯でさっと茹で、ざるにあげ食べやすい大きさに切る。えびは沸騰したお湯に酒を少々入れ30秒ほど茹でざるに上げる。春雨も、袋の記載通りに茹でザルに揚げ水気をきっておく。ニラは食べやすい長さに切り、沸騰したお湯でさっと茹でる。
  • ② 卵は薄く焼き、千切りにする。紫玉ねぎは薄くスライスし水にさらした後、よく水気を絞る。大葉は千切りにする。
  • ③ ニンニクをみじん切りにし、ボウルにAの調味料を合わせたところに、全ての具材を入れて、よく混ぜ合わせたら出来上がり。
    *冷蔵庫などで、しばらく置くと味が染みてさらに美味しくなります。
 



牛肉、えび、卵とさまざまなタンパク質を組み合わせ、一品でも必要な栄養素をしっかりと摂れる食べ応えのある副菜にしました。
これに夏場の疲労回復に働く、アリシンを豊富に含むニラや玉ねぎ、ニンニクを合わせました。

レモンの酸味と、ニンニクの香りが食欲をそそる夏場におすすめのスタミナ献立です。

 

〜夏野菜の和風バンバンジー〜



【材料】(4人分)

・鶏ササミ……200g
・なすび……2本
・オクラ……8本
・きゅうり……1本
▼▼▼ A ▼▼▼
・おろししょうが……小さじ1
・白練ごま……40g
・酢……大さじ3
・しょうゆ……大さじ1と1/2
・砂糖……大さじ1と1/2
・白だし……小さじ1
▲▲▲ A ▲▲▲


【作り方】

  • ① ササミは沸騰したお湯に入れて、火を消し15分ほどおいて余熱で火を通し、粗熱が取れたら食べやすい大きさに手でさく。
  • ② なすびはヘタを切り、ピーラーで縞目に皮を剥き、水でさっと洗い耐熱皿に乗せて、ふんわりとラップをかけて、600Wの電子レンジで5分加熱する。そのまま、冷蔵庫で冷やしておく。
  • ③ オクラは塩茹でして食べやすい大きさに切る。きゅうりは、ピーラーで縞目に皮を剥き乱切りにする。
  • ④ ボウルにAの調味料を入れてよく混ぜ合わせる。
  • ⑤ 器に鶏ササミ、なすび、オクラ、きゅうりを盛り付け上から④のタレをかけたら出来上がり。
 



鶏の胸肉の一部であるササミは豊富なタンパク質(アミノ酸)に加えて、抗酸化作用や疲労回復効果にも優れたイミダゾールペプチドという物質も多く含んでおり、疲れた時や夏場などにはおすすめの食材です。

夏野菜と合わせて白だしと生姜で、さっぱりと食べやすく仕上げましたので是非一度作ってみて下さい。

 

 

管理栄養士
浅田ゆうき先生

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