受験生であれば毎日勉強に取り組む中で、やる気が起きない、休憩をとっても集中できない、問題が頭に入ってこない、なんだか普段から頭がだるいといった経験を一度はしたことがあるのではないでしょうか。
長時間の勉強による疲労の蓄積に加え、現代の受験生においてはスマホやテレビなどのデジタル機器から毎日多くの情報が入ってくるため、気づかないうちに脳が酷使されてこのような状態に陥りやすくなっていることもあります。
このような場合、気分転換をしたり、十分な睡眠をとったりすることで解消されることもあるかもしれませんが、日頃からこのような状態が続く場合は、食事を見直してみることも重要です。
栄養不足の解消や、良い物を積極的に摂取することでこのような脳の疲れが軽減されるかもしれません。
そこで今回は、脳を疲れさせないための食事のポイントについてご紹介します。
◎脳疲労を軽減する栄養素
◆タンパク質
脳を元気にするエネルギー源といえば、ブドウ糖などの糖質を思い浮かべる人も多いと思います。
しかし、それ以前に脳や脳から出される神経伝達物質そのものはタンパク質から構成されており、それらがやる気(アドレナリン)や、集中力(ドーパミン)、落ち着き(セロトニン)の源となっています。
そのため、脳細胞が日々新しい物へと作り変えられ、必要な時に十分な量の神経伝達物質を出すためには、その主材料となるタンパク質の存在が欠かせません。
タンパク質が不足すると集中力・思考力・記憶力の低下のほか、睡眠の質が落ちる、ぼんやりする時間が増えるなどの脳疲労状態が強まります。
タンパク質は食べ溜めができないため、毎食必ず摂取するようにしましょう。
【タンパク質を多く含む食材】
・肉、魚、卵 など
◆ビタミンB群
ビタミンB群は、食べた物からエネルギーを作り出す際の代謝経路を回す上で必要になってくる栄養素です。
そのため、ビタミンB群が不足すると、食べた物から十分なエネルギーを作り出すことができず、疲れやすく、集中力が低下した状態になりやすくなります。
また、脳内においてビタミンB群は神経伝達物質の合成に必要となり、さまざまなホルモンを作り出すことでやる気や落ち着き、幸福感、睡眠などに大きく関わってくるため、気力の低下やイライラ防止のためにも重要な栄養素です。
【ビタミンB群を多く含む食材】
・ビタミンB1……豚肉、ウナギ、玄米
・ビタミンB2……豚レバー、ウナギ、納豆
・ビタミンB6……マグロ、牛レバー、カツオ
・ビタミンB12……牛レバー、あさり
・葉酸……鶏レバー、菜の花、枝豆 など
◆鉄
鉄は体内でタンパク質とくっつき体中に酸素を運ぶ働きがあるため、鉄が不足すると体や脳は酸欠状態に陥り疲れを感じやすくなります。
また、脳においてはビタミンB群同様に鉄も神経伝達物質の合成に必要な栄養素であるため、不足すると集中力の低下、やる気の低下、ひいては気分の落ち込みなどのうつ状態にも繋がるリスクがあります。
特に、月経がある女性においては、日頃から摂取を意識し続けないといけない栄養素になります。
【鉄を多く含む食材】
・レバー、赤身肉、赤身魚、貝類 など
<レシピ>
~あさりと豚肉の簡単スタミナ蒸し~
【材料】(3人分)
・あさり……130~150g
・豚バラ肉(薄切り)……150g
・キャベツ……2枚(100g)
・にら……4本(20g)
・酒……大さじ1
▼▼▼ A ▼▼▼
・おろしにんにく……1片分
・味噌……大さじ1
・みりん……大さじ1
・砂糖……小さじ1
▲▲▲ A ▲▲▲
【作り方】
- ① あさりは洗って砂抜きをしておく。
キャベツは洗って、食べやすい大きさにちぎる。にらは5mm幅に切る。 - ② ボウルに豚バラ肉、にら、Aを入れてよく混ぜ合わせる。
- ③ フライパンにキャベツ、あさり、➁の豚バラ肉の順において酒を全体に回しかけたら、蓋をして中火で4~5分ほど蒸して、あさりが開き、豚バラ肉に火が通っていたら出来上がり。
タンパク質とビタミンB群を含む豚肉と、鉄分と旨味が豊富なあさりを使って簡単で美味しい蒸し料理にしました。
にんにくとにらを加えることで食欲が増すだけでなく、それらに含まれるアリシンという成分によりビタミンB1の吸収が促進され疲労回復効果もさらに期待できます。
冷めても美味しく、お弁当のおかずにもピッタリですので、是非一度作ってみてください。
◎脳のポテンシャルを引き出す栄養素
◆DHA・EPA
魚の脂に多く含まれるDHAやEPAはオメガ3系必須脂肪酸とよばれ、血管や細胞壁をしなやかにし動脈硬化や心筋梗塞などの血管トラブルを予防することで知られています。
脳は多くの脳細胞間で神経伝達物質をやり取りすることにより、情報を伝達・処理しているため、この脳細胞の壁がDHAやEPAによって柔軟になると、脳の情報処理の速度や量も上がることに繋がります。
これにより本来持っている脳細胞の働きを十二分に発揮させることで、同じ時間、同じ内容の勉強をしてもよりスムーズに情報処理が行われ、脳の疲労も軽減されることが期待できます。
【オメガ3系必須脂肪酸が多く含まれる食材】
・アジ、サバ、イワシ、サンマ、マグロ、クルミ、亜麻仁油、えごま油 など
◎第二の脳を整える
第二の脳とも呼ばれている「腸」を整えることも、疲れない脳を作るうえで非常に重要です。
脳腸相関という言葉もあるくらい、腸と脳は互いの状態を大きく反映し合います。
たとえば、試験前に極度の緊張により腹痛やトイレに行きたくなった経験はないでしょうか。
これは、脳が感じた大きなストレスが神経を通して腸に伝わった結果、お腹が痛くなったり、便意をもよおしたりすることに繋がります。
また、本来脳内ホルモンとして精神の安定や睡眠に関わるセロトニンは、その多くが腸内細菌によって作られているため、腸の状態が私たちの精神面にも大きく関わってきます。
このように腸と脳は互いに影響し合っているため、腸を整えることが、脳も整えるうえで非常に重要な鍵を握っています。
腸を整えるには、良好な腸内環境を作りあげる必要があり、これには腸内の悪玉菌を抑え、善玉菌を増やし維持するための食事が重要になってきます。
そのため、善玉菌のえさとなる野菜や海藻類に含まれる食物繊維の積極的な摂取と、善玉の菌を含む納豆やヨーグルト、味噌などの発酵食品の摂取を普段から心がけることが大切です。
これに加えて、悪玉菌が好む糖質や脂質の過剰摂取にも普段から気を付ける必要があります。
<レシピ>
【材料】(2人分)
・ぶり切り身……2切
・片栗粉……適量
・塩……少々
・水菜……1株
・大葉……4枚
・みょうが……2個
・ごま油……大さじ1
▼▼▼ A ▼▼▼
・酒……大さじ1
・しょうゆ……大さじ1
・みりん……大さじ1
・はちみつ……大さじ1
・おろししょうが……小さじ1
▲▲▲ A ▲▲▲
【作り方】
- ① 水菜は洗って水気をきり、食べやすい長さに切る。
大葉とみょうがは千切りにして、水菜と一緒に混ぜ合わせておく。 - ② ぶりに塩をふって全体に片栗粉を薄くまぶす。
- ③ フライパンにごま油をひいて熱したら、➁のぶりを両面に軽く焼き色がつくまで焼く。
- ④ そこにAを加えて全体にからませながら、とろみがつくまで煮詰める。
- ⑤ 器に④のぶりをのせてその上に①の水菜、大葉、みょうがをふんわりのせ、タレを回しかけたら出来上がり。
DHAやEPAが豊富なぶりに、善玉菌のえさとなる食物繊維が豊富な水菜、食欲増進効果や免疫力強化の働きのあるみょうがや大葉の香味野菜を合わせました。
しっとり柔らかいぶりに甘辛いタレとみずみずしくさわやかな水菜と香味野菜が絡んで、さっぱりしつつもごはんの進む一品です。