受験生の食事 ~必要不可欠な脂質と怖い脂質①~

  • 2024.10.25
  • 受験レシピ

これまで受験生の食事について繰り返し紹介してきた中で、「タンパク質は重要で毎食摂ろう」や「糖質は摂り過ぎに注意」、「腸内環境のために食物繊維は毎日欠かせない」などの大きなポイントを理解され実践された方も多いと思います。

一方で、どのようにして摂ったら良いのかが分かりづらい栄養素が「脂質」ではないでしょうか。
というのも、栄養素の一種でありながらも脂質(脂肪)と聞くと一般的には、肥満や病気の原因となる悪い物といったイメージが強いため、食事を気にされる方の多くには敬遠されがちです。

しかし、脳の約60%は脂質でできており、ほかの臓器と比較してもその割合は非常に高いため、脂質が脳に与える影響も大きく、受験生にとっても重要で必要な栄養素となります。

また、この脂質を正しく理解し、食事の選択をできるようになることは高い食事スキルを身につけることに繋がるため、今回は脂質について詳しくご紹介したいと思います。




 

◉脂質の働き
 

◆エネルギーの貯蔵と体温維持
脂質は他の栄養素(糖質やタンパク質など)と比べて、1g当たりに発生するエネルギー量が9kcalと多いため、効率の良いエネルギー源となります。また、体内にある脂肪は中性脂肪として腹腔内に蓄えられ体温維持や、臓器の保護などの役割を果たしています。

◆細胞膜や脳神経細胞を作る材料
脂質は体を構成する細胞の、細胞膜や細胞内の微細な膜の主材料となり、細胞同士の物質や情報などの円滑なやり取りを司ります。また、脂質は脳神経細胞を構成し、正常な脳の神経機能を維持します。

◆ホルモンの材料
脂質は各種ホルモンや胆汁酸の材料となり、人間の生命活動や消化活動を支え精神面にも影響を及ぼします。その他にも、脂質は生理活性物質の材料として体内の炎症の発生や抑制に関係しています。

◆脂溶性ビタミンの吸収を促す
脂溶性ビタミンであるビタミンA、D、E、Kは、摂取した際に同時に脂質が存在することで体内での吸収が促進されます。

 

◉脂質=太る?

一般的に脂質は「脂質(脂肪)=太る」、「脂質=病気になりやすい」といったネガティブなイメージを持たれやすいです。
脂質は確かに高カロリーですが、だからといって脂質単体が体の体脂肪に変わる訳ではありません。

実は、体の体脂肪の多くは脂質ではなく、摂取した栄養素のうち糖質がグルコースに変わりそれらのうち必要以上に余ってしまったものが、体の脂肪細胞で脂肪酸となり体脂肪として蓄えられていくのです。

反対に摂取した脂質が中性脂肪になるには、糖質よりも複雑で時間がかかるため、脂質由来の体脂肪はそれほど大量には作られません。

つまり、体の体脂肪の多くは糖質由来のものであり、脂肪の摂取によるものは少ないのが現実なのです。

しかし、ここで注意したいのが、脂質が体内で脂肪酸に変えられ体脂肪になるためにはその過程で糖質が必要になるため、脂質と糖質を同時に摂ると糖質由来の体脂肪も、脂質由来の体脂肪もできるため、当然太りやすくなります。  

 

◉脂質が不足すると

では、反対に脂質が不足するとどうなるのでしょうか。

過度なダイエットや栄養不足などにより脂質が不足すると、ホルモンが作られなくなり免疫機能が低下し、ささいなことで不安になったりイライラしたりと精神的に不安定になります。

また、脂質によって作られている細胞膜の機能も低下し肌荒れや、髪のパサつきなども引き起こされます。

それだけでなく、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の体内吸収率が低下するため、ビタミン不足にも陥りやすくなり体の機能はさらに低下し、さまざまな不調が生まれやすくなります。

脂質は身体にとって実に多くの働きを担っているため、極端な脂質カットはかえって危険を伴うことになり注意が必要です。

 

<レシピ>

~簡単さっぱり!豚肉とアボカドの中華和え~

【材料】(2~3人分)
・アボカド……1/2個
・トマト……1/2個(50g)
・きゅうり……1/2本
・豚バラ肉薄切り……60g
▼▼▼ A ▼▼▼
・白ごま……大さじ1
・酢……小さじ2
・しょうゆ……小さじ2
・砂糖……小さじ2
・ごま油……小さじ2
・顆粒鶏がらスープの素……小さじ1/2
・おろしにんにく……小さじ1/4
▲▲▲ A ▲▲▲



【作り方】

  • ① アボカドは種を除き皮をむいて角切りにする。
    トマトときゅうりは乱切りにする。
    豚バラ肉は沸騰したお湯でさっとゆでてざるにあげ粗熱をとる。
  • ② ボウルにの調味料とアボカド、トマト、きゅうり、豚バラ肉を入れてよく混ぜ合わせる。
    冷蔵庫で30分以上置いた出来上がり。




森のバターと呼ばれるほど脂質が豊富なアボカドには、血中総コレステロールを低下させる働きのあるリノール酸やオレイン酸といった脂肪酸が含まれており、動脈硬化などを予防する効果もあります。

それだけでなく、アボカドには脂溶性ビタミンであるビタミンEやKも同時に多く含まれ、ストレスに対抗する力や細胞の機能維持などの働きも期待できます。

タンパク質豊富な豚肉やトマトと合わせて、さっぱりしつつもスタミナの出る簡単レシピですので是非作ってみて下さい。


 

◉脳と脂質について

脂質は体にとって重要であることは上記しましたが、とりわけ脳の機能に及ぼす影響は⼤きいです。
というのも、⼈間の体にある60 兆個もの細胞の細胞膜が脂質でできており、それらが悪い脂質で作られたものであった場合、当然体は不調を起こします。

そして、中で も脳はその重さの60%を脂質が占めている、いわば脂質の塊のような臓器であるため、その脂質が悪い質のものあれば、脳細胞同⼠のコミュニケーションも円滑にいかず、その機能を⼗分に発揮することができません。

そのため、脂質の種類や摂り⽅に気を付けることは、脳の機能やひいては受験勉強にとってもメリットがあります。

では、ここでいう「良い脂質」、「悪い脂質」とはどういうものなのでしょうか。
これらについては、次回詳しくご紹介していきたいと思います。

 

<レシピ>

〜鯖のごまだれ焼き〜

【材料】(4 切分)
・鯖の切り⾝……4 切(⼤きい物は2 切)
・⼩⻨粉……適量
・塩……少々
▼▼▼ A ▼▼▼
・白ごま……⼤さじ3
・しょうゆ……⼤さじ2
・みりん……⼤さじ1
・砂糖……⼤さじ1
・酒……⼤さじ1
▲▲▲ A ▲▲▲



【作り方】

  • ① 鯖は塩をふって5 分ほど置き、浮いてきた⽔分をキッチンペーパーなどでふき取り、両⾯に⼩⻨粉をまぶす。
    (鯖の⾻はできるだけ最初に除いておくと⾷べやすいです。)
  • ② フライパンに多めの脂を熱して、鯖を⼊れ両⾯に焼き⾊がつくまで中⽕でしっかり揚げ焼きにする。
  • ③ 余分な脂をキッチンペーパーでふき取り、A を加えて鯖全体に絡めたら⽕を消して、器に盛りつけたら出来上がり。




鯖などの⻘⿂にはDHA やEPA といった脂肪酸が豊富に含まれ、細胞膜を柔軟にする働 きをします。

また、これに合わせたごまも50%以上が脂質でできており、その多くが体内 で作ることのできない必須脂肪酸であるリノール酸や、悪⽟コレステロールを下げる働き のあるオレイン酸といった脂肪酸になります。

さまざまな⾷品を組み合わせて脂質も、美味 しく、バランスよく摂取できることが理想的です。

管理栄養士
浅田ゆうき先生

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