前回は、脂質の働きや重要性などについてご紹介しましたが、今回はその脂質の種類と「本当に摂りたい脂質」、「本当に怖い脂質」についてより詳しくご紹介したいと思います。
◉脂質の種類
脂質はさまざまな形態で私たちの体内や食物中に存在しており、それらは脂肪酸というものによって構成されています。
この脂肪酸は化学構造の違いによって、多くの種類があり、それぞれに性質も異なっています。
◉本当に摂りたい脂質
◆3系脂肪酸
魚やクルミ、えごま油、亜麻仁油などにはω3系脂肪酸という体内では作ることのできない必須脂肪酸が多く含まれており、これらにはコレステロール低下や血栓の予防効果などがあります。
その中でも、魚油に含まれるω3系脂肪酸の一種であるDHAやEPAは脳や神経組織の発育・機能維持にも欠かせない栄養素です。DHAやEPAは、脳の細胞膜を柔軟にし、脳細胞同士の情報伝達を円滑にし記憶の保持に大きく影響を与えます。
しかし、これらの脂肪酸はすぐに酸化されてしまう特徴があるため、鮮度のいいお刺身や、抗酸化作用のある野菜やかんきつ類(ビタミンC、E、βカロテンなどを含む)などと一緒に摂取すると効果的です。
魚を食べる機会が減っている現代においては不足しやすい栄養素でもあるため、普段から食材とその組み合わせなどを意識することも重要です。
◆中鎖脂肪酸
中鎖脂肪酸はココナッツオイルやパーム油などに含まれる脂肪酸で、スーパーなどではMCTオイルという名前で売られている物も多くあります。
この中鎖脂肪酸は、一般的な油脂と比較して短時間で消化・吸収されエネルギーに変わる特徴があります。
油なので、血糖値を上昇させることもないため、受験生やスポーツをしている人などエネルギーを素早くリカバリーしたい人にとっては、糖質の代用として補食などに上手く取り入れることでより効果を発揮します。
<レシピ>
~えびのココナッツカレーオイスター炒め~
【材料】(2~3人分)
・えび……6尾
・白ねぎ……1/2本
・ブロッコリー……1/4株
・卵……2個
・ニンニク……1/2片
・ココナッツオイル……大さじ1
▼▼▼ A ▼▼▼
・オイスターソース……大さじ1/2
・しょうゆ……大さじ1/2
・みりん……大さじ1/2
・砂糖……小さじ1/2
・カレー粉……小さじ1/4
▲▲▲ A ▲▲▲
・塩……少々
【作り方】
- ① えびは殻をむいて背ワタを取り除き洗って水分をふき取る。
白ねぎは斜め切りにし、ブロッコリーは洗って小房に切り分ける。
ニンニクはみじん切りにする。 - ② フライパンにココナッツオイルを熱し、ニンニクを入れて香りがたってきたら、白ねぎ、ブロッコリーを加えて白ねぎがしんなりするまで中火で炒める。
- ③ そこにえびを入れ火が通るまで炒めたら、A の調味料を加えて全体に絡めるように炒め混ぜる。
- ④ 卵を溶いてフライパンに流し入れ、ふんわりと固まってきたら火を止め、塩で味を調えたら出来上がり。
中鎖脂肪酸が豊富なココナッツオイルを使って、えびや卵のタンパク質と野菜がしっかりとれる一品にしました。
ココナッツの風味が苦手な方でも、カレー粉やニンニクなどを加えることで香りをあまり気にせず美味しく食べることができます。
ごはんがすすむ味付けで、子供でも食べやすいので是非一度作ってみてください。
◉本当に怖い脂質
◆過酸化脂質 <調理して時間の経った油や料理>
脂質はその性質上、空気や熱、光などのさまざまな原因で酸化します。
その酸化が進むと毒性をもった「過酸化脂質」へと変化し、それらを大量に摂取することで消化管の不調を引き起こし、動脈硬化や認知症、癌などのリスクに繋がります。
この過酸化脂質は食品から摂取する以外にも、体内の中性脂肪やコレステロールが活性酸素によって酸化されることで発生するため、抗酸化作用のある食品を積極的に摂り活性酸素を減らすことも重要です。
◆トランス脂肪酸 <マーガリン、ショートニング、それらを使った食品 など>
トランス脂肪酸は人工的に水素が添加された油脂で、マーガリンやショートニングのほか大量生産されるドレッシングやマヨネーズなどに含まれています。
過剰摂取により心筋梗塞や冠動脈疾患のリスクが上がるだけでなく、肥満やアレルギーとの関連性も指摘されています。
海外ではすでに使用を規制している国もありますが、摂取量の違いなどにより日本ではまだ規制はされていないため、トランス脂肪酸を避けるためには各自で原材料の確認などを行うことが重要になってきます。
◆現代人が過剰になりがちなω6系脂肪酸 <植物油全般>
私たちが普段口にする料理や市販のお惣菜、お菓子などの多くには植物性油脂(サラダ油、こめ油、ごま油 など)が含まれており、それらはω6系脂肪酸という脂肪酸に分類されます。
ω6系脂肪酸はコレステロールを下げたり、血栓を予防したりするなどの働きがあり生きていく上では重要な脂肪酸ですが、過剰に摂取することで体内の炎症を促進し、アレルギーや花粉症を起こしやすくなるなどのリスクもあります。
ω6系脂肪酸は、植物性油脂だけでなく肉や魚、卵などにも幅広く含まれており、毎日の生活の中で意識しなくても摂取できるがゆえに、気づかないうちに過剰に摂取していることもあります。
そのため、家で料理をする際には調理法や食材などに気を付けることが必要です。
◆化学溶剤などを使用して精製された油 <サラダ油、キャノーラ油 など>
食用油の中には、食物から油を抽出する際に化学溶剤が使用されているものもあります。
効率よく多くの油を取り出すことができるため、比較的安価で手に入ります。
一方で、高温処理され溶剤で抽出される過程で、栄養価が変化する、脂質が変質してしまうなどのリスクも伴います。
パッケージなどには抽出法は表記されていないため、明確には判断しづらいですが、原材料や価格、中には圧搾抽出などと他の抽出法が明記されているものもあるため、購入前にしっかり確認することが重要です。
<レシピ>
〜秋鮭の蓮根まんじゅう〜
【材料】(4人分)
・蓮根……250g
・鮭(切り身)……1切(100g)
・白ねぎ……1/2本
・塩……2つまみ
・片栗粉……適量
・揚げ油……適量
・白だし……適量
・水溶き片栗粉……適量
【作り方】
- ① 蓮根はすりおろし、白ねぎはみじん切りにする。鮭は皮と骨を除いて一口大に切る。
- ② 耐熱ボウルに蓮根、白ねぎ、塩を入れて混ぜたらラップをして、電子レンジ600Wで1分30秒加熱する。
- ③ 一旦ボウルを取り出し鮭を加えてゴムベラなどで全体を混ぜた後、ラップをしてさらに600Wで2分加熱し、鮭をほぐしながら全体を混ぜ粗熱をとる。(この時点で粘りが出ている状態。)
- ④ バットに片栗粉を入れ、その上に③を食べやすい大きさにへらなどでまとめた物をおき、表面に片栗粉が付くように転がしながら丸める。
- ⑤ フライパンに少なめの油を熱したら、④の蓮根まんじゅうを全体がこんがりきつね色になるまで揚げ焼きにする。
- ⑥ 白だしをかけうどんのだし汁程度に水で薄め、別の小鍋に入れて沸騰させたら、水溶き片栗粉でとろみをつける。
- ⑦ 器に蓮根まんじゅうを盛り付け、その上から⑥のだしをかけたら出来上がり。
鮭に豊富に含まれるω3系脂肪酸のDHAは脳機能の維持に欠かせないだけでなく、EPAは血液をサラサラにする働きがあるため、脳の細い血管にもくまなく血液(酸素や栄養)がいき渡りやすく脳の活性化が期待できます。
この時期に旬を迎える蓮根や白ねぎと合わせて、外はカリ中はもちもちの蓮根まんじゅうにすることで、魚が苦手な方にもおすすめの一品です。