生きていくために毎日の食事は欠かせません。
とりわけ受験生にとっての食事は、ただ生きるためだけではなく、いかに効率よく頭が働くか、健康な身体を維持できるか、といった重要な目的も含まれています。
ですので、ただなんとなく毎日の食事を食べるよりも、どういった目的を持って、何を食べるのが良いのかを考える人の方が、もちろん結果も出やすいと思います。
今回は、毎日食べている食事が、体内で100%の力を発揮するために欠かせない栄養素のお話をします。
私たちは体内での情報のやり取りを、神経を介して行います。
とりわけ、脳内には成人で約1000 億個もの神経細胞が詰まっていると言われています。
その神経細胞は主にタンパク質と脂質からできており、脳自体が活動するためのエネルギーは糖質から提供されます。
ここまで聞くと、「糖質、タンパク質、脂質をバランスよく摂取すれば良い!」と結論づけてしまいがちですが、これらの栄養素を脳と体で使えるようにするためにはある栄養素が必要なのです。
それが、ビタミン・ミネラルです!
生きていく上で、私たちの体内では無数の生化学反応が同時に進行しています。
その結果、食べた物が栄養素となり分解・吸収され、血や肉となり、様々な臓器(もちろん、脳や神経も)が維持・更新され、エネルギーが生まれます。
この生化学反応を進める主役が、酵素という触媒です。
この酵素を働かせるために必要なのがビタミンとミネラルなのです。
実際、ビタミンやミネラルが不足すると他の栄養素の力が発揮できず、様々な症状が出てきます。
ビタミン・ミネラル不足による弊害
栄養素 | 欠乏による症状 | 含まれる食べ物 |
---|---|---|
ビタミンB1 | 集中力の欠如 | 豚肉、玄米、ノリ、タラコ、未精製の植物類 |
ビタミンB2 | 成⻑停⽌、無気力 | レバー、卵⻩、チーズ、肉類 |
ナイアシン | うつ、統合失調症 | 魚介類、未精製の植物類 |
パントテン酸 | ストレスに弱くなる | 肉類、魚介類、未精製の植物類 |
ビタミンB6 | イライラ、うつ | 未精製の植物類、魚介類、バナナ、プルーン |
葉酸 | イライラ、うつ | ホウレンソウ、葉野菜、レバー、ダイズ、チーズ |
ビタミンB12 | イライラ、うつ | 肉類、魚介類、鶏卵、レバー、イクラ、ウニ |
ビタミンC | イライラ、うつ | イチゴ、柑橘類 |
マグネシウム | 睡眠障害、イライラ、うつ | 緑色の葉野菜、ナッツ類、植物の種子 |
カルシウム | 睡眠障害、イライラ、うつ | 魚介類、海藻類、乳製品 |
鉄 | うつ、感情の乱れ、やる気の喪失 | 赤身の肉、赤身の魚 |
亜鉛 | うつ、感情の乱れ、やる気の喪失 | カキ、ナッツ類、植物の種子 |
<参考文献>生田 哲『子どもの脳は食べ物で変わる』、東京:PHP、2019、99 頁
*未精製の植物とは、加工などがされていない、野菜や果物・ナッツ類 などを含みます
これらたくさんある、ビタミン・ミネラルのうちから、今回は特に心と脳に深く関係するものをご紹介します。
◉ビタミンB 群
ビタミンB 郡は全部で8種類あり(B1、B2、ナイアシン、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン)、糖質を代謝しエネルギーを生産する上で欠かせないビタミンです。
したがって、脳においてもより多くの糖質をエネルギーに変えようとする際には、それに見合った量のビタミンB 群が消費されます。
また、B 郡は水溶性のため、尿や汗と一緒に排泄されてしまいます。このため、B 郡はとても不足しやすい栄養素です。
・ビタミンB1……注意力、集中力を生み出す
(多く含む食物:豚肉・玄米・海苔・さば・ヒマワリの種 など)
・ビタミンB2……子供の成⻑を促進する
(多く含む食物:レバー・卵⻩・チーズ・胚芽・肉類・緑⻩色野菜 など)
・ナイアシン……心の働きを左右する
(多く含む食物:肉類・かつお・いわし・ホタテ・イカ・切干大根・かぼちゃ など)
・パントテン酸……記憶力を高める
(多く含む食物:レバー・卵⻩・納⾖・カレイ・しいたけ・ニラ・ブロッコリー など)
・ビタミンB6、B12、葉酸……脳のビタミン
(多く含む食物:B6:いわし・さば・にんにく・バナナ・ブロッコリー など)
:B12:ハマグリ・チーズ・ウズラの卵・レバー など)
:葉酸:葉野菜・レバー・大⾖・チーズ・あずき など)
◉カルシウム・マグネシウム
カルシウムやマグネシウムには神経や筋肉の細胞をリラックスさせる働きがあります。
この働きは、質の良い睡眠を得る際にも欠かせません。
マグネシウムは生体で300 以上の化学反応に関わっており、どのミネラルよりも多くの酵素を助けています。多く含む食物は、ナッツ類や植物の種子です。
カルシウムの99%は骨や⻭を構成していますが、残りの1%は血液や細胞内に溶けています。この1%のカルシウムが、筋肉や血管を収縮させたり、神経細胞から神経細胞に情報を伝えたり、酵素を働かせたりしています。多く含む食物は、アジなどの魚類、シジミなどの貝、ヒジキなどの海藻類、ヨーグルトなどの乳製品です。
また、カルシウムが機能するためにはマグネシウムが必要なため、どちらが不足しても生体の十分な機能が働かないということに繋がります。
◉亜鉛
亜鉛はすべての細胞に存在し、多くの酵素を助けています。しかし、日本人では最も不足しやすい栄養素でもあります。
亜鉛が不足すると、うつ、不安、多動、自閉、統合失調症、摂食障害などが起こりやすくなります。
亜鉛は、子どもの心身の成⻑を促進し、細胞を酸化から守るだけでなく、気分を安定させ、晴れやかにするセロトニンやメラトニンの合成にも欠かせません。このことから、心と脳の健康に深く繋がっている栄養素です。
多く含む食品は、ナッツ類や貝類の牡蠣に豊富です。
<レシピ>
ビタミンと鉄分の宝庫!レバーパテ
【材料】
・鶏レバー…200g
・玉ねぎ…大1/2 個(150g)
・にんにく…3~4 片(15g)
・バター…35g
・塩…小さじ1弱
・こしょう…少々
・オリーブオイル…適量
・牛乳…適量
・お好みでバケットやスティック野菜…適量
【作り方】
① レバーは大きめの1口大に切り、牛乳(レバーが浸かる程度の量)に20 分程つけた後、水気をきっておく。
② にんにくは大きめのみじん切りにし、玉ねぎはくし切りにする。
③ フライパンにオリーブオイル(多めの方が焦げ付きにくい)をひき、にんにく、玉ねぎ、レバーをよく炒める。
④ レバーに火が通り、玉ねぎも完全にしんなりするまで炒めたら、熱いうちに塩、こしょう、バターを加え、フードプロセッサーもしくはハンドミキサーなどで滑らかになるまでかける。
⑤ 器に入れた後、ラップをかけて冷蔵庫で半日(できれば1日)冷やしたら、出来上がり!
レバーは肝臓に当たる部位で、栄養価が非常に高い食物です。
特に、鶏レバーのビタミンA、B 郡、鉄分の含有量は、豚や牛のレバーよりも多いです。ただ、独特の味や臭みがあり苦手な人もいます。
そこで、今回は、牛乳に漬け臭みを抜いた後、にんにくなどと一緒に炒めペースト状にすることで、レバーの生臭さを抑え美味しく食べられるようにしました。
パンに塗ったり、野菜につけたりしながら食べてみてください!
ビタミン・ミネラルたっぷり!中華風お刺身サラダ
【材料】(2人分)
・白身魚のお刺身(鯛やカンパチなど)……8〜10 切
・きゅうり……1/2 本
・玉ねぎ……1/6個
・大葉……2 枚
・かいわれ大根……適量
(かいわれ大根の代わりにレタスなどでも可)
・ピーナッツ……10g
・すりごま……適量
・コーンフレーク(無糖)……適量
(・お好みでパクチー……適量)
▽▽▽ A ▽▽▽
・醤油……大さじ1
・お酢……大さじ1と1/2
・砂糖……小さじ2
・ごま油……小さじ1
・にんにくすりおろし(チューブ 可)……2cm
(・お好みで⾖板醤……適量)
△△△ A △△△
【作り方】
① きゅうりと大葉は千切りにする。玉ねぎはスライスにして薄く広げてしばらく空気にさらしておく。ピーナッツは、包丁で細かく砕いておく。
② A の調味料を合わせ、その中にお刺身、玉ねぎ、大葉、ピーナッツ、ごまを入れ混ぜ合わせ、ラップをして冷蔵庫で30 分以上おく。
③ お皿にきゅうりとかいわれ大根(レタスなどでもOK)をしき、その上に②のお刺身などを盛り付ける。
④ 最後に、砕いたコーンフレークとお好みでパクチーを上からかけたら出来上がり。
魚には、脳や神経組織の発育や機能維持に効果が期待される、DHA やEPA の脂肪が含まれています。しかし、これらは脂なので焼く・煮るといった加熱調理により流れ出してしまいます。
このため、生で食べるお刺身の方がより効率的にDHA やEPA を摂取できます。
また、これにビタミン、ミネラル豊富な野菜とナッツ類などを組み合わせると、栄養価の高い一皿になります。
ただ、なま物ですので鮮度の良い食材を選び、試験前などの大事な時期は避けるようにしてください。